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恋する死神
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夢を見ているのか?
いつもの幻なのか?
いいや違う、、僕が何年も見続けてきた夢や幻なんかじゃない!
これは現実だ!!
僕の隣で眠っているのは、紛れもなく「真里洲先輩」
僕の手の届くはずのなかった恋焦がれた人。
この人は僕にとってただの「初恋の人」ではない。
初恋の人に間違いないけど、そんな簡単な言葉で表される存在でもない。
僕の世界の全てを凌駕する存在で、もしも愛に領域があるとしたら、僕のその領域全てを占める人だ。
大学時代に先輩と出会って、好きになったのは一瞬のことだったけど、そのまま10年以上の月日を変わらずに恋し続けてきた。
何があろうと誰と出会おうと決して忘れることができない。
かけがえのない人。
僕は真里洲先輩に出会ってから彼に救われ、生きる意味を知ったのだから。
先輩の卒業式の日に僕は決定的に失恋したから僕たちの関係は、たったの2年間先輩後輩として過ごしただけだ。
大学時代、僕が一方的に真里洲先輩が好きで大好きで堪らなくて夢中で恋してた。
会えなくなって数年経過した頃、先輩には恋人がいてアメリカで成功してると噂で聞いた…
僕は次々と舞い込むお見合い話にはうんざりしていたし、まわりに強く勧められ、押し切られた形でお見合い結婚した。
そんな結婚生活はストレスしかなかった。
僕は真里洲先輩が忘れられなくて、彼しか愛せない人間だと自覚した。
僕の離婚の決断は、とても早かった。
そうして真里洲先輩への愛を胸に秘めたまま生きてきた。
10年以上妄想で先輩を抱き続けた。
愚かだと分かっている。
先輩に欲望を抱いて触れてみたくて、「男なのにどうして?」と罪悪感があったのは10代の時だけ。
もちろん今でも僕は他の男に興味なんて全くない。
唯一恋した真里洲先輩の性別が自分と同じ男だっただけ。
僕が中学高校と付き合ったのは女の子だけだった。
結婚と同様、流されるまま付き合っただけで当時恋愛にはあまり興味なくて、性欲もあまりなくて僕って淡白なんだなって思ってた。
僕が性欲のオバケと化すのは真里洲先輩に対してだけだ。
そして今日初めて妄想ではなく、生きてる生身の真里洲先輩をこの胸に抱いた。
抱き合えるなら死んでもいいと思って生きてきたけど、今死ぬわけにはいかない。
このまさに夢のような現実離れした展開には、相当な理由がある。
僕は死神に僕の寿命と引き換えに「真里洲先輩を僕のものにする」という願いを叶えてもらったのだから。
命と引き換えてでも欲しいと思った先輩の心と体、その全ては、僕の妄想とは比べようがない究極と言える美しさだった。
…
まだ僕は昂って落ち着かなくておまけに頭も冴えて眠れない。
触れていないと先輩が消えてしまいそうで怖い。
隣で眠る真里洲先輩は無防備な寝顔まで綺麗だ。
見つめていると触りたくなって小さな僕がムクムクしてきて思わず唾を飲み込んだ。
二人が溶け合うように抱き合って「獅子人…」と、少し苦しそうに僕の名前を呼ばれた時はあっさりイキかけた。
胸が締め付けられるようで本当に死んでしまいそうだった。
真里洲先輩とのセックスは、何もかもが初めてのような震えるほど喜びを感じたし、相手を慈しみ愛おしさで溢れるようなエクスタシーは初めて感じるものだった。
生きる喜びなど全く無かった僕が、一瞬で溢れるような幸福感で充たされた。
清く柔く綺麗な真っ白な肌、その丸ごとが甘い。
寝息がほとんど聞こえないので彼の口元に自分の耳を近づけてみた。
暖かい吐息が耳に優しくかかる。
ちゃんと息してるって安心する。
そうしていると真里洲先輩が寝返りを打って少し丸まった。
僕の胸にちょこんと頭が触れる。それだけで犯罪級の可愛いさに悶えた。
10年、顔を見る事がなくても好きでいられたのに、こうして本物に触れてしまえば、タガが外れてもう精神状態おかしくなるのは必然。
もしかして5年で僕の息を止めるためにこんなにも狂わされているのか?
死神はそれが分かっていたのだろうか?
契約では僕は真里洲先輩に愛されて生きる5年間のはず。
彼に愛され、この胸に抱き、心からの笑顔をもらえることが、命と引き換えた条件。
なのに愛されているという実感がわかないし、愛されるどころか真里洲先輩は相当戸惑っているように見える。
もどかしくて仕方なくて、「僕とセックスしませんか」なんてことを口走った。
僕の愛の告白を受けて
「好きになってもらえるような人間じゃない」なんて返されたのに、僕の誘いを受け入れた先輩。
死神に僕に無理に体を開くように魔術でもかけられたのだろうか?
心配になる。
「死神よ!僕は真里洲先輩の心からの笑顔をまだ見ていない。契約違反じゃないのか?」
そう心の中で大きく叫んだ時、僕の頭上に死神が姿を現した。
僕の叫びは完全に無視して死神は低く唸るように言ったんだ。
【真里洲は天使以上に美しい。死神のオレの心はこの者に完全に奪われた】
死神は蕩けるような愛しげな目つきで頭上から真里洲をじっと見つめている。
その死神の恋をしたような顔つきには驚愕するしかなかった。
死神の胸には光る矢のようなものが突き刺さっていた。
まさかこれがよく言われる「天使の矢」なのか?
真里洲先輩の美しさは天界級かもしれないが人間だぞ!?
僕の生死をかけた契約はいったいどうなるんだ!
………
死神であるオレが人間に心を奪われた。
一目見て、そしてその類稀な美しさに瞬殺された。
「真里洲お前は本当に美しい」
神は人間に触れることができない。
触れる方法はただ一つ。
魂で体に入って支配すること。
これは受け入れる側の人間の同意がなければできないから、本来なら実現しない。
でも死神のオレが真里洲の体に入るという契約を本人と交わした。
正確には真里洲との共存になるのだが俺が真里洲の体を使って自由に話し行動していいのだ。
オレは死神だから、人間の願いを叶える条件は寿命(命)のみ。
命を差し出させる以外で願いを叶えることはできない。
だから獅子人にも寿命をもらった。
そう、願いを叶える対価は命のみなのだ!
もう一度言う「オレは死神」だから!
真里洲には5つ願いを叶えてやると大嘘をついた。
願いは当然ひとつとして叶えてやってない…というか命をもらわないなら死神のオレに力はないのだ。
億万長者とか、世界を支配する、なんて言い出す人間がほとんどなのに真里洲の願いは呆れるほどちっぽけなものだったからこそできた。
「信じる者は救われる」っていうことだ。オレの嘘は悟られることはなさそうだ。
美しく心惹かれる人間の体と声、オレは人として存在し人間界を闊歩してみたかった。
天界のルール違反になるが、少しの間人間と体を共有するくらいなら神にはバレないはず。
………
「真里洲、オレの声が聞こえるか?」
(聞こえてる)
「そうか…しばらくの間よろしく頼む」
(……。)
やはり真里洲、お前はとても綺麗だな。
鏡に映る姿、何もかもが最高だ。
一応神であるオレが体に入ったから、さらに美貌と魅力が突き抜けてしまった。
神の放つオーラがあるからキラキラしてすごいことになってる。
人間界レベル最高の後光が差してるが、大丈夫か?
《死神が真里洲の体を借りた一日目》
まずは獅子人の願いを叶えてやることにする「真里洲の笑顔が欲しい」って願いだ。
地上を歩くのは重力があるから体が重いけれど、素晴らしく心地がいいものだ。
飛べないし瞬間移動もできないが体に取り入れるもの全てがうまい、空気さえも。
『命は永遠ではないから、人の一生はかけがえなくて美しいものなのだな…』
死神は心の中でしみじみ思った。
…
「獅子人副社長、どちらへ行かれるのですか?」
長い会議が終わり、僕は社員専用のカフェにコーヒーを飲みに来た。
普段なら秘書が淹れるコーヒーを自室で飲むけれど、今は時間があれば副社長室を出たい。
部屋には篭っていたくない。
外に出れば真里洲先輩に偶然でも出会えるかもしれないから。
「獅子人副社長、私もご一緒します」
専務に言われたけど、一人になりたかったから断ってここに来た。
ここは社内で新設された社員専用のカフェテリア。
広くて明るく、何よりメニューも充実しているから人気がある。
取引先の人や工場の従業員も含めて多くの社員が利用する憩いの場所だ。
さすがに副社長の僕には、すぐに席が確保される。
テーブル席に座っているとカフェの出入口付近、その周りがやけにざわざわしている。
ソワソワしてるような人が行き交って、何人かでキャッキャと騒いでいたり、そんな落ち着かない人達であふれてる感じ。
いつもと違う異様な空気だとそう感じた。
なんとその原因は、カフェに休憩にやってきた「僕の真里洲先輩」だった。
キラキラしたオーラを纏った真里洲先輩がやってきて、その場が騒然としてたのだ。
そう、ほんの2日前、僕の腕の中にいた人だ。
僕に抱かれて一晩中その白い肌に触れて過ごした人。
僕が四六時中探してしまう人。
愛する真里洲先輩がそこにいた。
「ねぇ、あの人って何者?」
「素敵~!綺麗な人ね」
「あれが秀麗って言うのよね!それとも美麗な人って言う表現が合うかしら!?」
その煌めく真里洲の美貌に居合わせた人達の大賛辞が漏れ聞こえてくる。
僕にとっては、こんな場所で真里洲先輩が謎に従業員達に囲まれる大惨事。
「最近入社された海外戦略室の室長よ!」
「きゃー、なんてこと?あの若さで室長なの?」「おいくつなの?結婚してるの?」
誰も見るな、そして騒ぐな、彼はすでに僕だけのものと決まっているのだから。
僕に抱かれたせいなのか?(それはさすがに自惚れ過ぎか、、、)
危険なほど妖しい色気を漂わせているのに透明感のある美しさ。
昨日は先輩と結ばれた喜びで一日中雲の上を歩いているような感覚だった。
ただ死神のあの言葉と顔つきには不安が付き纏い、無性に気になって何も手につかなかった。
そして今日。社員用のカフェテリアで、なんと真里洲先輩が自ら僕に近づいてきた。
一瞬その場が静まりかえった気がした。
「獅子人副社長、お疲れ様です。もし良かったら私もご一緒してもよろしいですか?」
輝く笑顔に、ドキドキしてすぐに言葉を返せなかった。
会釈ではなくて、小首を傾げて眩しすぎる可愛さマックスの笑顔で僕を見つめてきた。
衝撃映像か?
真里洲先輩の笑顔は武器並みの殺傷能力がある、なぜなら今僕の心臓が止まりそうだから。
いや違う、世界が平和になる笑顔で間違いはない。
再会してから遠慮がちな微笑みしか見ていなかったのに、死神に契約違反だと大きく訴えた途端早速こう来た。
まさか先輩は死神に操られているのだろうか?(はい…)
今はそれでもいい。
学生時代に恋した先輩のあの笑顔が見れたのだから。
これから先、常に彼のそばにいるにはどうしたらいいんだろうか?
愛されているはずなのに、いまだに確信が持てない。
カフェテリアのテーブル席、向かい合った僕達。
僕には残された時間が少ないからこんな場所で、なりふり構わず小さい声で聞いてみた。
「真里洲先輩、僕の恋人になってくれるって返事をくれないんですか?まだちゃんと返事を聞いてませんよ」
「返事?どうしようかな」
真里洲先輩は僕に蠱惑的に微笑んで、
「今夜空いてたらまた一緒に過ごす?」
いきなりそうくる!?
思いもよらなかった先輩からのお誘いにも驚いて思わずひっくり返った。
先輩らしくなさすぎて、見事なまでにノックアウトされた。
先輩のことを考えると胸が焦がれる。
恋しくて辛くなるほど切なくて堪らない。
今は一秒も離れていたくない。
会ってくれたし、話もしてくれた。
でも今日はなぜか何かが違ってる気もする。
悪い意味ではない。
破壊力ある魅力で悩殺されたから。
僕はますますメロメロになってる、まさか死神が乗り移っているわけではあるまいし。
(正解、死神入りの真里洲先輩です)
そして今夜も僕は真里洲先輩を抱いた。
抑えきれない、制御不可能な欲望。
凄まじく襲いかかってくる快楽の波。
何度高みを迎えても際限がなく狂おしいほどに欲してしまう先輩の魔性の肉体。
死神と契約しなければ今日という日はこなかったはずだ。
これからの事に思いを巡らせてた。
僕の隣に寄り添って目を閉じてる真里洲先輩。
僕の頭は冴えていたけど、何となく目を閉じた時、力尽きているはずの彼がそっと起き出そうとした。
すぐに気がついて腕を思いっきり強く掴んで引っ張った。
「どこにも行かせない。行かないで」そう言って背中を強く抱きしめ引きとめた。
「まさか何も言わずに帰ろうとしてる?僕を一人にするつもり?」
つい大きな声を出してしまった。
振り返った先輩の表情が読めない。
「先輩、そんな顔をしないで。なんで僕と寝てくれたの?」
つい言ってしまった。
「ただエロいことしたかっただけ。何も考えてなかった。寝た事に深い理由なんて何もない」
驚愕の真里洲先輩の答えに固まった。
「したかっただけって…」先輩は魔性の男に転生したのか?
冷たく突き放されたようなセリフに強烈にシビれてる愚かな僕がいた。
その時僕は真里洲先輩には恋人がいるという噂を思い出した。
まさかその恋人の元に戻るのか?
恋人ともこんな風に寝るのなら恋人を抹殺してやる。
二度と誰にも触れさせはしない…。
この嫉妬心こそが5年の寿命になる理由かもしれない。
どうしたらいい?このまま見送るのか?
僕の頬には知らないうちに涙がつたってた。
「俺は変わってなかったか?」
真里洲先輩がいきなりそう言ったから違和感を感じた。
「お前の求めに応じて、気が向いたから寝ただけ、俺悪い男だけど、それでもいいと言うんならとりあえず付き合ってやってもいいよ」
「真里洲先輩!?」
僕は自分の命と引き換えに愛し愛されるはずなのに。
ここで何を言って、どう行動すべきかもわからず、得たいのしれない何か乗り移られた様な先輩に固まってしまった僕はそのまま彼を行かせてしまった。
彼が去ってすぐに孤独感に襲われ、今日たった一日が終わっただけなのに何か特別に大切なものを手放した気がして後悔と喪失感みたいなもので、ぐちゃぐちゃになった。
「うわあー」と叫んでいた。
もうあの人の全てを知ってしまったから元には戻れない。
心の底から愛してる。
真里洲先輩以外何もいらない、
死神!お願いだから出てきて!どうかどうか僕に説明してほしい!!
真里洲先輩は僕を愛してくれてるんでしょ?
僕達は今愛し合っているんだよね。
たしかにそう契約したんだから。
先輩に一体何が起こっているの?
先輩の身の上に何かあったに決まってる。
死神よ!僕は時間が惜しい、どうか先輩に起こったことを教えて欲しいんだ…。
死神入りの真里洲の一日が終わった。
全てのセリフは死神が発したもので真里洲が言ったわけじゃない。
真里洲は頭を抱えていた。
いつもの幻なのか?
いいや違う、、僕が何年も見続けてきた夢や幻なんかじゃない!
これは現実だ!!
僕の隣で眠っているのは、紛れもなく「真里洲先輩」
僕の手の届くはずのなかった恋焦がれた人。
この人は僕にとってただの「初恋の人」ではない。
初恋の人に間違いないけど、そんな簡単な言葉で表される存在でもない。
僕の世界の全てを凌駕する存在で、もしも愛に領域があるとしたら、僕のその領域全てを占める人だ。
大学時代に先輩と出会って、好きになったのは一瞬のことだったけど、そのまま10年以上の月日を変わらずに恋し続けてきた。
何があろうと誰と出会おうと決して忘れることができない。
かけがえのない人。
僕は真里洲先輩に出会ってから彼に救われ、生きる意味を知ったのだから。
先輩の卒業式の日に僕は決定的に失恋したから僕たちの関係は、たったの2年間先輩後輩として過ごしただけだ。
大学時代、僕が一方的に真里洲先輩が好きで大好きで堪らなくて夢中で恋してた。
会えなくなって数年経過した頃、先輩には恋人がいてアメリカで成功してると噂で聞いた…
僕は次々と舞い込むお見合い話にはうんざりしていたし、まわりに強く勧められ、押し切られた形でお見合い結婚した。
そんな結婚生活はストレスしかなかった。
僕は真里洲先輩が忘れられなくて、彼しか愛せない人間だと自覚した。
僕の離婚の決断は、とても早かった。
そうして真里洲先輩への愛を胸に秘めたまま生きてきた。
10年以上妄想で先輩を抱き続けた。
愚かだと分かっている。
先輩に欲望を抱いて触れてみたくて、「男なのにどうして?」と罪悪感があったのは10代の時だけ。
もちろん今でも僕は他の男に興味なんて全くない。
唯一恋した真里洲先輩の性別が自分と同じ男だっただけ。
僕が中学高校と付き合ったのは女の子だけだった。
結婚と同様、流されるまま付き合っただけで当時恋愛にはあまり興味なくて、性欲もあまりなくて僕って淡白なんだなって思ってた。
僕が性欲のオバケと化すのは真里洲先輩に対してだけだ。
そして今日初めて妄想ではなく、生きてる生身の真里洲先輩をこの胸に抱いた。
抱き合えるなら死んでもいいと思って生きてきたけど、今死ぬわけにはいかない。
このまさに夢のような現実離れした展開には、相当な理由がある。
僕は死神に僕の寿命と引き換えに「真里洲先輩を僕のものにする」という願いを叶えてもらったのだから。
命と引き換えてでも欲しいと思った先輩の心と体、その全ては、僕の妄想とは比べようがない究極と言える美しさだった。
…
まだ僕は昂って落ち着かなくておまけに頭も冴えて眠れない。
触れていないと先輩が消えてしまいそうで怖い。
隣で眠る真里洲先輩は無防備な寝顔まで綺麗だ。
見つめていると触りたくなって小さな僕がムクムクしてきて思わず唾を飲み込んだ。
二人が溶け合うように抱き合って「獅子人…」と、少し苦しそうに僕の名前を呼ばれた時はあっさりイキかけた。
胸が締め付けられるようで本当に死んでしまいそうだった。
真里洲先輩とのセックスは、何もかもが初めてのような震えるほど喜びを感じたし、相手を慈しみ愛おしさで溢れるようなエクスタシーは初めて感じるものだった。
生きる喜びなど全く無かった僕が、一瞬で溢れるような幸福感で充たされた。
清く柔く綺麗な真っ白な肌、その丸ごとが甘い。
寝息がほとんど聞こえないので彼の口元に自分の耳を近づけてみた。
暖かい吐息が耳に優しくかかる。
ちゃんと息してるって安心する。
そうしていると真里洲先輩が寝返りを打って少し丸まった。
僕の胸にちょこんと頭が触れる。それだけで犯罪級の可愛いさに悶えた。
10年、顔を見る事がなくても好きでいられたのに、こうして本物に触れてしまえば、タガが外れてもう精神状態おかしくなるのは必然。
もしかして5年で僕の息を止めるためにこんなにも狂わされているのか?
死神はそれが分かっていたのだろうか?
契約では僕は真里洲先輩に愛されて生きる5年間のはず。
彼に愛され、この胸に抱き、心からの笑顔をもらえることが、命と引き換えた条件。
なのに愛されているという実感がわかないし、愛されるどころか真里洲先輩は相当戸惑っているように見える。
もどかしくて仕方なくて、「僕とセックスしませんか」なんてことを口走った。
僕の愛の告白を受けて
「好きになってもらえるような人間じゃない」なんて返されたのに、僕の誘いを受け入れた先輩。
死神に僕に無理に体を開くように魔術でもかけられたのだろうか?
心配になる。
「死神よ!僕は真里洲先輩の心からの笑顔をまだ見ていない。契約違反じゃないのか?」
そう心の中で大きく叫んだ時、僕の頭上に死神が姿を現した。
僕の叫びは完全に無視して死神は低く唸るように言ったんだ。
【真里洲は天使以上に美しい。死神のオレの心はこの者に完全に奪われた】
死神は蕩けるような愛しげな目つきで頭上から真里洲をじっと見つめている。
その死神の恋をしたような顔つきには驚愕するしかなかった。
死神の胸には光る矢のようなものが突き刺さっていた。
まさかこれがよく言われる「天使の矢」なのか?
真里洲先輩の美しさは天界級かもしれないが人間だぞ!?
僕の生死をかけた契約はいったいどうなるんだ!
………
死神であるオレが人間に心を奪われた。
一目見て、そしてその類稀な美しさに瞬殺された。
「真里洲お前は本当に美しい」
神は人間に触れることができない。
触れる方法はただ一つ。
魂で体に入って支配すること。
これは受け入れる側の人間の同意がなければできないから、本来なら実現しない。
でも死神のオレが真里洲の体に入るという契約を本人と交わした。
正確には真里洲との共存になるのだが俺が真里洲の体を使って自由に話し行動していいのだ。
オレは死神だから、人間の願いを叶える条件は寿命(命)のみ。
命を差し出させる以外で願いを叶えることはできない。
だから獅子人にも寿命をもらった。
そう、願いを叶える対価は命のみなのだ!
もう一度言う「オレは死神」だから!
真里洲には5つ願いを叶えてやると大嘘をついた。
願いは当然ひとつとして叶えてやってない…というか命をもらわないなら死神のオレに力はないのだ。
億万長者とか、世界を支配する、なんて言い出す人間がほとんどなのに真里洲の願いは呆れるほどちっぽけなものだったからこそできた。
「信じる者は救われる」っていうことだ。オレの嘘は悟られることはなさそうだ。
美しく心惹かれる人間の体と声、オレは人として存在し人間界を闊歩してみたかった。
天界のルール違反になるが、少しの間人間と体を共有するくらいなら神にはバレないはず。
………
「真里洲、オレの声が聞こえるか?」
(聞こえてる)
「そうか…しばらくの間よろしく頼む」
(……。)
やはり真里洲、お前はとても綺麗だな。
鏡に映る姿、何もかもが最高だ。
一応神であるオレが体に入ったから、さらに美貌と魅力が突き抜けてしまった。
神の放つオーラがあるからキラキラしてすごいことになってる。
人間界レベル最高の後光が差してるが、大丈夫か?
《死神が真里洲の体を借りた一日目》
まずは獅子人の願いを叶えてやることにする「真里洲の笑顔が欲しい」って願いだ。
地上を歩くのは重力があるから体が重いけれど、素晴らしく心地がいいものだ。
飛べないし瞬間移動もできないが体に取り入れるもの全てがうまい、空気さえも。
『命は永遠ではないから、人の一生はかけがえなくて美しいものなのだな…』
死神は心の中でしみじみ思った。
…
「獅子人副社長、どちらへ行かれるのですか?」
長い会議が終わり、僕は社員専用のカフェにコーヒーを飲みに来た。
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部屋には篭っていたくない。
外に出れば真里洲先輩に偶然でも出会えるかもしれないから。
「獅子人副社長、私もご一緒します」
専務に言われたけど、一人になりたかったから断ってここに来た。
ここは社内で新設された社員専用のカフェテリア。
広くて明るく、何よりメニューも充実しているから人気がある。
取引先の人や工場の従業員も含めて多くの社員が利用する憩いの場所だ。
さすがに副社長の僕には、すぐに席が確保される。
テーブル席に座っているとカフェの出入口付近、その周りがやけにざわざわしている。
ソワソワしてるような人が行き交って、何人かでキャッキャと騒いでいたり、そんな落ち着かない人達であふれてる感じ。
いつもと違う異様な空気だとそう感じた。
なんとその原因は、カフェに休憩にやってきた「僕の真里洲先輩」だった。
キラキラしたオーラを纏った真里洲先輩がやってきて、その場が騒然としてたのだ。
そう、ほんの2日前、僕の腕の中にいた人だ。
僕に抱かれて一晩中その白い肌に触れて過ごした人。
僕が四六時中探してしまう人。
愛する真里洲先輩がそこにいた。
「ねぇ、あの人って何者?」
「素敵~!綺麗な人ね」
「あれが秀麗って言うのよね!それとも美麗な人って言う表現が合うかしら!?」
その煌めく真里洲の美貌に居合わせた人達の大賛辞が漏れ聞こえてくる。
僕にとっては、こんな場所で真里洲先輩が謎に従業員達に囲まれる大惨事。
「最近入社された海外戦略室の室長よ!」
「きゃー、なんてこと?あの若さで室長なの?」「おいくつなの?結婚してるの?」
誰も見るな、そして騒ぐな、彼はすでに僕だけのものと決まっているのだから。
僕に抱かれたせいなのか?(それはさすがに自惚れ過ぎか、、、)
危険なほど妖しい色気を漂わせているのに透明感のある美しさ。
昨日は先輩と結ばれた喜びで一日中雲の上を歩いているような感覚だった。
ただ死神のあの言葉と顔つきには不安が付き纏い、無性に気になって何も手につかなかった。
そして今日。社員用のカフェテリアで、なんと真里洲先輩が自ら僕に近づいてきた。
一瞬その場が静まりかえった気がした。
「獅子人副社長、お疲れ様です。もし良かったら私もご一緒してもよろしいですか?」
輝く笑顔に、ドキドキしてすぐに言葉を返せなかった。
会釈ではなくて、小首を傾げて眩しすぎる可愛さマックスの笑顔で僕を見つめてきた。
衝撃映像か?
真里洲先輩の笑顔は武器並みの殺傷能力がある、なぜなら今僕の心臓が止まりそうだから。
いや違う、世界が平和になる笑顔で間違いはない。
再会してから遠慮がちな微笑みしか見ていなかったのに、死神に契約違反だと大きく訴えた途端早速こう来た。
まさか先輩は死神に操られているのだろうか?(はい…)
今はそれでもいい。
学生時代に恋した先輩のあの笑顔が見れたのだから。
これから先、常に彼のそばにいるにはどうしたらいいんだろうか?
愛されているはずなのに、いまだに確信が持てない。
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「真里洲先輩、僕の恋人になってくれるって返事をくれないんですか?まだちゃんと返事を聞いてませんよ」
「返事?どうしようかな」
真里洲先輩は僕に蠱惑的に微笑んで、
「今夜空いてたらまた一緒に過ごす?」
いきなりそうくる!?
思いもよらなかった先輩からのお誘いにも驚いて思わずひっくり返った。
先輩らしくなさすぎて、見事なまでにノックアウトされた。
先輩のことを考えると胸が焦がれる。
恋しくて辛くなるほど切なくて堪らない。
今は一秒も離れていたくない。
会ってくれたし、話もしてくれた。
でも今日はなぜか何かが違ってる気もする。
悪い意味ではない。
破壊力ある魅力で悩殺されたから。
僕はますますメロメロになってる、まさか死神が乗り移っているわけではあるまいし。
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そして今夜も僕は真里洲先輩を抱いた。
抑えきれない、制御不可能な欲望。
凄まじく襲いかかってくる快楽の波。
何度高みを迎えても際限がなく狂おしいほどに欲してしまう先輩の魔性の肉体。
死神と契約しなければ今日という日はこなかったはずだ。
これからの事に思いを巡らせてた。
僕の隣に寄り添って目を閉じてる真里洲先輩。
僕の頭は冴えていたけど、何となく目を閉じた時、力尽きているはずの彼がそっと起き出そうとした。
すぐに気がついて腕を思いっきり強く掴んで引っ張った。
「どこにも行かせない。行かないで」そう言って背中を強く抱きしめ引きとめた。
「まさか何も言わずに帰ろうとしてる?僕を一人にするつもり?」
つい大きな声を出してしまった。
振り返った先輩の表情が読めない。
「先輩、そんな顔をしないで。なんで僕と寝てくれたの?」
つい言ってしまった。
「ただエロいことしたかっただけ。何も考えてなかった。寝た事に深い理由なんて何もない」
驚愕の真里洲先輩の答えに固まった。
「したかっただけって…」先輩は魔性の男に転生したのか?
冷たく突き放されたようなセリフに強烈にシビれてる愚かな僕がいた。
その時僕は真里洲先輩には恋人がいるという噂を思い出した。
まさかその恋人の元に戻るのか?
恋人ともこんな風に寝るのなら恋人を抹殺してやる。
二度と誰にも触れさせはしない…。
この嫉妬心こそが5年の寿命になる理由かもしれない。
どうしたらいい?このまま見送るのか?
僕の頬には知らないうちに涙がつたってた。
「俺は変わってなかったか?」
真里洲先輩がいきなりそう言ったから違和感を感じた。
「お前の求めに応じて、気が向いたから寝ただけ、俺悪い男だけど、それでもいいと言うんならとりあえず付き合ってやってもいいよ」
「真里洲先輩!?」
僕は自分の命と引き換えに愛し愛されるはずなのに。
ここで何を言って、どう行動すべきかもわからず、得たいのしれない何か乗り移られた様な先輩に固まってしまった僕はそのまま彼を行かせてしまった。
彼が去ってすぐに孤独感に襲われ、今日たった一日が終わっただけなのに何か特別に大切なものを手放した気がして後悔と喪失感みたいなもので、ぐちゃぐちゃになった。
「うわあー」と叫んでいた。
もうあの人の全てを知ってしまったから元には戻れない。
心の底から愛してる。
真里洲先輩以外何もいらない、
死神!お願いだから出てきて!どうかどうか僕に説明してほしい!!
真里洲先輩は僕を愛してくれてるんでしょ?
僕達は今愛し合っているんだよね。
たしかにそう契約したんだから。
先輩に一体何が起こっているの?
先輩の身の上に何かあったに決まってる。
死神よ!僕は時間が惜しい、どうか先輩に起こったことを教えて欲しいんだ…。
死神入りの真里洲の一日が終わった。
全てのセリフは死神が発したもので真里洲が言ったわけじゃない。
真里洲は頭を抱えていた。
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番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
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