のほほん異世界暮らし

素晴らしき思い出となるはず

クリスティピーナッツとハロウィーンソフィの成長は、日々の小さな楽しみになっていた。庭のプランターに目をやると、クリスティピーナッツの茎はさらに太くしっかりとしたものになり、葉の先端が青々としている。ハロウィーンソフィの方は、すらりとした茎から小さなつぼみがいくつも顔を出し、花を咲かせる準備をしているようだった。

「お前たち、元気に育ってるな」と独り言のように呟きながら水をやると、その様子をそばでじっと見つめる二匹の存在に気付く。シャズナはプランターの端に座り、興味深そうにクリスティピーナッツの葉を眺めている。彼女の琥珀色の瞳が葉の揺れに追随して動く様子がなんとも可愛らしい。一方、ルシファンはハロウィーンソフィのつぼみに鼻を近づけ、くんくんと匂いを嗅いでいる。

「ルシファン、食べ物じゃないからな」と注意すると、彼は一瞬こちらを振り返り、「ちち！」と短く鳴いた。まるで「分かってるよ！」と言っているかのようだ。シャズナはそんな様子を見て鼻を鳴らし、「またルシファンが何かやらかすんじゃないか」と言いたげな表情を浮かべる。

午後の陽光の下で、二匹と植物たちの世話をする時間は穏やかで心地よかった。その日も水やりと雑草取りを終えると、僕はふと立ち止まり、「君たちも手伝ってくれればいいのに」と冗談めかして言った。すると、ルシファンが急に僕の足元に駆け寄り、靴の先端に前足を乗せて「ちち！」と何か訴えかけるように鳴く。その仕草に僕は思わず吹き出してしまった。「なるほど、君なりに手伝ってるつもりか」と笑うと、シャズナもふと表情を和らげ、僕に寄り添って座り込んだ。

夕方になると、庭の空気がひんやりと心地よくなり、そよ風がハロウィーンソフィのつぼみを揺らした。二匹も疲れたのか、庭の縁側で並んで横たわっている。シャズナは静かに目を閉じ、ルシファンは丸まった体を小刻みに動かして眠りについていた。その穏やかな姿を見ていると、日常の何気ない時間がどれだけ大切なものかと改めて感じる。

夕食の時間が近づく頃、二匹を起こさないようにそっと家に入り、キッチンで準備を始めた。その間も、庭から聞こえる小さな虫の声と、二匹の微かな寝息が心地よいBGMとなる。

食卓には、今日はクリスティピーナッツを使った特製のスープを用意する予定だ。実際に収穫できるまでにはまだ時間がかかるが、少し先の未来を想像しながら料理を作るのは楽しいものだ。そして、きっとその時も二匹がそばで「それは僕たちにもくれるの？」とおねだりするのだろう。

夕暮れが深まり、再び庭を見ると、クリスティピーナッツとハロウィーンソフィの茎が風に揺れ、まるで僕たちの穏やかな時間を祝福しているように見えた。この植物たちがすくすくと育ち、やがて実りの時を迎える頃、シャズナとルシファンとどんな思い出ができているのだろうか。そんな未来を思い描きながら、僕は彼らと共に過ごす一日の終わりを静かに迎えた。