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第二話:聖域という名の鳥籠
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東京・三軒茶屋。
環七通りの喧騒から一本、迷路のような路地裏に逃げ込んだ先にある築年数を重ねたマンション。 一LDKという限られた空間は、当時の私たちにとって、広大すぎるほど自由な「帝国」だった。
三十二歳の私の腕の中には、二十九歳のミサキがいた。 仕事帰りの三軒茶屋駅、茶沢通りの入り口で待ち合わせる。 人混みの中から、都会の風を切り裂くように現れる彼女の姿を見つけるたび、私の胸には静かな、けれど確かな充足感が満ちていった。
「ケイスケ、お疲れ様。今日はバルの方、行っちゃう?」
そう言って悪戯っぽく笑う彼女の瞳は、都会の無数の光を吸い込んで、万華鏡のように輝いていた。
狭い路地にひしめき合う、年季の入った赤提灯と、洗練されたクラフトビールバー。 私たちは、アスファルトに反射する毒々しくも美しいネオンの海を泳ぐようにして、夜を歩いた。
カウンター席で肩を寄せ合い、冷えたグラスを鳴らす。
「美味しいね」 「うん、最高だね」
そんな、どこにでもある、けれど誰にも邪魔されない言葉のやり取り。 そこには、背筋を凍らせる「高村」という家名の重圧も、血脈という名の呪縛も存在しなかった。 私たちはただ、都会という巨大な匿名性の海に守られた、名もなき一組の男女だった。
週末、狭いキッチンで並んで立つ時間は、至福の儀式だった。 ミサキが奏でる包丁のリズムが、ワンルームの空間に心地よい生活の音を刻む。 肩が触れ合い、オリーブオイルの跳ねる香りが立ち上がる中、私たちは他愛もない夢を語り合った。
「いつか、もう少し広い部屋に引っ越そうか。世田谷線沿いの、静かなところがいいな」 「いいわね。ベランダでハーブを育てたりして」
ミサキの細い指先は、未来という名の楽譜を軽やかに弾くように、都会の夜の空気を愛おしくなぞっていた。 彼女の笑い声は、淀んだ空気さえも透明に変えてしまう魔法のようだった。
あの頃の私たちは、自分たちが何者からも自由であり、自分たちの手だけで人生という絵を完成させられるのだと、信じて疑わなかった。
窓の外、絶え間なく流れる環七のヘッドライトの列。 その光の中に、兄の透徹した視線が混じっていることなど、微塵も気付かずに。
私たちは、自分たちの輪郭を自分たちで描いているつもりだった。 その画用紙が、すでに兄の手によって用意された、湿った「影」の一部であるとも知らずに。
あの三軒茶屋の夜空に浮かんでいた月は、今思えば、私たちが地獄へ落ちるまでの、あまりに美しい猶予期間だったのだ。
しかし、その自由は「転勤」と「孝行」という、もっともらしい美徳の皮を被った暴力によって、あっけなく終わりを告げた。
地元の支店への異動。 それは長年、母屋から私を呼び戻そうとしていた両親への「回答」だった。
「ミサキ、大丈夫だよ。新築の家も用意してくれるって言っているし、生活は今よりずっと楽になる。東京を離れるのは寂しいかもしれないけれど、僕の故郷で、家族みんなに祝福されて暮らすんだ。新しいスタートだと思わないか?」
不安に揺れるミサキの肩を抱きながら、私は自分自身に言い聞かせるように言葉を重ねた。 ミサキが高村家に対して抱いている、あの本能的な忌避感――「あそこは空気が止まっている気がする」という彼女の直感――に気づかないふりをして。
高村家。
この地方において、その名は一種の「不可侵領域」を意味していた。 代々続く地主。黒塗りの板塀が延々と続く敷地は、外界の時間を拒絶するように聳立している。 かつては駅から邸宅までの道すべてが高村の土地だったという伝説は、今なお人々の記憶に薄暗い威光を放っていた。
選挙ともなれば代議士が門前に列をなし、冠婚葬祭のたびに古い序列が掘り起こされる。 そこは、個人の意志よりも「家の存続」が、個人の感情よりも「長男という秩序」が最優先される、異界だった。
両親が私たちのために建ててくれたという「新しい家」の鍵を受け取ったとき、私はそれを恩恵だと思った。 だが、ミサキにとっては、それは高村家という巨大な牙城に繋ぎ止められるための、黄金の鎖に過ぎなかったのだ。
引っ越し当初、ミサキは必死に明るさを取り繕っていた。 新調された北欧家具、両親が「彼女が退屈しないように」と斡旋したパートの仕事。 それらは一見、穏やかな再出発を装っていた。 しかし、その虚構の平和は、私が会社へ出勤した直後から、静かに、そして確実に侵食されていった。
私の不在を狙ったかのように、母がやってくるようになった。 最初は「困ったことはない?」という優しい問いかけだったものが、次第に、鋭い小言へと変貌していく。
「ミサキさん、この地方ではね、お盆の準備はこうするものなのよ」 「高村家の嫁として、恥をかかないように教養を身につけてもらわないと」
母の言う「教育」とは、実態としては無償の奉仕だった。 体調を崩しがちな父の病院への送り迎え、母屋の広大な庭の掃除、親戚への挨拶回りの同行。
ミサキの自由時間は、高村家という巨大なシステムのメンテナンスのために、少しずつ、しかし容赦なく削り取られていった。 彼女がかつて三軒茶屋で着ていた軽やかな服は、いつしか淡いベージュのエプロンの下に隠され、彼女の表情からは、都会の風を感じていた頃の輝きが消えていった。
そんなミサキの窮地を、私は「仕事」という聖域の中に逃げ込むことで無視し続けた。
皮肉にも、地元支店への異動とほぼ同時に、重要ポストの担当者が退職し、私がその後任に抜擢されたのだ。 期待。重圧。地方特有の、血の通った、しかし粘着質な人間関係。 私は深夜までオフィスに残り、週末も地方出張で家を空けることが増えた。
「ミサキ、ごめん。今が踏ん張りどころなんだ。君も実家のことで大変だろうけど、母さんも君を頼りにしているみたいだし、頑張ってくれ」
深夜、疲れ果てて帰宅した私の目に映るのは、リビングで所在なげに私を待つ、薄く透明になっていくようなミサキの姿だった。 彼女が母屋で何を言われ、どんな屈辱を飲み込んできたのか。 私はそれを尋ねる勇気を持たなかった。尋ねてしまえば、この「幸せな再出発」という嘘が崩れてしまうからだ。
そして、その閉塞感に止めを刺したのが、沈黙し続けるミサキの「胎内」への執着だった。
結婚四年目。 兄のソウイチに子供がいないという事実は、高村家の血脈を絶やさないという狂気的なプレッシャーを、すべて次男である私の家庭に集中させた。
「ケイスケは健康なのにね」 「嫁の身体が冷えているんじゃないのか」
親戚たちが集まるたびに交わされる、善意を装った刃のような言葉。 ミサキは、まるで自分がこの家における「不良品」であるかのような視線にさらされ続けた。
重い足取りで訪れた不妊外来の診察室。 そこは、私たちのプライバシーが「数値」という冷徹な言語に変換される場所だった。 医師の言葉は、曖昧で、それゆえに残酷な余白を残していた。
「奥様の方は、少し卵子の発育にムラがあるというか……出来にくい傾向があるかもしれませんね。旦那様の方も、精子の数や運動率が一般平均よりやや下回っていますが、自然妊娠が不可能なレベルではありません。まあ、お互いのタイミングと、これからの『頑張り次第』というところでしょうか」
その「頑張り次第」という言葉が、ミサキを最悪の隘路へと追い込んだ。 母は医師の言葉を都合よく解釈した。「ケイスケは大丈夫なんだから、あとはミサキさん次第なのよ」と。
ミサキは、その言葉を否定できなかった。 彼女の心の根底には「自分がこの家を停滞させている」という、実体のない罪悪感が根を張っていた。
都会の夜、寄り添って歩いた二人の影は、今や高村家の重厚な瓦屋根の下で、互いに触れ合うことさえできずに凍りついていた。
私はミサキの孤独を知っていた。 夜、隣のベッドで、彼女が呼吸を殺しながら泣いているのを感じていた。 だが、私は寝たふりを続けた。仕事で擦り減った精神には、彼女の絶望を受け止める器が残っていなかったのだ。
窓の外、母屋の影が庭を蝕み、私たちの離れをゆっくりと飲み込んでいく。 ミサキの心が、音を立てて削り取られていく。 その隙間を狙うように、ソウイチ兄さんのあの「完璧な微笑」が忍び寄っていることに、当時の私はまだ気づいていなかった。
高村家の次男としての私の人生は常に「光」の輪郭をなぞるだけの影のようなものだった。 その光の源泉こそが、兄・ソウイチという絶対的な太陽だった。
私は勉強も就職も、すべて兄の敷いたレールの上で成果を出した。 兄の管理下にある温室の中で、優秀な弟という役を演じ続けることだけが、私がこの家で息をするための唯一の術だった。
環七通りの喧騒から一本、迷路のような路地裏に逃げ込んだ先にある築年数を重ねたマンション。 一LDKという限られた空間は、当時の私たちにとって、広大すぎるほど自由な「帝国」だった。
三十二歳の私の腕の中には、二十九歳のミサキがいた。 仕事帰りの三軒茶屋駅、茶沢通りの入り口で待ち合わせる。 人混みの中から、都会の風を切り裂くように現れる彼女の姿を見つけるたび、私の胸には静かな、けれど確かな充足感が満ちていった。
「ケイスケ、お疲れ様。今日はバルの方、行っちゃう?」
そう言って悪戯っぽく笑う彼女の瞳は、都会の無数の光を吸い込んで、万華鏡のように輝いていた。
狭い路地にひしめき合う、年季の入った赤提灯と、洗練されたクラフトビールバー。 私たちは、アスファルトに反射する毒々しくも美しいネオンの海を泳ぐようにして、夜を歩いた。
カウンター席で肩を寄せ合い、冷えたグラスを鳴らす。
「美味しいね」 「うん、最高だね」
そんな、どこにでもある、けれど誰にも邪魔されない言葉のやり取り。 そこには、背筋を凍らせる「高村」という家名の重圧も、血脈という名の呪縛も存在しなかった。 私たちはただ、都会という巨大な匿名性の海に守られた、名もなき一組の男女だった。
週末、狭いキッチンで並んで立つ時間は、至福の儀式だった。 ミサキが奏でる包丁のリズムが、ワンルームの空間に心地よい生活の音を刻む。 肩が触れ合い、オリーブオイルの跳ねる香りが立ち上がる中、私たちは他愛もない夢を語り合った。
「いつか、もう少し広い部屋に引っ越そうか。世田谷線沿いの、静かなところがいいな」 「いいわね。ベランダでハーブを育てたりして」
ミサキの細い指先は、未来という名の楽譜を軽やかに弾くように、都会の夜の空気を愛おしくなぞっていた。 彼女の笑い声は、淀んだ空気さえも透明に変えてしまう魔法のようだった。
あの頃の私たちは、自分たちが何者からも自由であり、自分たちの手だけで人生という絵を完成させられるのだと、信じて疑わなかった。
窓の外、絶え間なく流れる環七のヘッドライトの列。 その光の中に、兄の透徹した視線が混じっていることなど、微塵も気付かずに。
私たちは、自分たちの輪郭を自分たちで描いているつもりだった。 その画用紙が、すでに兄の手によって用意された、湿った「影」の一部であるとも知らずに。
あの三軒茶屋の夜空に浮かんでいた月は、今思えば、私たちが地獄へ落ちるまでの、あまりに美しい猶予期間だったのだ。
しかし、その自由は「転勤」と「孝行」という、もっともらしい美徳の皮を被った暴力によって、あっけなく終わりを告げた。
地元の支店への異動。 それは長年、母屋から私を呼び戻そうとしていた両親への「回答」だった。
「ミサキ、大丈夫だよ。新築の家も用意してくれるって言っているし、生活は今よりずっと楽になる。東京を離れるのは寂しいかもしれないけれど、僕の故郷で、家族みんなに祝福されて暮らすんだ。新しいスタートだと思わないか?」
不安に揺れるミサキの肩を抱きながら、私は自分自身に言い聞かせるように言葉を重ねた。 ミサキが高村家に対して抱いている、あの本能的な忌避感――「あそこは空気が止まっている気がする」という彼女の直感――に気づかないふりをして。
高村家。
この地方において、その名は一種の「不可侵領域」を意味していた。 代々続く地主。黒塗りの板塀が延々と続く敷地は、外界の時間を拒絶するように聳立している。 かつては駅から邸宅までの道すべてが高村の土地だったという伝説は、今なお人々の記憶に薄暗い威光を放っていた。
選挙ともなれば代議士が門前に列をなし、冠婚葬祭のたびに古い序列が掘り起こされる。 そこは、個人の意志よりも「家の存続」が、個人の感情よりも「長男という秩序」が最優先される、異界だった。
両親が私たちのために建ててくれたという「新しい家」の鍵を受け取ったとき、私はそれを恩恵だと思った。 だが、ミサキにとっては、それは高村家という巨大な牙城に繋ぎ止められるための、黄金の鎖に過ぎなかったのだ。
引っ越し当初、ミサキは必死に明るさを取り繕っていた。 新調された北欧家具、両親が「彼女が退屈しないように」と斡旋したパートの仕事。 それらは一見、穏やかな再出発を装っていた。 しかし、その虚構の平和は、私が会社へ出勤した直後から、静かに、そして確実に侵食されていった。
私の不在を狙ったかのように、母がやってくるようになった。 最初は「困ったことはない?」という優しい問いかけだったものが、次第に、鋭い小言へと変貌していく。
「ミサキさん、この地方ではね、お盆の準備はこうするものなのよ」 「高村家の嫁として、恥をかかないように教養を身につけてもらわないと」
母の言う「教育」とは、実態としては無償の奉仕だった。 体調を崩しがちな父の病院への送り迎え、母屋の広大な庭の掃除、親戚への挨拶回りの同行。
ミサキの自由時間は、高村家という巨大なシステムのメンテナンスのために、少しずつ、しかし容赦なく削り取られていった。 彼女がかつて三軒茶屋で着ていた軽やかな服は、いつしか淡いベージュのエプロンの下に隠され、彼女の表情からは、都会の風を感じていた頃の輝きが消えていった。
そんなミサキの窮地を、私は「仕事」という聖域の中に逃げ込むことで無視し続けた。
皮肉にも、地元支店への異動とほぼ同時に、重要ポストの担当者が退職し、私がその後任に抜擢されたのだ。 期待。重圧。地方特有の、血の通った、しかし粘着質な人間関係。 私は深夜までオフィスに残り、週末も地方出張で家を空けることが増えた。
「ミサキ、ごめん。今が踏ん張りどころなんだ。君も実家のことで大変だろうけど、母さんも君を頼りにしているみたいだし、頑張ってくれ」
深夜、疲れ果てて帰宅した私の目に映るのは、リビングで所在なげに私を待つ、薄く透明になっていくようなミサキの姿だった。 彼女が母屋で何を言われ、どんな屈辱を飲み込んできたのか。 私はそれを尋ねる勇気を持たなかった。尋ねてしまえば、この「幸せな再出発」という嘘が崩れてしまうからだ。
そして、その閉塞感に止めを刺したのが、沈黙し続けるミサキの「胎内」への執着だった。
結婚四年目。 兄のソウイチに子供がいないという事実は、高村家の血脈を絶やさないという狂気的なプレッシャーを、すべて次男である私の家庭に集中させた。
「ケイスケは健康なのにね」 「嫁の身体が冷えているんじゃないのか」
親戚たちが集まるたびに交わされる、善意を装った刃のような言葉。 ミサキは、まるで自分がこの家における「不良品」であるかのような視線にさらされ続けた。
重い足取りで訪れた不妊外来の診察室。 そこは、私たちのプライバシーが「数値」という冷徹な言語に変換される場所だった。 医師の言葉は、曖昧で、それゆえに残酷な余白を残していた。
「奥様の方は、少し卵子の発育にムラがあるというか……出来にくい傾向があるかもしれませんね。旦那様の方も、精子の数や運動率が一般平均よりやや下回っていますが、自然妊娠が不可能なレベルではありません。まあ、お互いのタイミングと、これからの『頑張り次第』というところでしょうか」
その「頑張り次第」という言葉が、ミサキを最悪の隘路へと追い込んだ。 母は医師の言葉を都合よく解釈した。「ケイスケは大丈夫なんだから、あとはミサキさん次第なのよ」と。
ミサキは、その言葉を否定できなかった。 彼女の心の根底には「自分がこの家を停滞させている」という、実体のない罪悪感が根を張っていた。
都会の夜、寄り添って歩いた二人の影は、今や高村家の重厚な瓦屋根の下で、互いに触れ合うことさえできずに凍りついていた。
私はミサキの孤独を知っていた。 夜、隣のベッドで、彼女が呼吸を殺しながら泣いているのを感じていた。 だが、私は寝たふりを続けた。仕事で擦り減った精神には、彼女の絶望を受け止める器が残っていなかったのだ。
窓の外、母屋の影が庭を蝕み、私たちの離れをゆっくりと飲み込んでいく。 ミサキの心が、音を立てて削り取られていく。 その隙間を狙うように、ソウイチ兄さんのあの「完璧な微笑」が忍び寄っていることに、当時の私はまだ気づいていなかった。
高村家の次男としての私の人生は常に「光」の輪郭をなぞるだけの影のようなものだった。 その光の源泉こそが、兄・ソウイチという絶対的な太陽だった。
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