学園の王の愛はいらない

starry sky

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 颯斗との再会から一週間がたった。
あれから毎日のように連絡を取り合っている。
その日一日がどうだったか、何も問題が無かったか、たわいもない話がほとんどだが通話やビデオ通話でやり取りしあっている。
 夏生の周辺に有紗が雇った調査員がいるという話は本当だった。実際にそれらしい人物を見た時はぎょっとしたし、恐怖も感じた。
神谷の会社の人間が見張ってくれているはずだから必要以上に怖がらないようにはしているが。

「広瀬、今日みんなで暑気払いやろうって。行けるか?」

 昼休みの終わりに羽田に誘われた。
 羽田と二人きりだとまずいが同期達が一緒なら問題ないだろう。すぐに参加の返事をした。
 仕事を終えていつもの居酒屋に着くと二階の座敷ではなく一階のテーブル席に羽田が座っていた。

「羽田何やってんの?」

近づいて行くと向かいの席を指して座る様に促された。

「二階だろ?行かねぇの?」

「後でな。ちょっと話そう」

羽田が夏生の分のビールを注文した。
 この一週間は忙しかった。
羽田とはまともに顔を合わせていなかったが考えてみると少し気まずい。
ホテルでは羽田の目の前で二度も颯斗に連れ去られた。あの時は余裕が無かったから考えていられなかったが、颯斗と夏生のただならぬ関係にきっと羽田は気付いているだろう。
 乾杯してグラスを傾けたところで羽田が切り出した。

「広瀬ってゲイだったのか?」

「ブハッ・・・!!」

「うわっ・・・!」

夏生はビールを盛大に吹いた。

「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ・・・」

「だ、大丈夫か・・・?」

羽田がおしぼりを差し出す。

「な、何だよ・・・いきなり過ぎだろ・・・けほっ・・・」

「いや、悪い。頭の中で色々考えてたらさっきのが出た」

「・・・っああ~、鼻に入った。ホラ、お前も拭けよ」

夏生は自分のおしぼりを渡した。

「ごめん、こんなとこで聞くのは配慮が無さすぎた」

「いや、良いよ。別に隠してないし、っつーか俺ゲイじゃないし」

「・・・そうなのか?」

「多分な」

「どういうことだよ」

「男は一人しか付き合った事ないし、その前はずっと女の子と付き合ってたから」

「その一人ってのが綺堂颯斗なんだな?」

「えっ?アイツの事知ってんの?」

「同じ大学だった」

「へぇ~、じゃあ、面識あるってこと?」

「いや、学部だけで千人以上いたしな。綺堂颯斗は有名人だったからみんなが彼を知ってたけど向こうは俺の事知らないと思う」

「そか・・・」

今は知ってる・・・しかも要注意人物として・・・

「すごい奴だよな。学部生の身で論文を国際誌に通してた。ベンチャーのコンテストでも優勝して企業から声が掛かってたらしいけど本人は大企業グループの御曹司だろ。ゼミでは教授相手に一歩も引かない議論で場を支配してたとか、海外のディベート大会でも結果を残してたとか。まぁ、綺堂颯斗の評判は年中聞いてた」

「はは・・・すげぇなアイツ・・・」

「キャンパス中の女子が夢中だったけど綺堂颯斗の浮いた噂は一度も聞いたことが無かった」

「高校までは見境なしだったんだぞ」

「同じ大学に婚約者が居るって噂はあったけど女と一緒にいる所を見た奴は誰もいないしとにかく忙しい奴だって聞いてた。双葉不動産の再開発計画だって学生時代から計画してたって事だよな。並の男じゃない」

颯斗が在学中から努力をしてきた事を裏付けるような話だ。
颯斗の精神力や意志の強さ、頑張りに夏生は胸が熱くなった。
全部が自分を取り戻す為だったのだと思うと何だか颯斗がいじらしくなる。
今すぐ会って抱きしめて撫で回してやりたい。

「そんな異次元の綺堂颯斗がこないだのホテルで少しも余裕う無さそうにしてるの見て驚いた」

「・・・そうだったか?」

「大学の頃は誰にも興味ない、眼中に無い、みたいな顔してたよ。それが広瀬相手だと全く違った」

そこまで話すと羽田はビールを半分くらい一気に飲んだ。
夏生は好きな男のそんな話を聞いて表情が緩むのを止められない。

「ニヤケやがって・・・何かムカつくな」


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