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第1章 始まりの猫と扉編
1 喋る猫に乗せられて
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「ねぇねぇ、お父さん!剣姫さんが出てくるお話して!」
「仕方ねぇなぁ。あるところに現世に住む女の子がいました…」
疲れた…昨日までキャンプに行っていたから。でも、今日はやることがなく、そこら辺にいたノラネコに話しかけていると、
「君、常世に興味はない?」
なんと野良猫が話し始めたのだ。
「猫がしゃべった!?というか常世って何?興味はあるけど…なんで私なの?」
「だって、つまらなそうにしてるから…晶の親族だし…」
「ん?ごめん最後のは聞き取れなかった。…でもなぁ」
「! 最後のは、なんでもない!ほら、やってみなくちゃわからない!あっ忘れずに鈴を持ってくるんだよ!」
私は、そのノラネコの言われるがままに急いで荷物の準備をした。昨日まで使っていたキャンプグッズ、鈴、お財布、食料、祖母の形見の指輪、着替えを持ってノラネコのところに急いだ。
「忘れ物はない?」
「うん!ないよ!」
「じゃあしゅっぱ~つ!」
そのノラネコの後をついていくのは少し大変だった。塀の上を歩いたり屋根の上を登ったり、小川を渡ったり、
そして、とうとう着いた廃墟の扉を抜けると、
そこはまるで別の世界の様な景色。朝と夜が絵の具の中で混ざりあったようにどこまでも温かく、どこまでも冷たい。そんな空だった。そびえ立つ山々のてっぺんは、所々雲に隠れている。かすかに聞こえる川のせせらぎは、清く淡く澄んでいた。
前に国語で習った四字熟語『山紫水明』はこんな景色のことを言うのかなぁ。と能天気なことを考えながら、しゃべるノラネコと2人歩く私であった。
「ここからは」
可愛らしい声で、猫がまた喋りだした。
「ここからは、君が1人で歩いて行くんだ。」
何を言っとるんじゃこのノラネコは。
「ここからは、君が1人で歩いて行くんだ」
もう一度繰り返す。話の内容がよくわからず、振り返ってもう一度聞こうとすると、猫も扉も消えていた。
「はぁぁぁ…」
私はこれまでしたことがないほど大きなため息をついて、さっきとは全く違う、重い足取りで地面の草を踏み締めた。
「仕方ねぇなぁ。あるところに現世に住む女の子がいました…」
疲れた…昨日までキャンプに行っていたから。でも、今日はやることがなく、そこら辺にいたノラネコに話しかけていると、
「君、常世に興味はない?」
なんと野良猫が話し始めたのだ。
「猫がしゃべった!?というか常世って何?興味はあるけど…なんで私なの?」
「だって、つまらなそうにしてるから…晶の親族だし…」
「ん?ごめん最後のは聞き取れなかった。…でもなぁ」
「! 最後のは、なんでもない!ほら、やってみなくちゃわからない!あっ忘れずに鈴を持ってくるんだよ!」
私は、そのノラネコの言われるがままに急いで荷物の準備をした。昨日まで使っていたキャンプグッズ、鈴、お財布、食料、祖母の形見の指輪、着替えを持ってノラネコのところに急いだ。
「忘れ物はない?」
「うん!ないよ!」
「じゃあしゅっぱ~つ!」
そのノラネコの後をついていくのは少し大変だった。塀の上を歩いたり屋根の上を登ったり、小川を渡ったり、
そして、とうとう着いた廃墟の扉を抜けると、
そこはまるで別の世界の様な景色。朝と夜が絵の具の中で混ざりあったようにどこまでも温かく、どこまでも冷たい。そんな空だった。そびえ立つ山々のてっぺんは、所々雲に隠れている。かすかに聞こえる川のせせらぎは、清く淡く澄んでいた。
前に国語で習った四字熟語『山紫水明』はこんな景色のことを言うのかなぁ。と能天気なことを考えながら、しゃべるノラネコと2人歩く私であった。
「ここからは」
可愛らしい声で、猫がまた喋りだした。
「ここからは、君が1人で歩いて行くんだ。」
何を言っとるんじゃこのノラネコは。
「ここからは、君が1人で歩いて行くんだ」
もう一度繰り返す。話の内容がよくわからず、振り返ってもう一度聞こうとすると、猫も扉も消えていた。
「はぁぁぁ…」
私はこれまでしたことがないほど大きなため息をついて、さっきとは全く違う、重い足取りで地面の草を踏み締めた。
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