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1話

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この家には地下室がある。
俺は家の地下室に入り『友達』と遊んだ。
「うわー! おっきいねー!」
「あはは、そうだろ?」
地下室には大きな倉庫があり、その奥に隠し扉があったのだ。
その扉の奥から出てきたのが、この巨大ロボットだ。
俺はこのロボを『友達』と呼んでいた。
「かっこいいなぁ」
「でも、これに乗るには免許がいるんだよ」
「え? そうなの!?」
「うん、そうさ」
「じゃあ、ぼくも乗れるようになるかな?」
「もちろんだよ。俺と一緒に勉強すれば、きっと乗れるよ」
「ほんとう!? やったー!」
俺と『友達』は、それから毎日のように遊んだ。
そして一年が経ち、二年が経ったある日……
俺はロボットのパイロットになった。
しかし、そのパイロットの資格は十五歳にならないと取れない。だからそれまでは普通に学校に通い、ロボットの勉強をした。
そして俺は十六歳になった。
誕生日プレゼントとして父さんが買ってくれたのが、このロボットだった。
「お前の誕生日プレゼントだ。大切にするんだぞ」
「ありがとう、お父さん! 僕、絶対に大事にするよ!」
こうして俺は、念願のロボットを手に入れた。
とても嬉しかった。
これでもっと友達と遊べると思ったからだ。
だが、その時はまだ知らなかった。
俺の人生を大きく変える出来事が起こることを……。
『スペースノア・インベーダーズ』
1話
「夢の始まり」
「ん…………」
朝だ。
目を覚ますと、そこはいつもの部屋ではない。
真っ白で清潔感のある部屋。
天井や壁が白くて眩しい。
(ここはどこだろう?)
体を起こし周りを見渡すと、どうやら病院の一室らしい。
隣を見ると、そこには点滴台が置かれている。
窓の外では小鳥たちがチュンチュン鳴いていた。
(ああ、そうか)
思い出した。僕は事故にあったんだ。
トラックに轢かれて全身を強く打った。
そのまま意識を失って救急車で運ばれた。
つまり今いる場所は病室で、僕の体は怪我をしているということだろう。
でも不思議なことに痛みはない。
体のあちこちを見てみるが傷一つない。
ただ、少し体が怠かった。
とりあえずナースコールを押してみることにした。
「はい、どうかしましたか?」
看護師さんはすぐに来てくれた。
事情を話すと医者を呼びに行ってくれた。
数分後、お医者さんが来た。
簡単な診察をしてもらったところ、特に異常は無いようだ。
念のため検査入院することになった。
一週間ほどの予定だという。
そして翌日。
退院手続きを終えた僕は、自宅へ向かっていた。昨日のうちに荷物は全て郵送済みなので身軽である。
天気もいいし気分よく歩ける。
すると目の前に大きな建物が見えた。
それは僕が通っている学園であり、僕たちの通う学校でもある。
『聖ユーフェミア学院』という男子校。その名のとおり女子生徒はいない。
もちろん教師にも女性は一人もいない。
全寮制ということもあり、男しかいない環境なのだ。
なぜそんな特殊な学校に通っているのか?
ロボットに乗るパイロットになるための免許を取るためだ。ロボットパイロットになるには、高校を卒業しないといけない。だからわざわざこんな場所まで来たのだ。
それにしても綺麗な建物だ。まるで中世の城みたいだ。
白い石造りの壁に囲まれており、敷地の広さはかなりある。
校舎は三階建てで横に長い形をしている。正面玄関からは噴水広場が見え、花壇の花々はとても鮮やかだ。
そして今日からここに通うことになる。
「それじゃあ気をつけて帰りなさい」
「はい、ありがとうございました」
お世話になった先生に挨拶を済ませると僕は正門へと向かった。
敷地内にある大きな門だ。
「さてと、行くか」
僕は門の手前に立ち深呼吸をする。そしてゆっくりと足を踏み出した。
入学式は明後日。緊張して胸がドキドキしている。
どんな生活が始まるのだろうか? 期待に胸が膨らんでいく。
だけどその時、ふとあることに気づいた。
「あれ? なんだろう、これ?」
視界の先に小さな黒い影が見える。
最初はゴミ袋かな?と思ったけど違う。
それは少しずつ大きくなっていく。
そして次の瞬間―――
ドゴォン!! 凄まじい轟音と共に地面が大きく揺れた。
「うわっ!?」
突然の出来事に思わず尻餅をつく。一体何が起きたんだ? 恐る恐る顔を上げると、そこには巨大な物体があった。
「え……?」
一瞬、思考が停止する。
なんだこれ? どうしてこれがここに在るんだ!?
「嘘、だろ……」
これはロボットだ。しかも見覚えがある。
だってそれは僕が操縦していたロボットだからだ。
「そんな、まさか!?」
間違いない!あの時のロボだ! どうしてそれが今、僕の目の前にいるんだ!? その時、僕が乗っていたロボの頭部が動き出す。そして目が合った。
「ひぃッ!!」
そのあまりの迫力に情けない声を上げてしまう。
そしてロボットの頭頂部がパカッと開いた。
その中から出てきたのは……人だ! 女の子が降りてきた。
彼女はロボットから降りると、こちらに向かって歩いてくる。
「やっとみつけた。過去に戻ったけど見つからなかったらどうしようと思いましたが……ユウキ・マコトわたしは未来からあなたを探しに来ました」
「へ?」
少女の言葉の意味がよくわからない。
この子は何を言っているんだろう?
「詳しい話はあとです。まずはこの機体に乗ってください」
「ちょ、ちょっと待って!」
彼女の手を掴む。
このまま行かせるわけにはいかない!
「君は何者なんだよ!?」
「私はあなたのパートナーです」
「パートナー?」
「そう、未来の世界であなたと一緒に戦う仲間。だから私と一緒に来て」
「む、無理だよ! いきなりそんなこと言われても困るよ!」
「お願いします。一緒に戦ってくれないと世界が大変なことになります」
「そ、それはどういう意味だい?」
「説明は後で必ずするから! 今は私の言うことを聞いて!」
「…………」
僕は黙り込む。どうしよう? 正直、怖くて仕方がない。
でも、なぜか放っておけなかった。「わかったよ。とりあえず話を聞かせて」
僕は彼女にそう告げると、ロボットに乗り込んだ。
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