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70話
翌朝、リルドはギルドの喧騒を避けるようにして、ロビーの隅にあるソファに腰を下ろした。手元には、街の果物屋で買ったばかりの冷たいリンゴジュース。
「ふぅ……。今日は少し、風変わりな一日になりそうだね」
最後の一口を飲み干し、空になった容器をゴミ箱へポイと捨てると、リルドは掲示板の端っこで異彩を放っていた依頼札を「スッ」と剥がした。
「おはよう、受付さん。今日はこれをお願いするよ」
「おはようございます、リルドさん。……えっ!? 『新作水着の試着モニター』!? リルドさん、正気ですか? それ、街の有名なデザイナーが『中性的な魅力を持つモデル』を探してずっと出していた高難度(?)依頼ですよ!」
「あはは、お洗濯の手伝いも兼ねて、水遊び気分で行ってくるよ」
リルドが向かったのは、街の外れにある美しい湖畔の別荘だった。出迎えたのは、眼鏡を光らせた気鋭のデザイナー。
「いらっしゃい……! おお、君だ、君だよ! その透き通るような肌、完璧なラインだ!」
差し出されたのは、最新のデザインが施された水着。リルドは更衣室でそれを見て、少しだけ頬を染めた。
(……うーん、なんだか少し、際どい気がするけれど……。お仕事だし、仕方ないかな)
撮影が始まると、リルドは湖のほとりで、水面に映る光に溶け込むように佇んだ。
デザイナーがシャッターを切るたびに、周囲にはキラキラとした魔力の雫が舞い、まるで精霊が水浴びをしているかのような幻想的な光景が広がった。
「素晴らしい! 芸術だ! 君、このまま専属モデルにならないか!?」
「あはは、僕はただのお散歩好きの冒険者だからね」
リルドは丁重に断り、着替えを済ませて報酬と、おまけの試供品を受け取った。
帰り道、湖を離れて森を歩いていると、Cランクの冒険者パーティーが、今度は手強い水辺の魔獣に苦戦し、泥だらけになっていた。
「くそっ、また回復薬が足りない……!」
リルドは彼らに気づかれないよう、茂みからそっと手を伸ばした。
「お疲れ様。これ、置いておくね」
彼が置いたのは、先ほど撮影の休憩中に自分の能力で自作した、最高純度の「回復ドリンク」。
「……ん? なんだこれ、さっきまで無かったぞ! うわっ、飲むだけでスタミナが全快した……!」
驚愕する彼らをよそに、リルドは足早にその場を離れた。
夕暮れ時、リルドはギルドに戻り、完了の報告をした。
「ただいま、受付さん。撮影、無事に終わったよ。少し恥ずかしかったけど、お水は気持ちよかった」
「おかえりなさい! ……リルドさん、デザイナーさんから凄い興奮した連絡が来てますよ。『歴史に残る最高傑作が撮れた』って! 報酬も上乗せされています」
「あはは、それは良かった。……あ、そういえば帰り道、またあの冒険者たちが困ってたから、飲み物を置いてきたよ」
リルドは報酬の入った袋を受け取ると、満足げに微笑んでギルドを後にした。
「さて、僕も今夜は、いただいた水着を洗濯して、自分へのご褒美に冷たいデザートでも作ろうかな」
万年Fランク冒険者の日常は、今日も誰にも知られることのない「最高の被写体」を演じて、穏やかに更けていく。
「ふぅ……。今日は少し、風変わりな一日になりそうだね」
最後の一口を飲み干し、空になった容器をゴミ箱へポイと捨てると、リルドは掲示板の端っこで異彩を放っていた依頼札を「スッ」と剥がした。
「おはよう、受付さん。今日はこれをお願いするよ」
「おはようございます、リルドさん。……えっ!? 『新作水着の試着モニター』!? リルドさん、正気ですか? それ、街の有名なデザイナーが『中性的な魅力を持つモデル』を探してずっと出していた高難度(?)依頼ですよ!」
「あはは、お洗濯の手伝いも兼ねて、水遊び気分で行ってくるよ」
リルドが向かったのは、街の外れにある美しい湖畔の別荘だった。出迎えたのは、眼鏡を光らせた気鋭のデザイナー。
「いらっしゃい……! おお、君だ、君だよ! その透き通るような肌、完璧なラインだ!」
差し出されたのは、最新のデザインが施された水着。リルドは更衣室でそれを見て、少しだけ頬を染めた。
(……うーん、なんだか少し、際どい気がするけれど……。お仕事だし、仕方ないかな)
撮影が始まると、リルドは湖のほとりで、水面に映る光に溶け込むように佇んだ。
デザイナーがシャッターを切るたびに、周囲にはキラキラとした魔力の雫が舞い、まるで精霊が水浴びをしているかのような幻想的な光景が広がった。
「素晴らしい! 芸術だ! 君、このまま専属モデルにならないか!?」
「あはは、僕はただのお散歩好きの冒険者だからね」
リルドは丁重に断り、着替えを済ませて報酬と、おまけの試供品を受け取った。
帰り道、湖を離れて森を歩いていると、Cランクの冒険者パーティーが、今度は手強い水辺の魔獣に苦戦し、泥だらけになっていた。
「くそっ、また回復薬が足りない……!」
リルドは彼らに気づかれないよう、茂みからそっと手を伸ばした。
「お疲れ様。これ、置いておくね」
彼が置いたのは、先ほど撮影の休憩中に自分の能力で自作した、最高純度の「回復ドリンク」。
「……ん? なんだこれ、さっきまで無かったぞ! うわっ、飲むだけでスタミナが全快した……!」
驚愕する彼らをよそに、リルドは足早にその場を離れた。
夕暮れ時、リルドはギルドに戻り、完了の報告をした。
「ただいま、受付さん。撮影、無事に終わったよ。少し恥ずかしかったけど、お水は気持ちよかった」
「おかえりなさい! ……リルドさん、デザイナーさんから凄い興奮した連絡が来てますよ。『歴史に残る最高傑作が撮れた』って! 報酬も上乗せされています」
「あはは、それは良かった。……あ、そういえば帰り道、またあの冒険者たちが困ってたから、飲み物を置いてきたよ」
リルドは報酬の入った袋を受け取ると、満足げに微笑んでギルドを後にした。
「さて、僕も今夜は、いただいた水着を洗濯して、自分へのご褒美に冷たいデザートでも作ろうかな」
万年Fランク冒険者の日常は、今日も誰にも知られることのない「最高の被写体」を演じて、穏やかに更けていく。
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