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夕方。市場での販売を終えた僕たちは、少し遅めの帰路についた。
リヤカーは軽くなったが、風は日中よりもぬるく、日陰のない道では少し汗ばむ。けれど、それもまた心地よかった。夏が少しずつ歩み寄ってきているのを、肌で感じる時間だ。
「今日もよく売れたな」
カイルが頭に巻いたタオルを外しながら言う。
「うん、冷やしトマトの試食が人気だった。あとズッキーニのグリルも」
「……やっぱり祭りの屋台、いけるって」
僕が苦笑していると、リヤカーの上で眠っていたルシファンがむくりと起きて、あくびをした。シャズナはそれを見て、しっぽをふにゃりと立てる。どうやらルシファンの寝顔に嫉妬したらしい。
リッキーは先に丘を駆け上がり、畑の方へと消えていく。きっとまた、草むらに耳をすませているのだろう。あの小さな角を風に揺らしながら。
「ところでさ……」と、カイルが少しだけ真面目な声を出す。「あの子、ウルム・ティアラ。あれから、連絡あった?」
「ううん。ラモウと一緒に、あの春祭りの日を最後に見てない。もしかしたら、もう別の土地に行ったのかも」
「……そうか。なんか、あの子はまだ何か言いたげだった気がしてな」
僕も、同じことを思っていた。あのときの、どこか影のある微笑み。そして名前――“ウルム・ティアラ”。カイルが言っていたように、それはこの世界の伝承に出てくる名前なのだ。
でも、僕にはその意味が分からなかった。僕がこの世界の人間じゃないから。
けれど、今はまだ、それでいいのかもしれない。わからないことは、少しずつ知っていけば。
「とりあえずは、今の畑を守るのが先だね。夏野菜も、そろそろ本番だから」
「だな。収穫祭まであと二ヶ月。気合い入れっか!」
「おー!」
笑い合いながら、僕たちは農地の丘を越えていく。陽は傾き、空はオレンジと藍のグラデーションになっていた。
リヤカーに残ったシャズナが、「にゃー」と一声鳴いた。
――明日も、いい日になる。
そんな予感が、風と一緒に吹いていた。
リヤカーは軽くなったが、風は日中よりもぬるく、日陰のない道では少し汗ばむ。けれど、それもまた心地よかった。夏が少しずつ歩み寄ってきているのを、肌で感じる時間だ。
「今日もよく売れたな」
カイルが頭に巻いたタオルを外しながら言う。
「うん、冷やしトマトの試食が人気だった。あとズッキーニのグリルも」
「……やっぱり祭りの屋台、いけるって」
僕が苦笑していると、リヤカーの上で眠っていたルシファンがむくりと起きて、あくびをした。シャズナはそれを見て、しっぽをふにゃりと立てる。どうやらルシファンの寝顔に嫉妬したらしい。
リッキーは先に丘を駆け上がり、畑の方へと消えていく。きっとまた、草むらに耳をすませているのだろう。あの小さな角を風に揺らしながら。
「ところでさ……」と、カイルが少しだけ真面目な声を出す。「あの子、ウルム・ティアラ。あれから、連絡あった?」
「ううん。ラモウと一緒に、あの春祭りの日を最後に見てない。もしかしたら、もう別の土地に行ったのかも」
「……そうか。なんか、あの子はまだ何か言いたげだった気がしてな」
僕も、同じことを思っていた。あのときの、どこか影のある微笑み。そして名前――“ウルム・ティアラ”。カイルが言っていたように、それはこの世界の伝承に出てくる名前なのだ。
でも、僕にはその意味が分からなかった。僕がこの世界の人間じゃないから。
けれど、今はまだ、それでいいのかもしれない。わからないことは、少しずつ知っていけば。
「とりあえずは、今の畑を守るのが先だね。夏野菜も、そろそろ本番だから」
「だな。収穫祭まであと二ヶ月。気合い入れっか!」
「おー!」
笑い合いながら、僕たちは農地の丘を越えていく。陽は傾き、空はオレンジと藍のグラデーションになっていた。
リヤカーに残ったシャズナが、「にゃー」と一声鳴いた。
――明日も、いい日になる。
そんな予感が、風と一緒に吹いていた。
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