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しおりを挟む綺堂の束縛は思った以上にきつい。
夏生の性格上、人と楽しく過ごすのが好きだから気をつけても色んな生徒と関わって綺堂をやきもきさせてしまう。
その度に責められるし、ベットの上でも分からせようとしてくる。
綺堂の苛立ちを鎮めるのには苦労するがその反面喜びも感じる。
締め付けられるほど求められてると思えるから。
綺堂が嫉妬して苦しめば良いと思うこともある。
夏生だって常に頭の片隅にあの綺麗な婚約者がいるのだ。
綺堂は婚約者のもの、深く想ってはいけない。
改めて綺堂の立場について考えるが、どうやったってずっと一緒に居られる相手ではない。
でも一緒にいる時間が積み重なる程、湧き上がる想いに苦しめられる。
だから夏生は自分を誤魔化すように友人たちと出かけたり、連絡をとったりする。
そしたらまた綺堂が腹を立てることになるのだが、そうしないと夏生はおかしな思いに駆られてしまう。
言ってはいけない事を言ってしまいそうになる。
毎週金曜の夜の約束が、今週は寮ではなく汐留のマンションになった。
夕方、神谷が学園まで夏生と綺堂を迎えに来た。
マンションに行くのかと思いきや、なぜか表参道にあるセレクトショップに連れていかれた。
店に着くとすぐに上のフロアへ案内されて明るいグレーのスーツを着せられた。
既製品だが夏生の体にピッタリでスタイルの良さが際だつ上質なものだ。
シャツもネクタイもグレーの無地でまとめたワントーンのスタイルはベルトと靴だけが黒でアクセントになっている。
「めちゃくちゃ似合ってる、最高に可愛いぞ。思ったとおりだ」
そう言ってご満悦の綺堂は神谷が持って来たものに着替えた。
フィッティングルームから出てきた綺堂を見た瞬間、夏生は言葉を失った。
かっこ・・・いい⋯
スーツ姿を見るのは二度目だが何度みても惚れ惚れする。絶対に見飽きることはないだろう。
綺堂の肉体はスーツを着るためにあると言って良いと思った。同時にあの体に抱かれている自分を想像して夏生は一人恥ずかしくなった。
そんな完全体の綺堂に連れて行かれたのは都会の一等地に建つビルの中のレストランだった。
「「「ハッピーバースデー!!」」」
誰かの誕生日会らしい。かなりの数の客がいる。そして皆若い、同世代に見える。
到着した時はちょうどバースデーソングを合唱し、ケーキが運ばれる所で誰も夏生達に気づかなかった。
お陰で綺堂の連れだとはバレずにすんだ。
なんだか面倒くさそうなパーティだから腹だけ満たして帰りたいと夏生は思った。
綺堂が知り合いに捕まった隙にそそくさと別行動をとり、広い店内の盛り上がっているテーブルから離れた場所で料理を食べながらスマホをいじって好きに過ごしていた。
大勢の人に囲まれる綺堂を遠くに眺めながらちょっとしんみりしていたら神谷が夏生を見つけて側にきた。
「なっちゃん、今日はこんなとこまで付き合わされて大変だね」
「本当だよ。マンションに行くんだと思ったらこんなとこ⋯ここどこだって言ったっけ?」
「広尾だよ」
「こんな大人っぽい場所、オレ絶対場違いなんだけど」
「大丈夫。今夜は子供しか居ないから。颯斗が選んだそのスーツ、すっごく似合ってて可愛いよ」
「可愛いってなんだよ・・・んで、この会はなんなの?誕生日会ってことは分かるけど」
「颯斗の子供の頃からのご学友のコミュニティだよ。それぞれが凄いとこの坊ちゃん嬢ちゃん達。狭い世界だから繋がりを大事にしてるんだ。まぁ、色々とあるみたいだけど、富裕層は富裕層で協力し合わなきゃいけないからね。こういうのにもマメに顔出さないとなんだよ」
「ふぅ・・・ん。大変そ」
遠い世界の話だ。自分とは関係ない。
「けど、何で俺まで来ないといけないんだ?」
「それはパートナー同伴がルールだからねぇ」
「…え?」
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