歴史の裏側の人達

みなと劉

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29話

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(いや、逃げてくれるならそれはそれで俺的には楽なんで嬉しいんですけど)

そんな彼の思いとは裏腹に家茂は再び手に持つ刀に力を籠め始める!!
「逃げる?なんで私がそんなことをせねばならんのだ?いや、もはやそんな事は言ってられん事情があるのだよ・・・」
そして彼に迫っていくと・・・。
(なにっ!?)
そんな驚きの表情を彼も浮かべることになる!!
「・・・ところでこの私を倒せなかった場合、どうなると思う?」
そんな問いを投げかけながら彼は言葉を続ける。
(ん?!どうしてこの男急にそんな事を話しだしたんだ??)
そんなことを彼が思っていたことはまるで関係のない話である。
「その場合は我が主君の為にも『あのお方』のためにもこの京都から一人でも多くのおなごを拐さなくてはならないからな・・・なに、痛いことはせんよ」
そう言って刀を振り下ろそうとした時だった!!
「・・・何っ!?」
(ちょいとまて!あの男の後ろにいる娘って)
小栗邸に火を放った。
その責任を取るという形で切腹しようとしている清水寺次郎兵衛と、それに立ち会おうとする者。
それは・・・。
(男の方は誰だか分からんけどあの刀構えてる女ってもしかして・・・)
「お初殿!!お初殿ではないか!!」
そんな思いが籠められた思いはどうやら的中らしいようで家茂は彼女に向かって走りだす!
(さてここからどのようにすべきか!!まずはあの男をなんとかしなければならない訳だからな!)
(さて、ここからどうしたものかな・・・)
俺はそんな事を思い彼女を見つめている。そして目の前にいる男も同じく考えふけていたようだがやがて口を開いた。「なるほど『ご懐妊』されていると言うわけか・・・」
その言葉を口にした時の男はどうやら納得したようなそんな表情を浮かべているのだが・・・。
(お初の方はどうやら身に覚えはないみたいだな!まぁ当然だけど??)
(だがしかし、今のこの状況で俺が出ていけばどうなるかって問題だな。なんせ相手の素性が知れない以上むやみに出ると逆に彼女に迷惑をかける可能性だってあるんだから!)
(ふむ・・・。ここは陰ながら見守っておくしかないな!!)
そして、俺の行動はというと・・・そこでしばらく観察することにしたのであった・・・。
小栗邸での事件が起きたという情報が届き家茂は急ぎ清水寺に向かったわけなんだが、この時にはもう既に火が放たれていたためその元凶となった宿場にある清水寺に急いだのだ。
そしてちょうど小栗邸で火を放つ覚悟を決めようとしていた彼、桂小五郎(かつらこごろう)との邂逅を果たすことになって今まさに死を覚悟しながらも笑みを浮かべる彼と向かい合っていたところってわけだ。
そんな状況を見ていた俺は
「このタイミングで出てきた方が良いだろう」
と判断したわけである!!
(あ・・・待てよ?ここで出ていけばやっぱし目立つよなぁ・・・。)
場所だけ変えて
隠密機能と飛行撮影機と端末で様子を見ることにした。
(これなら変に俺は目立つことは無いから歴史にも然程影響はないだろう)
いや、それどころではないかもしれない!!
なんせ今回のこの場面では新たな出会いが待っているかもしれないしな!!
(なにしろ清水寺次郎兵衛という男に『あの御仁』が登場しているのだから!)
(さぁて・・・どうなるかね)
そんな思いを抱きながら様子を見ている俺だが、家茂の様子が少し気になった・・・。
どうやら彼は刀を持ってはいるが構えようとはまだ考えていないらしい・・・。
(それはまたどうしてかな??)
そんな思いが俺の中を駆け巡っていく。

(そう言えば『あの御仁』が右手に持つ刀も反りが入っているみたいだな?)
そんな俺の疑問に応えるかのように彼女は口を開いた。
「お主、その刀を私に向けたということは・・・我が主君への反逆の意思があるということか?」
改めてそう問いかけられた桂小五郎は自嘲気味に笑うと改めてその言葉を口にしてきた!
「いったいなんだって言うんだ!!俺はあんた達になど会った覚えはない!!なにを訳の分からないこと言っているんだ!!」
まぁそれはごもっともな言い分である。
彼らの眼前にいる『桂小五郎』と、清水寺次郎兵衛にはこの時代において面識がある。
だがしかしこの場でその事実を彼が知るはずもなかった・・・!
(さすがにちょいと可哀そうな気がするなぁ・・・。まぁでも仕方ないよなぁ?)
そこで俺はあらためて口を開くことになるのだ。
「なぁ、『桂小五郎』よ。本当に貴殿は私とお会いするのは初めてなのか?」
そんな彼の問いかけに対して清水寺次郎兵衛はなおのこと疑問を強くしていくことになる。
「なにを?俺があんたと会ったことなど無いと言っているだろう!!」
その言葉を聞くや家茂は思わず溜息を漏らすのであった・・・。
(ふむ・・・これはどうやらこの俺に白羽の矢が来たということか)
もうこうなってしまえば俺の取るべき行動は一つだけ!
そこで俺は今一度息を吸うと『その人物』に声を投げかけることにした。
「別に違うならそれで構わないのだがね?ただもしお心当たりがあるようなら考えて欲しいものだな・・・」
(とは言え、この場合は俺としては大いに関係してきそうだからな!!ここは何としても会わねばならんわけなのだよ)
(それにしても普通に聞くだけでも良いのかな?さすがに呼び捨てってのは抵抗があるぞ・・・まいったなぁ)
そんな時だ。清水寺次郎兵衛の後方から男の声が聞こえてきたのだ!
「では私が代わりに答えるとしますかな?」
そんな言葉を受けて皆が皆、そちらへ向くことになる・・・当然そこには男の姿があった!!
(やっと登場したかこの御仁は!!!)
彼がようやく現れることが出来た事がうれしくて俺は思わず笑みを零してしまう。
そしてその男の姿を確認した桂小五郎も口を開く事になるわけだが・・・。
「お前はっ!!あの時の『尊王攘夷派』の・・・」
(さてさて、彼がなぜこの場所にいるのか。その理由は次回に続くと・・・)
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