三国志~呂布奉先~異世界三国志は今宵もまかり通る

みなと劉

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74話

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突然の呂布からの申し出に劉備は驚いてはいたが、それ以上に驚いたのは呂布に頭を下げさせた夏侯惇に対してだった。
しかし当の夏侯惇はその様な事は一切気にしている様子も無く笑顔を向ける。
「それはまた突然ですな」
そんな夏侯惇の言葉に劉備は頷きながらも口を開く。
「一応お聞きしたいのですが、趙雲殿には何をさせようと言うのですか?」
その言葉を聞いた張飛が前に進み出ようとするのを関羽が止める。
「私からもお願いします」
関羽が代わりに口を開く。
その様な事は許されないはずの事なのだが、曹操がそれを黙認している事もあり劉備も関羽の出方を見て見る事にしたらしく夏侯惇に言う。
「呂布将軍に何をさせるつもりなんだ?」
そんな劉備の言葉に張飛は何か言おうとしたが夏侯惇が目だけで何も言うなと言っている様で黙っている。
すると、今度は張飛だけではなく側に居る関羽にも視線を送る夏侯惇。
二人は、視線に込められた意思を理解しているので無言で頷く。
張飛のそんな行動に劉備も少しだけ驚くが夏侯惇はその事に気付いていない素振りを見せる。
そんなやり取りを見ていた呂布が答える。
「私は元直将軍と同じで将軍をお守りする為に参りました」
その言葉に劉備は驚き趙雲の方に視線を向けるのだが、当の趙雲は涼しげな顔をしているだけだったのだ。
(なるほどな、呂布奉先に守ってもらうとはな)
そう思い口元が綻びそうになるのだが、呂布の事をよく知らない劉備にしてみれば一体どんな目的があっての事なのか理解出来なかった。
「趙雲殿にはその様な事は必要ありませんよ」
劉備はそう言うと夏侯惇に厳しい視線を向けた。
その視線を受けつつも夏侯惇は一歩も退けないと言わんばかりに笑顔のまま立っているだけだったが、その事により関羽も張飛も驚いていた。
「ま、まぁまぁ劉備殿」
関羽が落ち着かせる様に話し掛けるのだが、それを劉備が手で制した。
「元直将軍と同じ立場でも呂布将軍のお立場ではあまり役に立つとは思えませんし、それどころか逆に危険に晒す事になるでしょう」
それは明らかに呂布を侮辱する様な物言いであったが、その言葉を受けても呂布は何も言わずに黙っているだけだった。
その言葉に曹操の眉がつり上がったのだが、曹操の表情を横目で確認した夏侯惇は劉備に言葉を投げかける。
「それでは今回の劉備軍と曹孟徳軍の同盟の話を白紙に戻した方がよろしいでしょうか?」
その言葉を聞いて劉備も、張飛も関羽も夏侯惇に視線が集中した。
その劉備の視線に耐えながら夏侯惇が話を続ける。
「将軍のお立場を考えるのであれば我らを使って下さい」
その言葉を言い放った後に夏侯惇は笑顔を見せたのだが、その言葉を受けた劉備の表情は完全に固まってしまっていた。
その様子を見ていた関羽が思わず夏侯惇に対して声を上げようと口を大きく開いたのだが、その横で張飛が劉備の背中を優しく叩いて落ち着かせようとする。
そんな張飛の行動を見て驚きの表情を浮かべる関羽と曹操であったが、それは劉備や関羽でなくともそう感じていた事だろう。
呂布もその光景を見ると、劉備の人となりが少しわかった様な気がして嬉しかったのだがそんな自分を不思議にも思っていたのだった。
劉備と夏侯惇の間で膠着状態が続くかに思われた時、曹操は微笑みながら声を上げた。
「分かりました。呂布将軍が元直将軍と協力すると言うのであれば元直将軍と行動を共にして下さい」
突然、曹操からの提案に関羽や張飛は驚きを隠し切れない。
そんな二人を無視して曹操は劉備に向けて言葉を続ける。
「私は以前より考えていたのですが、私達も三人一緒で行動をするというのはどうでしょうか?」
「それは……」
言葉に詰まる劉備に対して曹操は、畳み掛ける様に言葉を続ける。
「お互いに互いの秘密を知り尽くしているでしょう。秘密を秘密で無くせば上手く行く時もあります」
そう言われてしまえば劉備も認めざるを得なかった。
そんなやり取りがされてから二刻が経過した頃、建業の街の入り口に曹操と呂布と劉備が一緒に立っていた。
その様子を後方から見守っている張飛は父親である関羽に話し掛ける。
「しかし父上、本当に良かったので?」
それに対して関羽はハッキリとした答えを出す事は出来ない。
劉備との話し合いの中で確かに張飛が不満に思う気持ちも理解できる。
(しかし呂布将軍の事を考えると仕方がないのかも知れないな)
そう思いながら関羽は口を開いた。
「もし我が軍の兵達が呂布将軍に斬りかかって行く様な結果になったとしたらどうなる?」
そんな関羽の言葉に張飛も返す言葉が無くなったらしく何も答えなかった。
劉備からしてみても呂布が本心から自分に友好的だと思っていないので、不安があるのは間違いなかった。
(それに曹操軍の軍師も何を考えているか読めない者だしな)
そんな懸念を抱きつつ劉備は関羽と張飛に言った。
「我らも行こう」
そう四人に声を掛けて歩き出した。
そんな劉備の様子を後ろから見ていた呂布は曹操に向かって声を掛ける。
「殿、お願いがあります」
その声に反応したのは関羽だった。
そして同じ様に反応を示したのが張飛だ。
「元直将軍も関羽殿も私と呂布将軍の話を聞いてください」
劉備はそう言うと夏侯惇と共に呂布の元へ歩み寄る。
「何かご用でしょうか?」
明らかに敵意を持っている目で自分の事を見る張飛に対して、劉備は小さく笑って話しかけた。
「こうしてゆっくり話すのは初めてですね、元直将軍に呂奉先」
そんな劉備の言葉に動揺したのは二人よりも張飛だった。
(あの礼儀正しい奴が一体何を言っているんだ?)
そう思っていると劉備が夏侯惇に向けて声を掛ける。
「将軍も久し振りですね」
その言葉に夏侯惇は軽く頷くと口を開く。
「久しくお会いしていなかったので心配をしておりました」
そんな二人のやり取りを見て関羽達は思う事は同じだった。
(嘘を付け、絶対に信じていないな)
それを感じ取った曹操が劉備に尋ねた。
「元直殿とはいつからの知り合いなのですかな?」
その問いに劉備は笑顔で答えた。
「幼き頃、もう三十年程前になりますのでもう覚えていないのですが、将軍とは妙に馬が合いましてな。仲良くさせて頂いてました」
そんな話しを聞いた張飛は笑うのだが、呂布の表情は一向に変わる事が無かった。
そんな呂布と張飛に対して劉備が口を開く。
「今回、私が来たのは軍師殿のお考えでもありますが、個人的にこの二人と共に行動してみようと思っていたのです」
そんな劉備の言葉に関羽が不思議そうに尋ねた。
「元直殿とは仲がいいのか?」
「そうですな、仲は悪くないと思いますよ」
そんな劉備に張飛が言う。
「ほう、将軍にもそんな趣味があったのですね」
その言葉を聞いて呂布も頷くので劉備は再び笑顔に戻るのだが、夏侯惇だけは何か言いたそうな顔をしていたが関羽やそれに気付いた劉備が睨んできたので開きかけた口を固く閉じた。
そんなやりとりに夏侯惇が大笑いをしそうなのを必死に我慢して俯く中、呂布だけは何故劉備がそんな事を言い出したのか見当も付かなかった。
それは呂布だけではなく、関羽や張飛も同様で夏侯惇だけは何となくその理由に気が付いていたのだが敢えて口にしなかったのである。
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