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しおりを挟むマンション内にある住居者専用レストランで夕食をとった後、綺堂の部屋に戻ってアニメを観ることにした。
人気のアニメで実写映画も話題のやつ。
夏生は綺堂の部屋着を着て、二人でシーツを替えたベットの上でゴロゴロしていた。
シーリングタイプのプロジェクターで壁に映像が映される。大画面で観るアニメにテンションが上がった。
コロコロ転がってどの位置で観ても良くみえるな、とくつろいでいたら同じベッドでじっとしていた綺堂がボソッと言った。
「バニラだったらいいだろ?」
はじめ、アイスの話かと思った。
「え?なに?」
綺堂が何だかジトっとした目で夏生を見ている。
「バニラ・・・?」
挿入しない性行為の事をバニラセックスというらしい。それをやると言い始めた。
アニメを観ているからと断っても食い下がってくる。
「夏生はソレ観てて良い」「挿れないんだからいいだろ?」としつこいから承諾した。
結局、挿れなきゃ何でもありか!と突っ込みたくなるくらい色々な事をされた。
いち高校生がこんなに性戯に長けていて良いのか。いや、おかしい。
一体どこでどうやって手ほどきを受けたのか気になった。
好奇心でバニラとやらの最中に聞いてみたら「従姉妹」とか「家庭教師」とか禁断のワードが出てきたから夏生はもう快感を拾う方に集中した。
翌日の日曜、二人が起きたのは昼前だった。
綺堂が絶倫ぶりを発揮して朝方まで夏生を寝かさなかったからだ。
挿入こそしなかった。でもお互い何回イッたか覚えてない。
一応夏生の 体は何とか回復してちゃんと歩けるようになった。
それなのに、夏生の送迎に来た神谷は部屋のドアを開けた瞬間からニヤニヤしていた。
一昨日の夜と今日では綺堂の様子が違い過ぎる。そりゃ察するだろう。
「颯斗、清々しい顔してんなぁ」
と神谷が冷やかしても「ああ、最高に」と綺堂は臆面も無く答えた。
夏生はすかさず綺堂の尻に蹴りを入れた。まともに受けた綺堂は笑いながらよろけていた。
綺堂は午後から用事があるらしく、神谷に「夏生に絶対手を出すなよ、ちゃんと送り届けて報告しろ」と何度も何度も念を押していた。
「なっちゃん、自分が奇跡起こしたの分かってる?」
送りの車内で神谷が神妙な口ぶりで言った。
神谷に会うのは今日で二度目だがバックミラー越しのその目が真剣なのは分かる。
それでも「奇跡」とは大げさな。
「あいつはずっと退屈してたんだよ、自分の人生に」
「人生にって・・・」
綺堂は日本を代表する旧財閥グループの子孫として、全てを持って生まれて来た。
その人生は完璧な将来が約束されている。
自分が何かを欲しいと思う前に周りの人間が先回りして綺堂に最もふさわしい物、事、人、挙句に婚約者までも用意した。
「努力しなくていいんだ、ただ生きていれば良い。地頭がいい上に最高の教育を受けてるんだ、知り合った時のアイツは10歳そこらだったけど、もう自分の人生が虚しいものだって気がついてたよ」
綺堂と神谷が出会ったのは去る高貴な方が主催した野点での事だったらしい。
愛人の息子である神谷が父親の気まぐれで連れて行かれた会で、一人退屈していたら綺堂と知り合ったらしい。
二人は歳が八つも離れていたが、精神年齢が高い上に冷めている綺堂と高校生の神谷は気が合って、それから七年の付き合いになるという。
「初めてだよ。颯斗があんな風に何かに執着するのは。分かんないかもだけど俺はそれにすげぇ感動してるんだ」
その何かというのが夏生の事らしい。
「望むものが何もない人生で初めて欲しいと思ったのがなっちゃんだったんだよ。すごくない?」
「・・・おぉ」
目をキラキラさせて言われても困る。ちゃんと前を見て運転して欲しい、
嬉しくないわけじゃないが、そういう情報は自分の決意を乱す。
ただ、綺堂なりに苦労したんだな、とか上流には上流の悩みがあって楽じゃないなとは思う。
そんな事よりも。
「つーか!テメーだろ、颯斗にろくでもないエロの道を極めさせたの」
お陰で夏生は二日に渡ってひどい目にあったのだ。
「いやいや~、アイツ何やっても良く出来るのよ。11で筆下ろしさせたら半年で百人ギリだぜ。気づけば俺のセフレのほとんどと寝てんの。勘も覚えも良くてそっちの道のプロになれんじゃんて感じ」
「マジでくだらねぇ」
夏生は吐き捨てる様に言った。心からそう思ったしイライラした。だが、
「アイツ、生きる気力を無くしてたんだよ。目が死んでるっつぅのかな。小5でだぜ?だからセックスを教えたんだ。セックスって生の根源じゃん?」
カラリと笑って話す神谷だが、彼にも本音では切実な何かがあったのかも知れない。
自分を「愛人の子」と自嘲して言っていた。
「颯斗のやつまんまとハマってやりまくってたけど、結局気休めでしかないってすぐ気付いてた。それでも溜まるもんは溜まるし、ヤッてる間は色んなこと忘れられるだろ?来る者拒まずで相当パコってたけど誰とも真剣に付き合った事は無かったんだよ」
「下品・・・」
今思い出したが、この男と綺堂は仲良く3Pもしているはずだ。神谷が自分で言っていた。
神谷は綺堂が夏生を特別に思っていると言うことを伝えたいのだろうが、夏生の頭にはとんでもなく爛れた性事情の方しか入って来ない。
100人斬りだか、千人斬りだか知らないが女に飽きて夏生に手を出したのではないのか。
よく知らねーけど、アナルの方がキツくて良いとか聞いた事あるし⋯
今は夏生にのめり込んでいても飽きたらまた女に戻るか、別の男に目移りするのかもしれない。
神谷の熱のこもった話とは逆に夏生の心は冷めていった。
そして夏生はそんな自分に安堵していた。
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