のほほん異世界暮らし

みなと劉

文字の大きさ
514 / 945

市場への道中と甘海老の誘惑

しおりを挟む
翌朝、僕はシャズナ、ルシファン、リッキーを魔力式トラックに乗せて市場へ向かった。今年も市場での納品が始まる。魔力式トラックのエンジンが心地よい低音を響かせながら、静かな田舎道を進む。窓を開けると、ひんやりとした空気が顔を撫で、心地よさが胸に広がる。

「にゃー。」助手席のシャズナが伸びをしながら、じっと僕の顔を見つめる。
「ちちっ!」ルシファンは肩に乗り、まるでナビゲーターのような気分を味わっているのかもしれない。
リッキーは後部座席で窓から外を覗き込み、ピッと鼻を鳴らしている。

「さあ、今日もがんばろうな。」

市場の入り口に近づくと、いつもと変わらぬ賑わいが広がっていた。屋台から漂う香ばしい匂いと人々の喧騒が心地よい。

納品と行商人との再会

僕はトラックを停め、荷台から農作物を慎重に降ろす。シャズナは興味深げに周囲を見回し、ルシファンは早くも屋台の食べ物に目を奪われている。リッキーは、いつものようにピョンピョンと跳ね回りながら僕を手伝おうとしているのか、ただ楽しんでいるだけなのか微妙な動きを見せている。

「おう、今日は大漁だな!」
声をかけてきたのは、顔なじみの行商人・オルバ。年配だが背筋が伸びていて、鋭い目つきが印象的な男だ。

「今年もよろしくお願いします。」僕が笑顔で挨拶を返すと、オルバは頷いて、荷物を確認し始めた。

「そうだ、今日はいいものがあるぞ。」

オルバが指さしたのは、大きな木箱に入った甘海老だ。新鮮な甘海老が氷の上で輝き、独特の甘い香りが漂ってくる。

「どうだ、試してみるか?市場に出回るのは珍しい品だぞ。」

僕は甘海老をじっと見つめた。プリプリとした身の透明感が、新鮮さを物語っている。

「それ、いただきます。」

オルバが笑いながら箱を差し出してくれた。

甘海老の魅力に夢中な三匹

納品を終え、甘海老をトラックに積み込むと、三匹が興味津々で箱の周りを嗅ぎ回り始めた。

「こら、勝手に食べちゃダメだぞ。」

「にゃーん。」シャズナは文句ありげに鳴く。
「ちちっ!」ルシファンは甘海老をじっと見つめたまま動かない。
リッキーはピッと鼻を鳴らしながら、僕の足元にまとわりついてくる。

「まあまあ、帰ったらちゃんとごちそうしてやるから。」

三匹に言い聞かせながら、僕はトラックを再び走らせた。帰り道、甘海老の香りが車内に満ち、食欲をそそる。

帰宅と甘海老のごちそう

農場に戻ると、僕はすぐに甘海老の下ごしらえを始めた。新鮮な甘海老は刺身で食べるのが一番だろう。僕は丁寧に殻をむき、プリプリの身をお皿に盛り付ける。

シャズナはテーブルの上からじっと見つめ、ルシファンはカウンターの端でそわそわしている。リッキーは椅子に飛び乗って、待ちきれない様子だ。

「ほら、お待たせ。」

僕が小皿を三匹の前に置くと、彼らは目を輝かせて食べ始めた。

「にゃー。」シャズナが満足げに一声。
「ちちっ!」ルシファンは鼻を鳴らして喜びを表現する。
リッキーはピッ、ピッと鳴きながら、夢中で甘海老を味わっている。

僕も一口食べると、甘みが口いっぱいに広がり、思わず笑顔になる。

「こうして美味しいものをみんなで食べられるって、幸せだな。」

三匹も同意するように、それぞれ満足げな表情を浮かべていた。

新年最初の納品と甘海老のごちそうで、素晴らしい一日が幕を閉じる。これからも、こんな穏やかな日々が続いていくことを願いながら、僕は三匹と共に夕日を眺めていた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

充実した人生の送り方 ~妹よ、俺は今異世界に居ます~

中畑 道
ファンタジー
「充実した人生を送ってください。私が創造した剣と魔法の世界で」 唯一の肉親だった妹の葬儀を終えた帰り道、不慮の事故で命を落とした世良登希雄は異世界の創造神に召喚される。弟子である第一女神の願いを叶えるために。 人類未開の地、魔獣の大森林最奥地で異世界の常識や習慣、魔法やスキル、身の守り方や戦い方を学んだトキオ セラは、女神から遣わされた御供のコタローと街へ向かう。 目的は一つ。充実した人生を送ること。

処理中です...