のほほん異世界暮らし

みなと劉

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274 ルナエルブへの期待と日々の足音

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冷たい風が吹き抜ける朝、冬の日差しが農場にやさしく差し込んでいた。ルナエルブの種が市場に入荷するまで、あと二週間となった。期待に胸を膨らませる日々が続く中、僕とシャズナはこの冬の日々を一層大切に感じていた。

冬支度もほぼ終わり、畑には寒さに耐えるための藁が敷かれ、小さな苗たちはしっかりと覆われていた。シャズナは、その傍らで雪をついばむように前足で掻いてみせ、興味深げに新たな音を探している。彼の瞳には、寒さの中にも生き生きとした光が宿っていた。

「シャズナ、来週には市場で最後の準備をしような」と僕が声をかけると、彼は耳をピクピクと動かしてこちらを見上げた。その反応に思わず笑みがこぼれ、僕たちは手慣れた朝の農作業へと取りかかった。凍てつく土に鍬を入れるたび、乾いた音が響き、白い息が宙に消えていく。気温は下がり続けているが、僕とシャズナの心には燃えるような期待があった。

ルナエルブは市場の話題に上がった日から、僕たちにとって一つの小さな冒険となっていた。その名前はどこか神秘的で、植物がもつ未知の可能性を感じさせる。行商人が語った特性や見た目の美しさを思い浮かべると、待ち遠しさが胸に響くようだった。

昼過ぎ、シャズナと一緒に市場へ向かう道を歩く。市場は冬の装いに包まれ、出店では干し果物や冬野菜が彩りを添えていた。人々の間で交わされる笑い声や、お店の主人が商品を勧める声が通りに響いている。シャズナはその活気に反応して、しっぽをゆるやかに動かしながら市場の匂いを嗅ぎ、興味津々の様子で歩いていた。

「あと二週間だ、シャズナ」と僕はつぶやいた。シャズナはまるで言葉の意味を理解しているかのように一瞬立ち止まり、こちらを見て軽く鼻を鳴らした。僕たちはこれから訪れるであろう新たな出会いに思いを馳せながら、冬の光に包まれた市場の風景を背に、歩みを進めていった。

夜、農場に戻ると空は深い群青色に染まり、空気は一段と冷たくなっていた。シャズナは暖かい家の中へと飛び込み、そのまま寝床へ向かって駆けた。その姿を見て、僕も早々に片付けを終え、彼の隣に腰を下ろした。

ルナエルブが届くまでのあと二週間、寒さが厳しくなる中でも、この期待感と共に過ごす日々が僕たちにとって何よりも心地よい時間となっていた。

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