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5話

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「私はまだ弱いわ。このままだと、いずれ私のせいで大切な人を傷付けてしまうかもしれない。だから、強くなって守りたい人が出来た時にその力を使いこなせるようになりたいと考えているわけよ」
「なるほど、つまり、強くなるために僕の力を貸せということか……」
「そういうことね」
「でも、どうして俺なんかの力を借りる必要があるんだ?」
「それは、私があなたの師匠に相応しい人物だと思うからよ」
「え!?」
「あなたのステータスを見たのだけど、とても強い魔力を感じたの。特にユニークスキルが凄いわ。きっと、今まで多くの経験を積んできたのでしょう?」
「いや、俺の鑑定スキルのことを知っているのか?」
「ええ、知っているわよ。鑑定士が鑑定スキルを使うところを何度も見たことがあるもの」
「なるほど……」
「だから、あなたの力が欲しいの」
「う~む、わかった。その申し出を受けさせてもらうよ」
「本当!?」
「ああ、こちらこそ頼むよ」
「やった!ありがとう!!」
「いえいえ」
「それでは早速、修行を始めていきますか」
「お手柔らかに頼みますよ」
「任せておきなさい」
こうして、俺の異世界での新たな生活が始まるのであった。
—―――
《名》
『真実の目』
……対象の能力や状態を確認することが出来る。
レベルに応じて効果が上昇する。
俺とサランが二人で訓練をしている中、その様子をじっと見つめる視線があった。
「へぇ、あの子なかなかやるじゃない」
「そうなんですか?」
「そうね。だって、この前『氷の女王』を怒らせた男を倒したのは彼女だもの」
「へっ?」
「あら、知らなかったの?」
「はい」
「そういえば、貴方はあまり彼女と関わっていなかったわね」
「そうです」
「彼女は、この学園の中でもトップクラスの実力者として知られている存在なんだけど、彼女の二つ名は『冷血』と呼ばれているの」
「『冷血』ですか」
「そう、『氷』系統の魔法を得意としていて、しかも、かなり強力な使い手でね。一度彼女が怒った時は、辺り一面が凍り付いたって話を聞いたことがあるくらいだわ」
「そんなに強いんですね」
「だから、彼女に認められた彼は、かなりの実力を持っているはずよ」
「へ~」
「興味を持ったのならば、話しかけてみると良いんじゃないかしら」
「そうしてみますね。教えてくださってありがとうございます。先生」
「どういたしまして。頑張ってね!」
「はい!」
(ふぅん。やっぱり、ただ者ではないみたいねぇ)
そんなことを考えながら
見守る先生だった。
—――
その頃、別の場所にて……
「おい、聞いたか?あのサランさんが弟子を取ったらしいぜ!」
「マジで?あのサランさんが?」
「ああ、間違いないらしいぞ」
「信じられねえなぁ。どんな奴なんだろ?」
「それがよぉ、何でも無の適性持ちの無能野郎なんだとよ!」
「ハハッ、そりゃ傑作じゃねえか!」
「だよなぁ!」
「お前もあいつには気をつけないとな!」
「わかっているよ。でも、無の適性のくせに、よくあんな大層なこと言えたもんだよ!」
「ほんとそれ!」
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