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86話

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それを聞いた俺は驚いた。何故なら俺と華雄は一度も会ったことがないのだから。だが、俺よりももっと驚いた者がいた。
そう、それは華雄である。
俺も驚きながらも話に入っていった。
「何で貴方がここに居るんだ?」
すると父は答えた。
「そんなもの決まっておろう。董卓を倒すためじゃ。その為にはまず手始めとしてここを落とし、さらに都も落とすつもりじゃ」
それを聞いていた華雄は怒り心頭だった。
「貴様!!何をふざけた事を言ってやがる!そんな事はさせない!!」
華雄の言葉を聞くと父は笑って答えた。
「威勢が良いのは相変わらずじゃの。まぁよい、すぐにお前達も死ぬことになるだろう」
そして父は立ち上がり外に出ようとした。
俺は急いで止めようとするが、それよりも先に父の近くに居た護衛が槍を刺した。そして父が倒れたので、俺と華雄は急いで駆け寄って治療を始めた。そして、俺は父の手当をしながら言った。
「どうしてこんなことをしたんだ?」
それに対し父は苦しそうな声で言う。
「私は、この国の王として最後までこの国に責任を持ちたい。たとえ私がここで死のうとも……」
それを聞いた俺は涙を流した。そして俺は決意した。
(父上を助ける)
それから、俺は華雄に話し掛ける。
「これから、どうするつもりだ?」
それに対して華雄は、覚悟を決めた様子で言う。
「決まっているだろ?俺は董卓と戦う」
それを聞いた俺はある提案をした。
「俺も同じ考えだ。俺が今考えている計画に協力してくれないか?」
それを聞いた華雄は、少し考えてから答えた。
「良いぜ。ただし条件がある。俺は、董卓の首を必ず取りに行くからお前が持って来い。それまで絶対に生きていろよ」
俺はそれを聞きながら、少し考えてから返事をする。
「分かった。俺は約束を守る。その代わり董卓の首は必ず取ってくるから安心しろ」
俺はそういうと華雄と別れた。
そして俺は一人になったので、城の最上階にある自分の部屋で今後のことについて考えていた。
すると突然後ろから誰かに肩を叩かれた。俺は振り向くとそこに見覚えのある女性が立っていた。俺はその女性を見ると思わず驚いてしまう。なぜならその女性は、この世界の管理者である女神の一人なのだから。
女神は微笑みながら言う。
「こんにちは。また会いましたね」
俺は焦りながらも、冷静さを保ち質問する。
「どうしてあなたは俺のところに何度も現れるんですか?」
それに対して彼女は答えた。
「私は、貴方とこの世界のバランスを取るために存在しています。貴方は、私にとって大切な存在なので」
彼女がそう答えると、今度は俺の方から彼女に質問することにした。
「それで聞きたいことがあるのですが、この国を攻めている董卓軍についてどう思いますか?俺にはとても酷い人間とは思えないんですよ。」
それを聞いた彼女は少し考えて答えた。
「董卓軍は悪です。彼は人を殺すことに快楽を覚えているのでしょう」
それを聞いた俺は、悲しくなってきた。
(なんて悲しい奴なんだ……でもどうすれば良いんだよ……)
そこで、この女神様に提案を出すことにした。
「一つお願いしたいことがあります。もし良ければ、あの人の命だけでも助けることは出来ませんか?無理なら俺の願いは諦めるしかないけど」
それを聞いた彼女はしばらく黙っていたがやがてこう答えた。
「私の力を使えば可能だと思います。しかし彼の場合は死よりも恐ろしい目に会うかもしれないわよ?」
それを聞いた俺は考えたが決心はついていた。
「わかりました。その死ぬことよりも恐ろしい目にあってもらいます彼には」
俺はそう言い残して彼女の前から去った。
次の日の朝、華雄は呂布の元へ向かっていた。
(あいつ、本当に一人で董卓を倒しに行こうとしてるのかよ……)
そうして華雄は、俺の部屋の前までやって来た。俺は華雄に中に入るように勧めると、華雄は素直に従った。するとそこには華雄の姿は無く、俺だけが座っていた。
俺達はしばらくの間、沈黙していたが華雄がついに口を開いた。
「昨日、お前は何を考えていたんだ?」
それに対して俺は正直に答える。
「俺の本当の親についてだよ。お前にも言っておこうと思ってな。俺の父上は漢の皇帝だったんだぞ!」
それを聞いて華雄は驚きの表情をしていた。そして俺は、父上の事について話始めた。俺は華雄に向かって話し出す。
「俺の父上は、漢の皇帝だったんだぞ!凄いだろ?」
それを聞いた華雄は明らかに困惑していた。俺は構わず続けた。
「だけど、今の皇帝の劉弁によって父上は殺されそうになった。それを母上は守るために死んだらしいんだ」
俺はその話を聞いて泣いてしまった。
(どうして、俺の父上は殺されたんだ?何も悪い事していないのに……)
それを見た華雄は慌てて慰めてくれる。
しばらくして、ようやく泣き止んだ後、華雄が真剣そうな顔で俺の事を見てきた。
「董卓軍の事は俺に任せておけ。必ず董卓を仕留める」
俺はそれを聞いて嬉しかった。なぜなら華雄にはどうしても頼みたかったことがあったからだ。それは、董卓軍を殲滅することではない。それはあくまでも手段で目的ではない。だから、そのついでで構わないのだ。俺の目的はただ一つ、父の劉弁を助けて欲しいだけだから。
俺は華雄に向かって言う。
「華雄、俺の父を頼む。絶対に救ってくれ」
華雄は答えた。
「あぁ、お前は絶対に生きていろよ」
俺は、この時ほど嬉しいと思ったことは無かった。そして華雄とはその場で別れることにした。
俺は一人になりこれからどうしようか考えていた時、ある男から手紙が届いた。その男は華雄からのものだった。その内容はとても短いもので、
『董卓の首を取れば全て終わる。俺もすぐにお前と合流するから、待っていろ』
ただそれだけの手紙だったが俺は満足した。そしてすぐに返信を出した。
「待っているから早く来い。そして董卓を殺せ」
俺は、その後、部屋の窓から外の風景を見ていた。華雄が来るまでずっと眺めているつもりだ。その時、俺はある事に気が付いた。
(俺も戦わないとダメじゃないか!!だって華雄は俺の事を思って言ってくれてる訳だし……)
俺はそう思うと部屋を出て華雄を探すことにした。華雄はきっと戦場に行くだろう。だから、俺は彼を止めなければならない。そう思いながら俺は城から出て街へと出て行った。
その頃、華雄と張遼は軍を率いて洛陽の外にいた。
華雄が馬に乗っていると後ろから張遼が声を掛けてくる。
「おい、華雄。何やってんだよ」
それに対して華雄は不機嫌そうに答えた。
「何でこんなところに居るのかと聞いてるんだよ」
それに対し、張遼は笑みを浮かべながら答えた。
「俺は董卓軍を滅ぼすためにきたんだよ」
それに対して華雄は呆れた様子で言う。
「相変わらずだなお前は……」
それから二人はしばらく睨み合っていたが、華雄が諦めたかのように言った。
「まぁ良い、今回は許してやる。その代わり董卓の首を取ってこいよ」
それに対して張遼は自信満々に言う。
「任せておけよ」
二人が話しているところへ一人の兵が報告にやってきた。
「将軍方、大変です!!」
「なんだ?」
「敵の軍が向かってきてます」
それを聞いた華雄はすぐに戦闘態勢に入る。
「全軍撤退準備、今すぐだ急げ」
そして張遼もその兵に話しかける。
「敵の規模と戦力を教えてくれないか?」
それに対して兵は慌てていた。
「規模は約1万程、それに虎牢関の呂布軍です」
それを聞いた張遼はため息をつく。
(また、あのチビガキの仕業か……)
そして、華雄の方に振り向く。
「俺は行くぞ」
華雄は少し悩んだが、すぐに決断する。
「俺も付いていくぜ」
それを聞いた張遼は笑って答えた。
「やっぱりそうかよ。お前は本当にバカだな」
「うっさい」
華雄はそう言い残すと馬を走らせた。
俺達は、今現在董卓軍と衝突をしている。しかし董卓軍はこちらより数が多いので押され始めている。そこで俺は、自分の実力を確かめるため戦いに参加した。俺はまだ一度も本気で戦ったことがない。なぜなら俺は本気を出せば一瞬でこの世界を破壊できる程の力を持っているからだ。しかし、俺はそれをしない。なぜかと言うと俺の大切な人達が俺をこの世界に連れてきてくれた。だから俺はその人を守るために使う。それがたとえ神であろうと魔王であろうと俺が守りたいものは変わらない。
俺が戦うことを決意し、前線に出ようとした時だった。俺の前に一人の武将が立っていた。その男は、華雄だった。華雄は俺に問いかけてきた。
「お前、名前は?」
俺は答えようとして言葉に詰まる。なぜなら、俺の名前は本名ではなく真名だったからだ。だから、正直に答えるか、偽るか、嘘を言うかのどれかを選ぼうと思ったが俺の心の中を見透かしたかのように華雄が言う。
「別に本当の名前じゃなくても構わない。だが、お前が俺に本当の事を言いたくないというのならそれでも構わない。だけどこれだけは覚えておいて欲しい。お前が何者だろうと俺は味方であり友であると」
その言葉を言われた俺は、自然と涙が溢れ出てきた。
「わかった。ありがとう俺は呂布奉先だ。皆からは呂布将軍と呼ばれている」
華雄は俺に背中を向けると戦場に向かって行った。俺もそれに続くように戦場に向かう。
(俺は必ず守る。みんなを絶対に……)
俺は、剣を持ち、敵軍に向かって走る。すると目の前に大きな盾を持った男が立ちふさがる。
(あれが噂の張遼とかいう奴か……)
華雄はその男を見てニヤリと笑った。その男は張遼で間違いないと確信したからだ。張遼はその手に持っていた大きな盾を構える。張遼は言う。
「貴様が俺の前に立つのか?いいだろう。お前が何者か知らんが叩き潰してくれる」
張遼はそのまま大声で叫び始める。
「聞け!我らが誇り高き漢の兵よ。我こそが真の漢の大将軍の右腕にして武の頂を極めし者。その身に宿すは天与の才。我が名は張遼文遠!!いざ参る」
それを聞いていた周りの兵士達は叫ぶ。
「我こそは張遼将軍の一騎当千なる強さの証、張飛なり。いざ、推してまいる」
さらに周りから声が上がる。
「俺が張遼だ。死にたくなければどけ」
そして最後に張遼の隣にいた男が前に出る。
諸葛亮孔明は杖型の機神で機神ライネルを召喚した。
そして
「私は、諸葛 亮 軍師。我が術にて、汝を殲滅せん」
そして、それぞれの自己紹介が終わると戦闘が始まった。
張遼の槍が振るわれる。しかし、それは簡単に防がれてしまった。それに対して張遼も驚くことはなかった。
「さすがは呂布だな」
ただそれだけ言ってまた攻撃を仕掛けるが、今度はあっさりとかわされてしまう。それに対して張遼が聞く。
「何故だ?どうして攻撃を当てられない?」
それに対して呂布は冷静に答えた。
「貴方の攻撃が遅いだけだ」
張遼はそれを言われるとイラついた様子で言う。
「ほう、ではやってみるが良い」
それに対して張遼は全力で攻め始めた。
張遼の連続攻撃をなんとか捌いている呂布だったが、徐々に傷が増えていき押されていた。
「どうした、口だけか?」
そう言いながら張遼は槍を振るってくる。それに対して俺はある行動をとった。俺は武器を手放すとそのまま素手で槍を掴んだのだ。それに対して他の武将たちは驚いた。
「何やってんだ!?」
そう言いながら俺のところに来ようとした華雄を俺は止めた。
「来るな」
そう言いながら、俺の手から血が流れる。
「『かの者に癒しの力』ヒール」
俺は自分に回復魔法を掛けた。
俺の身体が光に包まれると傷が全て消えた。
張遼は動揺していた。
「お前、なんで……」
俺は張遼を睨みつけた。
「お前に俺は殺せない」
そして、俺は張遼の腹に拳を入れた。
「がはっ」
張遼は吐血しながら倒れ込んだ。そして、張遼にも回復魔法を掛けておいた。
「無理せず寝てな」
俺はそう言うと、自分の持っている大剣を手に取った。俺はその剣に雷属性と炎属性を付与させた。すると、大剣は眩い光を放ち出した。俺は、その大剣を振り上げ地面に振り下ろす。すると凄まじい轟音と共に地面が割れた。それを見た敵兵達も敵わないと思ったのだろう、次々に逃げ出していった。しかし、張飛だけは逃げようとしなかった。それどころか立ち向かおうとしていた。俺は張飛に向かって話しかけた。
「お前、劉備の仲間じゃないのか?」
張飛はそれを聞くと笑って言った。
「確かに、最初はあいつのために戦ったよ。だけど今は違う。俺は自分の意思で戦っている。この張翼徳が力を求める限りどこまでも強くなる。」
「なんてやつだ」
俺がそう呟くと、張飛は大声で叫んだ。
「行くぞ、化物」
俺は大剣を構えて答えた。
「こいよ」
そして二人は同時に動き出した。お互い一歩も引かない攻防戦が続いた。
俺は張飛の蹴りを紙一重で避ける。張飛が追撃の攻撃を仕掛けようとするが、俺が反撃をしかける。
俺が張飛に一撃を与える度に俺の腕に衝撃が伝わる。お互いに互角の戦いだった。しかし、俺は張飛の速さに段々と追いつけなくなっていた。俺は、少しずつダメージを負うようになっていた。
「なかなかやるじゃねぇか。だが、終わりだ!!」
張飛は俺に向かって飛び掛かってきた。俺は張飛が飛んでくるタイミングに合わせてカウンターをしようとした。
しかし、その時にはもう張飛の姿はなかった。俺はすぐに周りを見渡すがどこにもいなかった。
(しまった!上か!!)
その瞬間だった。俺の上空から俺の顔面目掛けて蹴る態勢になっている張飛が降って来た。
(これは避けきれない……)
その刹那だった。張遼が張飛の後ろから攻撃した。
「うわぁあああ!!!」
その攻撃は見事に決まった。張飛は倒れた。その光景を見て俺は呆然としていた。
(あの張遼とかいう奴が張飛を倒してくれるとは……)
俺は心の中で感謝をした。
一方、その頃呂布はというと。
(はやく終わらないか?)
そんなことを考えていたのであった。
華雄side 華雄は目の前の呂布を見て言う。
「呂布、お前は強いな」
それに対し呂布は言う。
「ありがとう。ところで一つ聞いてもいいかな?」
華雄はそれを聞くと答える。
「構わない」
その返事を聞いた呂布は質問する。
「君は本当に漢の将なのか?」
「いや……私は……」
呂布は言葉を遮るように話す。
「まあ良い。君がもし漢の武将ならば何故曹操に手を貸す?」
呂布の言葉に対して少しの間を空けてから言う。
「それは、私にも色々あったからだ」
呂布はその言葉を聞いても何も答えなかった。その代わりにまた問いかける。
「もう一度聞くけど、君は一体何者なんだ?」
「私は漢王朝に仕えている将軍だ!」
それに対して呂布は微笑みながら答える。
「そうか。わかった。君のことを信じよう」
俺がそう言い終わると同時に戦いが始まった。俺は一瞬にして間合いを詰めてきた。それに対して華雄は咄嵯に剣を抜き応戦するが俺の攻撃を防ぎきれなかった。
「くっ!やるな呂布奉先!」
と言われたので俺は答える。
「君もね」
俺はそう言い返すと今度はこっちから仕掛ける。
「行くぞぉおお!!!」
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