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朝、薄明るい窓の外には、昨晩からの雪がふわりと積もっていた。あたりは静まり返り、白い世界が広がっている。僕は湯気の立つスープを鍋で温めながら、三匹の気配を背後に感じていた。
「にゃあ」
シャズナが僕の足に頬をすり寄せてくる。ルシファンは肩にぴょんと乗り、リッキーは朝のリンゴをかじっていた。
「今日は冬祭り本番だなぁ。準備ちゃんとしなくちゃな」
カイルはまだ寝ているらしく、寝室のドアは閉じたままだった。けれど、スープの香りが部屋に広がると、いつものように「うーん……いい匂い……」と聞こえてきた。
数分後、寝ぼけ眼のまま現れたカイルは、シャズナの頭をぽんぽんと撫でながら、僕の用意した朝食を見て小さく笑った。
「祭りの日まで、しっかり飯か。お前らしいな」
「まあ、腹が減ってちゃ踊れないし」
「踊るつもりだったのか?」
「三匹とね」
すると、リッキーが「ぷぅ」と小さく鳴いてぴょんぴょん跳ね、ルシファンはテーブルの上のカップのふちでバランス芸。シャズナは僕の肩に乗って小さく喉を鳴らした。
朝食を終えてから、僕は昨日のうちに洗っておいた浴衣とマントを取り出した。今日の冬祭りでは、夜にかけて広場での点灯式や仮装パレードもあるから、寒さ対策はしっかりしておきたかった。
「よし、三匹もこれ着よう」
用意しておいた小さなポンチョと耳当てを見せると、三匹はわらわらと集まってきて、順番に身を預けてくる。シャズナは白地に赤の刺繍入り、リッキーは藍色、ルシファンは黒地に金のライン。
「お前たち、主役みたいだな」
僕がそう言うと、カイルが苦笑交じりに「それはお前だろ」と言いながら、僕の肩にマントをかけてくれた。その手が少し長く残り、僕はちらと彼の顔を見る。
「なんだよ?」
「……いや、似合うなって思って」
なんでもないような声だったけど、カイルの目がどこか、優しげだった。
そして午後、町の広場へ。
雪は止んで、薄日が差し込み、イルミネーションの飾りつけが少しずつ明るくなってきていた。音楽が流れ、出店の屋台から甘いお菓子の香り、香辛料の効いたスープの匂い。
三匹はそれぞれの「お気に入りの場所」へとすたすた歩き、僕とカイルもそのあとを追って歩き出した。
やがて空が薄桃色から紫へと変わり始める頃、町の中央に大きな鐘が鳴り響く。光のカーテンが降りて、灯りが一斉に点った。
「……綺麗だな」
僕がつぶやくと、隣のカイルが「お前が笑ってる方が綺麗だよ」と、唐突に言った。
「なっ……何言ってんだよ」
「冗談さ。けど……本音でもある」
三匹の視線が同時にこちらに集まっていて、僕はごまかすようにシャズナの頭をなでた。
シャズナは「にゃっ」と高い声を上げて、まるで「わかってるから」と言いたげに、僕の頬をちょんと前足でつついた。
「にゃあ」
シャズナが僕の足に頬をすり寄せてくる。ルシファンは肩にぴょんと乗り、リッキーは朝のリンゴをかじっていた。
「今日は冬祭り本番だなぁ。準備ちゃんとしなくちゃな」
カイルはまだ寝ているらしく、寝室のドアは閉じたままだった。けれど、スープの香りが部屋に広がると、いつものように「うーん……いい匂い……」と聞こえてきた。
数分後、寝ぼけ眼のまま現れたカイルは、シャズナの頭をぽんぽんと撫でながら、僕の用意した朝食を見て小さく笑った。
「祭りの日まで、しっかり飯か。お前らしいな」
「まあ、腹が減ってちゃ踊れないし」
「踊るつもりだったのか?」
「三匹とね」
すると、リッキーが「ぷぅ」と小さく鳴いてぴょんぴょん跳ね、ルシファンはテーブルの上のカップのふちでバランス芸。シャズナは僕の肩に乗って小さく喉を鳴らした。
朝食を終えてから、僕は昨日のうちに洗っておいた浴衣とマントを取り出した。今日の冬祭りでは、夜にかけて広場での点灯式や仮装パレードもあるから、寒さ対策はしっかりしておきたかった。
「よし、三匹もこれ着よう」
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「お前たち、主役みたいだな」
僕がそう言うと、カイルが苦笑交じりに「それはお前だろ」と言いながら、僕の肩にマントをかけてくれた。その手が少し長く残り、僕はちらと彼の顔を見る。
「なんだよ?」
「……いや、似合うなって思って」
なんでもないような声だったけど、カイルの目がどこか、優しげだった。
そして午後、町の広場へ。
雪は止んで、薄日が差し込み、イルミネーションの飾りつけが少しずつ明るくなってきていた。音楽が流れ、出店の屋台から甘いお菓子の香り、香辛料の効いたスープの匂い。
三匹はそれぞれの「お気に入りの場所」へとすたすた歩き、僕とカイルもそのあとを追って歩き出した。
やがて空が薄桃色から紫へと変わり始める頃、町の中央に大きな鐘が鳴り響く。光のカーテンが降りて、灯りが一斉に点った。
「……綺麗だな」
僕がつぶやくと、隣のカイルが「お前が笑ってる方が綺麗だよ」と、唐突に言った。
「なっ……何言ってんだよ」
「冗談さ。けど……本音でもある」
三匹の視線が同時にこちらに集まっていて、僕はごまかすようにシャズナの頭をなでた。
シャズナは「にゃっ」と高い声を上げて、まるで「わかってるから」と言いたげに、僕の頬をちょんと前足でつついた。
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