異世界でラブコメしたりギルド登録したり別の人になったり!?

みなと劉

文字の大きさ
49 / 161

49話

しおりを挟む
「本当は俺がもっとはっきりしていればよかったんだけど、優菜を傷つけてしまった。本当に悪いと思っている。だから優菜との仲は一旦置いておくことにした」
「ちょっと待ってくれ。それはどういうことだ?」
俺は咄嵯に質問する。
すると、意外な答えが返ってきた。
「そのままの意味だ。今はお互い頭を整理してもう一度考えよう」
その言葉に俺は唖然としてしまう。まさかの展開だった。もしかしたら最悪の事態になると思っていただけに、正直ほっとしている自分がいた。
「優里香はどう思う?」
「私は、優斗くんの意見を尊重します」
優斗の問いかけに対し、彼女ははっきりとそう告げた。優里香さんにとって優斗の意思は何よりも優先されるものらしい。しかし、他の二人を見る限り優斗の選択は彼女たちにとっては受け入れ難いものだったようだ。
優奈さんの方は黙り込んで俯いている。おそらくショックのあまり放心状態になっているのだろう。
「ということで、俺たちはこれで帰ることにする」
優斗は立ち上がると俺の方へと近づいてきた。俺はそれに気づき席を立つと優斗と共に生徒会室を後にした。

***
生徒会室を出た後、俺は優斗と並んで歩いていた。その道中、会話は皆無だ。先程の出来事を優斗なりに考えているのだろうか?俺は何を言うべきなのか悩んでいた。
すると、先に沈黙を破ったのは優斗だった。
「お前には感謝している。ありがとう」
俺は思わず目を見開いた。
「優斗は優菜さんが好きなんだろ?」
「あぁ」
「ならどうして?」
「……俺にはどうしても優菜の気持ちを無下にできなかった。だから、優理花とも話をしようと思ってるんだ」
優里香さんの名前を出されて一瞬戸惑ったが、俺は直ぐに理解することができた。二人は恋人ではなく婚約者なのだ。つまり二人は結婚を前提に交際しているということになる。
「でも優里香さんはお前のことを好きみたいだぞ?」
「それも知ってる。優里香とは婚約の話を持ち出された時から何度か話したからな。優里香は優菜と違って素直な性格をしているから、好意を向けられていることくらいは分かってる」
「そうか……」
そこで再び訪れる静寂。お互いに次の話題が出てこないのだ。このままではまずいと思った俺は何かないかと探すが思いつかない。
そしてしばらく歩いたところで、ふと気になっていたことを尋ねてみることにした。
「なあ、あの二人のことについてなにか知っていることはないか?」
「何かって?」
「例えば、過去に何かトラブルに巻き込まれたことがあるとか、もしくは誰かから恨みを買っていたり……」
「そういう話は聞いたことがないな」
やはり知らないか……。
となると、ますます謎が深まる。優菜さんがストーカー被害に遭っていることと何か関係がありそうな気がするのだが、結局のところ優斗は何もわかっていないということなのかもしれない。
「まぁ、まだ何も分かっていないってことが分かっただけでも十分収穫だと思うことにしようぜ」
優斗はそれだけ言うと笑った。その表情はどこか吹っ切れているように感じられた。優斗がそれでいいと言うのであれば俺に異論はない。だが俺は一つだけ引っかかっていることがあった。
「お前はこれからどうするつもりなんだ?」
すると優斗の足が止まる。
「……さあな」
「……そっか」
きっと俺には分からないような複雑な心境なんだろう。だからこそ俺が口を挟むべきではないと思いそれ以上何も言うことはなかった。
ただ、最後にこれだけは言っておきたかった。
「後悔だけはしないようにしろよ」
すると優斗は少し驚いた顔をした後、どこか嬉しそうに笑ってこう言った。
「わかっている」
こうして俺たちは家に向かって歩き出した。
「それじゃあ行ってきます」
玄関で母と妹に見送られる。俺と妹は二人で駅に向かうため、家を後にした。駅までの道のりを二人で歩いていると優菜は唐突にこんなことを言ってきた。
「ねえお兄ちゃん、最近楽しそうだね」
「ん?そうか?」
自分的にはいつも通り過ごしていたつもりだったんだけど、周りからは変わったように見えていたのかな?もしかしたら優斗とよく話すようになったことが原因なのかもしれない。実際あの日を境に彼とは結構話し込むようになっていたからな。
「お兄ちゃんはもう優斗くんとキスしちゃった?」
「ば、バカ!してないに決まってるだろ!」
いきなり何を言い出すんだこいつは!?俺は慌てて否定する。
「ほんとーに?」
「ああ、本当だって」
「そっか。よかった」
「……?」
「なんでもない!気にしないで!!」
優菜はよく意味のわからないことを言っている。
どうせまた変なことを考えていたに違いない。俺の予想を肯定するように優菜の顔がどんどん赤くなっているのがわかった。
おそらく恥ずかしくなって誤魔化したのだろう。
まったく世話が焼けるやつだ。こういうところが優里香さんに似ているんだよな。
そんなやり取りをしていたら、いつの間にか俺たちは駅の前まで辿りついていた。
「それじゃあお兄ちゃん、私はこっちだから」
優菜は電車通学なので駅で別れることになる。
「ああ、それじゃあな」
「うん!今日は部活あるけど早く終わる予定だから終わったら電話するね」
「おう」
「あ、それと今度私にも勉強教えてよ」
「え、なんで?」
「別に深い理由は無いよ。ただお兄ちゃんと一緒に勉強したいなって思っただけだから。ダメ?」
「べ、べつに構わないけど」
「やったぁ!約束だよ?」
「わ、分かった」
それから俺たちは改札を抜けてそれぞれのホームへと向かって行った。
ホームに着いた後、丁度来た電車に乗り込んだ。
席が空いているのを確認して、俺は席に着くとスマホを取り出す。そしてSNSを開いて今日の出来事を書き込んでいると、すぐに返事が来た。優奈からだった。俺は早速返信することにした。
『昨日の話だけど……ごめんなさい。今はちょっと冷静に考えられない』
彼女の言葉を見た瞬間俺はドキッとした。もしかしたら怒らせてしまったのではないかと不安になったからだ。
でもその答えは想定内のもの。だから俺は彼女にメッセージを返すことにした。
『俺こそ突然すぎたよね。でも、どうしても君に伝えないといけないと思ったんだ。もちろん俺のことなんて好きじゃないっていうのなら諦めるように努力するからさ。もう少しだけ時間をくれないか?』
我ながら卑怯だなとは思うが、俺は彼女ともう一度向き合うことに決めたのだ。だからどんな結果になろうとも受け入れなければならないと思っている。それに彼女は以前自分の気持ちについて正直に伝えると言っていた。
俺としてはその時が来るのを待ちつつ今まで通りの関係を続けていきたい。それが一番ベストな選択だと思うから。

***
優奈とのメッセージを終えた俺はそのまま優斗にラインを送信した。
『優斗、今度会えないか?』
直ぐに返事が来て。
『ん?デートのお誘いかな?いいよ、』
(は?どうしてそうなる?)
優斗がおかしなことを言うものだから俺は思わず首を傾げた。
優斗から指定されたのは放課後に教室まで迎えに行くというものだった。一体どういうつもりなのだろうか。まあ、それは会ってから聞くとして。それよりも俺は気になることがあった。それは先程のやりとりで優菜の反応が少しだけ気になっていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...