歴史の裏側の人達

みなと劉

文字の大きさ
上 下
37 / 46

37話

しおりを挟む
俺はこの京に来てからずっと考えていたことがあるんだ。
『桂が歴史からもし消えているのであれば誰がその役割をこなすのか?』
という事さ。
(史実通りに進めるのであれば桂がこの騒動の中心にいたはずなのだが?それが消えてるとなると誰がその代役を務めているというのか?まさか『坂本龍馬!』か!!)
そんな事を考えているとだ・・・。
彼女は更に言葉を続ける・・・。
「どうかお力をお貸しくださいまし!!」
「あっ!!」
俺はそう声を発してしまっていたのだが彼女はそんな言葉に対して反応する事は無かった。

『なぜ彼女がここに居るんだ~?』

そんな俺の心の中の声を彼女に伝える事は到底叶わないわけで、これは伝えなければなるまい。
そう思った俺は彼女に対してこう伝えたのさ!
『桂に力を貸してもらうから大丈夫だよ!桂と吉子姫殿の父君は仲が良いのだろう?ならばきっと力を合わせて任務を成功させようと頑張ることだろう』
って言葉さ!
(あくまでも桂ならそうするだろう)
との意味を込めて・・・。
そんな俺に彼女は更に話を続けてくれたのだ。
『史実』を語ってくれた後で彼女はこういったんだ。
『今の時代でも私たちの役にたってくれる筈の者たちが次々と暗殺されていきました。しかも今回は八重さんのお父様です・・・。刺客を倒したまではよかったのですが・・・おそらく今後も同じことが続くように思えます。誰も信用することが出来ない現状ではありますが、八重さんだけはまだ無事だと思われますので、どうか彼女だけでも助けていただきたくて・・・』

(おいおい!!歴史的ターニングポイントに関わって来る重要な人物まで暗殺されてるってことなんじゃないのか~?? それってかなりヤバイって気がするぞ!!)
『史実』通りに歴史が進まないことも考慮に入れないと行けなくなりそうだ。
これは
『あっち側』にも『連絡必須』だ。
時間を見て
『端末』を操作して
俺は『あっち側』に連絡をする。
『松本良順だが、どうも歴史が史実通りにならなくなる可能性が出てきた』
『端末』から『おかしな反応』返ってくる。
『それでいいのだよ。松本……いや……高木友近』
本名でいままで言われることは無かったので
おかしいと俺は思ってしまった。
だがまあいいや
『上手くはやってるつもりだ』
『その調子で頼むぞ』
(この様子からするに『あっち側』も歴史の流れに逆らわない程度に手を打っていることがわかってしまい複雑な気持ちだが・・・まあ上手くやってくれるならいいか・・・)
「わかりました」
俺はこう返事するしかなかった。
そんな俺の言葉に満足したのだろうか? 吉子さんがこんなことを言い出していた。
「どうか・・・お父・・・いえ。父の事をよろしくお願いいたします」
(ん?これはどういうことだ?)
俺がその言葉の意味を考えようとしている内にもだ・・・・彼女は言葉を続けて行くんだよ!。
「それと・・・もし、もしもなのですけれど・・・私の身に危険を及ぼすような事態になった時は・・・・その時は、松本さん。私の事は見放していただいて構いませんので、父だけは助けていただけませんか」

そんな事を言い出したもんだからさ俺は正直面食らってしまい驚きの表情で彼女の顔を見つめてしまっているわけなんだが・・・彼女はこう付け加えてくれたよ。
「先程も申し上げましたように父は浅井家との繋がりを持つことによって私の身に危険が及ばない様に勤めてくださいますが・・・それでもそれを快く思わない親類から命を狙われないとも限りませんので、この先何も起きなかった場合にはお気遣い無きようお願いします」
そこまで口にした後で俺に対し会釈をしてくれたからね。
そんな彼女の熱い言葉を俺はしっかり受け止めていたわけさ。
俺の決心は簡単だったさ。
まあこうなる事は知っていたわけだから、大切な友人であるお八重ちゃんの父親だからこれぐらいするのは当然だよね!
(それとな、只単に身近な人間を1人2人位なら失ったっていいんじゃないの?)なんて思ったりしたが口にするのは止めて置いた。
それに『史実』通りに歴史が進むならばこの先にもっと大きな出来事が控えているだろうしな!
そんな俺の心の葛藤など知らない彼女がこんな言葉を口にしてくる。
「松本さま~どうか父をお願いいたします」
「いやいや当然のことをしたまでだよ。お八重殿の事は俺が力になるから安心なさって欲しい」
(俺は噓をつきながら答えたのだが、まあ仕方がない!!これも彼女の願いを聞き遂げるためだからな!)
なんてことを打ちあけると彼女はほっとした様子でこんな風に言い放つ。
「ありがとうございます!松本さま」
などと、納得してくれたんだけどさ・・・そんなかのりをした後も吉子さんはしゃべりづづけるのだよ! それは宮様殺害
(実際には、未遂に終わるんだがね)
を目論んでる連中に関する事なんだがさ!! もういい加減にしてくれよ と俺は思ってしまったよ。
(宮様は愛らしかったぞ~)
そんな思いを抱く俺に対して、彼女はこんな事まで言い放ちやがりやがった。
「松本様!私は父を別の誰かに守って頂こうと、考えていたのですが、どうやらその必要は無かったようですね!父の事をお願いいたしますね」
と・・・ 俺はそんな言葉を聞いた時思ったんだ!
(『こいつ・・・俺にやらせようとしているな』)ってな!! だから俺はこう言い返してやったんだ。
「浅井時様だけじゃ荷が重いようなので吉子姫の力にもなってはもらえぬだろうか?」
などと!! 後手に回る気なんかさらさらなかったからさ!! こう言ってみたわけだ。
俺が言った言葉に対し彼女はまんざらでもない感じで嬉しそうに笑うもんだから調子に乗っちまったようだな俺って奴は全くどうしようも無い愚か者だと言うことに気付かされたのさ!!
(この場合は気付かなかったほうがまだ良かった)ってことになろう!
(大馬鹿者かよ俺!『俺は世界征服出来るかも~』ってこれか!?
俺の恐れていた大失敗なのか・・・そうなのか?!)
既に負け犬人生 決定済みってことか・・・。
(敵が居る前で溜め息なんてつけるわけも無くだ!!俺は彼女の前で平静を装っていた。その裏で俺がどんな事を考えていたかなど彼女が知るはずも無い!)
まあそれはいいとしてだ・・・。
彼女の話はまだ続くんだ。
「お心強いですわ、松本様」
(彼女はそう言って俺に向けて微笑むんだが俺はそんな気分ではない!)
と言いたい。
しおりを挟む

処理中です...