扉の向こうは異世界だった。 〜灯花のはちゃめちゃ冒険譚〜

エリナス

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第2章 リリースカウト編

7 図書館型秘密基地

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この世界に来て初めて見た21世紀の建物の前で遅れて来たロイと合流した。
「ほんっと酷い目にあった…ってカイ兄ここってことは…」
「そう!お察しの通りリリーを冒険の指揮官になってもらうために、スカウトしに来たんだよ」
「ねぇ、さっきから話している、リリーってどんな人なの?」
「まぁ中に入ってから説明するね」
建物の中に入る。大体築18年くらいだろうか、屋根が赤い瓦 かわらの可愛らしいお家だ。中に入ると、廊下がある。廊下を進むと右手側に地下へと続く螺旋階段らせんかいだんがあった。
螺旋階段らせんかいだんを降って行くと書斎の様な部屋に出た。
「えーっと確かこの本とこの本を…」

ガッコン

青い本を二冊引っ張ると本棚が動き出した。まるで秘密基地の様な構造だった。
本棚の間を通り抜ける。そこには不思議な空間が広がっていた。

天秤を持った大理石の女神像が悠々と二体そびえ立っている。その奥には泉にも川にも見える紫色の綺麗な水がある。その上には飛び石なのだろうか、はすの花が浮かんでいた。
何よりも目を引くのは視界に映る限りの本と本棚の数々だ
カイはそんな景色には目もくれず、スタスタと歩き始めた。

「今から会いに行くのは、リリー・エルフィー私の幼馴染みで、調べ物や情報が大好きなんだ。おっと、今日はパソコン部屋かな?こいつはリリー・エルフィー、こう見えて、天才ハッカーだよ」

その部屋は、ヒーローアニメの秘密基地の様な構造だった。

大きなモニターの前にちょこんと女性がゲーミングチェアに座っている。
キキキー… ピピピピ…
たくさんの電子音が重なる部屋の中、くるりとリリーはこちらを向いた。
もう何日も解いていない様なボサボサに絡まった海老茶えびちゃ色の髪の毛と、ボロボロになるまで使い古した服。その間からのぞく真っ白な肌は死人の様だ。
しかし何よりも目を引くのは野生動物の様に不気味に光る大きな目だ。
リリーは、私たちから目を離さずに、近くの引き出しをそっと開け、禍々まがまがしい赤いボタンを押した。
ガガガガガ
『ターゲット確認』無数のモニターが一斉に叫ぶ
(ん?)ガチャガチャとモニターの横から小刀や銃を構え出す
(んんんん?)『カウントダウン開始120秒前』
「何?!何このカウントダウン?!ロ、ロイ、なんとかしてー!」
そう言って私は近くにいたロイを前に突き出した。
「ハァ⁉︎なっ…チッ…こうなったら全部壊して‥」
ロイは構えの姿勢を取った
『95…96…』
「ん~?1つでも壊したらカウントダウン終了です?だって」
カイがニヤリと面白そうに「説明書」と描かれた紙を読んでいた。
(こいつ本当の殺人鬼になるつもり!)しかし肝心なリリーはまだ混乱したようにふらふらとよろめいている。
「あー!全く、お前が来てから散々だ!兄さんが華姫家に連れて行かれるわ、モンスター女共に殺されかけそうになったし!さてはお前疫病神か‼︎」
ロイの言葉で私の頭の中でプツリという何かが千切れる音がした
「い 言わせておけばー‼︎誰が疫病神よ!私なんてスーパーの福引きで五回連続当たったことあるから」
「はー‼︎俺は射的で店の景品全部掻っ攫ってかっさらって行ったことあるからな!」
「いやそれ運じゃないから」
「いわれてみれば」
『80…79…』
「とにかく逃げるよ!」
「いやにげるのは兄さんとおまえだけだ俺はコレを止めてから逃げる。兄さん!」
ロイが叫ぶとハイハイと呆れ顔でカイがやってきた。
「じゃあ行くよ灯花」
「ちょと待っ…」
目にも止まらぬ速さでカイが動く。
「はあ」
1人残された部屋で(いやまあ正確に言えば2人なんだが)ロイは小さくため息をついた。
育った環境のせいだろう。普通なら恐怖を感じるような場面だが、ロイは恐怖を感じない。
だからを恐れない。ふと頭の上に違和感を感じ、ロイは天井を見上げた。

「ギャー」「うわっ」

ロイは上から落ちてきたものを反射的にキャッチした。
「ナイス~」
「ナイス~っじゃねえよ!何やってんだ?!」
「何って…」
灯花が目を見開いたというのも、カウントダウンが急速に早くなっている。
ロイは何故か灯花をかばうように身を屈めた。しかし鳴ったのは


「パパーン」


盛大なクラッカーの音だった。灯花がカウントダウンの方に目をやると、カウントダウンは『 1 』のところで止まっていた。

「どういう こと?カイ? わけもわか らずプログラム組ませられて困惑 した けど。どうせその辺 に浮いているん でしょ。説明して。」
ギクッ
ずっと彫刻顔だったカイの顔が引きつった。
「やっぱり…」
「こ…コレから行動を共にする上で絆は必要不可欠‼︎どうしようかと頭を悩ませているうちに、この作戦が頭に浮かんだということだよ!☆」
また眩しい笑みを顔に貼り付け、カイは言った
「何言ってるの?兄さん元々仲良しだよ僕たちは?」
「‥ハイッ…まあ‥」
灯花が渋々言うとカイは満足そうに頷いた。
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