歴史の裏側の人達

みなと劉

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22話

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そんな男の申し出には驚きを隠せなかったが俺は即座に答える。
「別に構わんが?」
(なんで?)
そんな疑問を浮かべる俺を余所に男は言葉を続ける。
「実は英殿に会ってみたいとずっと思っておりました」
(何でそんな事思ったんだよ?まぁいいか、取り敢えずさっさと向かうとしよう)
そんな風に考えている時にまたしても背後から声をかけられるのだが、その声には聞き覚えがあったんだ。というかさっきまで一緒に居た男の声だったわけだが・・・。そんな声を聞きながらも歩みを止めようともせずにいたが後ろから呼び止めた奴はお構い無しに俺の横に並び話しかけてきた。

「若、私もご一緒しても構いませんよね?」
(なんであんたが付いて来てんだよ!?)
そんなツッコミも入れつつ俺は新たな同行者に尋ねた。
「なんで俺と英の関係を聞きたがるわけよ?」
その問いに彼はあっさりと答えるのだった。
「いえ、特に深い意味は無いのですが・・・強いて言えばこれから英殿に仕えさせて頂こうと思っていまして、その為の顔合わせといったところでしょうか」
「あんたが?英に?」
その言葉に俺は思わず聞き返してしまっていた。
そんな俺に対して彼は微笑んで答える。
「えぇそうですよ、私は今後貴方の配下となる事を望んでいるのです」
(いやいや!!それはおかしいでしょうが!?)
そんな考えが頭の中を駆け巡るも現実に言葉にする事は無く・・・。
「なんでまた俺にそこまでしてくれるんだよ?」
そんな疑問を投げかける事しか出来なかったのである。
その問いかけに彼は答える。
「貴方方と同じ立場に立ちたかっただけですよ」
(何故そんな理由なんだ!?訳わかんねぇんだけど)
そんな俺の混乱を知ってか知らずか彼が続けて言葉を口にする。
「貴方の噂はよく耳にしますよ?松蔭殿との関係も含めね」
(悪い噂じゃないよな?大丈夫だよな?)
そんな風に考えてしまって思わず黙り込んでしまった俺に彼は再度話しかけてきた。
「貴方はまだこの国を変えていけると思うのです。もっと広い視野を持つべきだと思います」
そんな彼の言葉に対して俺は遂に何も返す事は出来なかった。
ただただ黙って歩き続けた俺はようやく英の屋敷の前に辿り着いたんだけれども・・・
「ようこそおいでなさいました!」
(うわぁ~、なんかもう入りたくないんですけど!?)
そんな風に考えてる内に勝手に屋敷の中に連れ込まれていくのだった。

いや、分かってたんだけどね?このまま問答無用で押し切られる事くらい・・・。
でもさぁ、もぉいいじゃん!
俺の自由を返してくれ!!
そんな願いは叶う訳もなくあれよこれよと言う間に屋敷の中へと連れ込まれた俺は、英の待つ部屋まで案内される事となった。
(しっかしやけにあっさりだったな・・・)
そんな疑問を抱きつつも襖を開けて部屋に入るとそこには2人の姿があった。
1人は当然ながら英であるけど。
もう1人は・・・
(あれ?なんでここに居るんだこいつ)
そんなことを思いながらもとりあえずは挨拶をする事にしたんだが、その相手が英でな・・・。
「御久し振りです松蔭先生」
などと言われたのでこっちも挨拶を返すと部屋の中に沈黙が流れていったんだけれどもね?
いやマジで何この空気!?って事で早く話を切り出そうと思っていたんだけどね、英が話しかけてきた訳ですよ。
何を言いだすのかと思っちゃって思わず身構えちゃったけどね?でも結局はいつも通りだったんだけど。
「お元気でしたか?」
(いやいやいや!!お前が呼び出したんでしょうがぁぁぁぁぁ!?)
そんなツッコミを入れながら本題に入ることにする。
「英殿、今一度確認をさせて頂きますが今回の件は貴方が発案したものですよね?」
(ってかここまで来ておいてまさか違うとか言い出したりはしないよね?)
そんな不安を抱えつつも尋ねると、英は少し考え込んだ後に答えた。
「そうですね、私が言い出しっぺですから責任は私にあると言えるでしょうね」
(ほーらやっぱりそうじゃねぇか)
そんな俺の呟きに英はさらに続ける。
「ただそれが事実かどうかは私には判別できませんね、私は松蔭先生の言いなりなのかもしれませんし」
(ご冗談を・・・。テメーが命じたことだろうがよ!何しらばっくれてやがんだよ!?ふざけてんのかコラァァァ!!)
そう心の中で叫んでたんだけども、英は涼しい顔をしながらこちらを見ているだけなので俺が折れて話を続けることにしましたとも!えぇ!!はい!!
「まぁ貴方の気持ちの事は別として、今回の件については事前にご相談いただけなかった点が問題だと私は考えています」
(こいつが何したいのかマジで理解できん・・・)
そんな風に頭を悩ませている俺の目の前では再び英が話し始めた。
「そうですね、それについてはお詫び申し上げますが、私も断腸の思いだったんですよ?分かりますか?なにせこう見えても私は忙しい身の上なので」
(その割にはこんな所で油売ってたよな?暇そうにしてやがっただろうが!?)
そんな俺の思いを余所に話は進んでいく。
「英殿のこれまでの多大なご貢献には感謝しております。ですのでこの件に関しては本来であれば不問にして差し上げてもよかったのですが・・・」

俺がそう切り出した時の英の顔を見て俺は思ったね。
(めっちゃ笑顔じゃん!!怖えぇぇ・・・)
そんな俺の思いとは裏腹に英は言葉を続けた。
「私としては最近思う事がありまして、この国の行く末を思えば今回の行いも必要悪だったのでは無いかと考えている次第でしてな」
(うわ~、この人何かするつもりだわぁ~・・・勘弁してくれよマジで・・・。ってかここまでの話を聞いてみても答えが分からねぇし一体何がしたいんだよこいつは!?)
そんな事を考えていた時だった。英が口を開く。
「では、先生?」
(なんじゃね?)
そんな心の声を聞き取ったかのようなタイミングで言ってきたもんだから内心で動揺しつつも俺は彼の言葉を待つことにしたんだけれども・・・どうやら沈黙の時間が訪れたみたいなので再び話し出したんだが・・・。
「私達はこれから同じ志を抱く者同士として手を取り合い共に歩んでいくべきだと思いますがいかがでしょうか?」
(だから俺に聞くんじゃねぇぇぇぇぇよ!!勝手にしろや!!俺は知らんからな!?)
そう怒鳴り散らしたい気持ちは山々なんだが、下手に刺激してしまっても不味いことになるんじゃないかと思って我慢している訳ですよ。
そんな俺の内心を知ってか知らずか英が次なる言葉を放ってきたんだけど・・・。
(頼むから止めてくれ、これ以上俺を追い詰めようとするんじゃなぁぁぁぁい!)
心の中で叫ぶ俺には全く見向きもせずに語り続ける英くん。
というか言いだすなら早くしてくれねえかねぇ!こっちは一刻も早くここから逃げ去りたいんだからな?マジでさっさと済ませて帰ってくんねぇかな!?
「松蔭先生、私もこう見えて忙しい身の上ですから今この場で答えが欲しいとは言いません」
(よく言うぜ)
しかし俺の内心など知る由も無い英は更に言葉を続ける。
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