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しおりを挟むパッ、と神谷が手を放して笑顔で声の方を振り向いた。
「あれぇ!颯斗くん、顔がこわぁい」
いつものおちゃらけた神谷に戻った。
立ち上がって綺堂の肩を軽く叩いて「冗談だってー」と笑っている。
「少しも面白くないんだよ。見つけたらすぐに連れてこいって言っただろ」
怒気をみなぎらせて本気で言っている綺堂と、それに対して少しも臆していない神谷。
「なっちゃんの意思も確認しないとって思ってさ。ホントなっちゃんの事となると馬鹿になるよね、そんな独占欲どこに隠してたんだか」
「うるさい。神谷は待機室に行ってろよ」
「はいはい、あんまりなっちゃんを困らせるなよ」
神谷はドライバーや付き人が待機する為の部屋へ行ってしまった。
夏生は神谷の背中をじっと見送った。
神谷の仕事は一体何なんだろう。
前に見せられた大手警備会社の名刺には変わった部署名が書いてあった。そこの仕事で綺堂と関わっているのか。
それとも自分の会社の方の仕事でこうやって色々動いているのか。
服装もいつもラフだし、自由人にしか見えねぇな
「夏生、神谷を見るな」
綺堂が夏生の隣に座って、夏生の顔の向きを強引に戻した。
「ちょっと見ただけだろ」
「ちょっとじゃなかったし、ちょっともダメだ」
「またダメダメ始まった」
彼氏でもないくせに⋯
不貞腐れた顔で睨むと綺堂は笑顔になって夏生の白い頬をつついた。
だがすぐにため息をついて言った
「夏生が誰かを見てると死ぬほどイライラするんだよ、くそ⋯」
「颯斗⋯」
夏生の心を仄暗い喜びが覆った。
綺堂が自分の事で苦悩すると満たされた気分になるのだ。もっとかき乱してやりたい、もっと苦しめと思う。
自分はこんなに性格が悪かったのか。
「⋯っ、勝手にイライラしてろ。自分じゃない奴のやる事なんて大抵はどうにもできないんだ。諦めろ」
「突き放すなよ」
今度は綺堂が不貞腐れた。それがおかしくて夏生が笑顔になった。
「夏生可愛いな、抱きたい⋯今すぐ」
綺堂が夏生を抱き寄せて耳元で低く囁いた。
夏生は腹の奥が切なくなって体が震えた。
俺も欲しい⋯
裸で抱き合って、このシャツの奥にある筋肉を、体温を直接感じたい。
「⋯って、コラぁ、ここどこだと思ってんだよ、離れろ!」
夏生は慌てて自制し綺堂の事も止めた。だが、
「良いんだ、見せつけに来たんだから」
「え?」
戸惑う夏生に構う事なく綺堂が顔を寄せてくる。ヤメロと言って腕を突っ張って阻止していたら良く通る女の声がした。
「ごきげんよう、颯斗さん」
見ると薄ピンク色のスラブツイードのワンピースを着た綺堂の婚約者が立っていた。
「あ⋯」
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