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しおりを挟むあまりの恥ずかしさに耐えられず抱えられた状態からは解放してもらった。
今は颯斗に手を引かれてホテルの館内を歩いている。
ギュッと繋いだ手を夏生も握り返し、大きなストライドで歩く颯斗に必死でついていく。
手を握り合って足早に進む二人に目を奪われるホテルの利用客や従業員たち。
エレベーターではお互いに押し黙って階数表示を見ていたが、汗ばんでも手は絶対に離すまいと強い意志がどちらにも存在していた。
気づけば最上階の特別な部屋に引き入れられ、自らも足を踏み入れていた。おそらくこのホテルの最高ランクの客室。
クリスタルを駆使した繊細な意匠のシャンデリア。その光がリビングを彩り、それに負けない豪華な家具や調度品たちが二人を迎えた。
広いリビングの窓際へ行く。
窓の向こうに広がる金沢の夜景が目を惹くが今はそれどころではない。
向かい合ってただ見つめ合う。
夢にまで出てきた相手だ。
すげぇカッコ良い・・・
夏生はまだ潤みの残る瞳を煌めかせて颯斗を見上げた。
あの頃から人並み外れた落ち着きとオーラを纏っていた男が、さらに逞しさと洗練された大人の雰囲気を備えて、泣きたくなるほど良い男に変貌している。
「颯斗・・・」
「しっ・・・」
颯斗の指先が夏生の唇を押さえて言葉を遮った。
「もっとよく見せろ」
颯斗は夏生の小さく端正な輪郭から美しく配置されたパーツの全てに隅なく視線を走らせた。
その視線が甘さを帯びた唇で止まった時、夏生は耐えきれずに「もう無理!!」と小さく叫んで颯斗の顔を両手で挟んで引き寄せた。
「・・・!」
虚を突かれた颯斗の動揺など知らない。夏生は今、目の前にある一番欲しい男の唇を奪った。
「んっ、んんっ・・・夏生っ・・・!」
抵抗するなんて気に入らない。ここまで連れて来たのは颯斗だ。会いに来たのも颯斗なくせに。
強引に唇を押し付け、顎を掴んで開かせた。
のぞいた隙間に舌を押し入れた時、ようやく颯斗は支配されそうになっている事に気がついた。
齧りつく恐れ知らずな唇を引き離すと、颯斗は自分の唇を舌先で舐め上げて逆襲の合図を刻んだ。
ゾッとするほど鋭く熱い瞳に睨め付けられた夏生は声を上げて笑った。
「あははははははっ!」
「な、なんだ!?」
腹の底から湧き上がる感情を抑えられない。
笑いこける夏生に呆気に取られた颯斗は訝しげに見た。
「何なんだ・・・」
嬉しい、会えて堪らなく嬉しい。
夏生は自分がこんなにも颯斗に会いたかったのかと驚く一方で、今自分の感情を全て解放しようとしているその開放感に歓喜していた。
「・・・ああ・・・最高」
戦意を喪失した颯斗は不機嫌に顔を歪めて不貞腐れている。その表情さえ愛おしい。
夏生は大きく息を吸って晴れ晴れとした顔で言った。
「はぁ・・・颯斗、好きだ」
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