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第8話 不器用な食事会
しおりを挟む砦の厨房から美味しそうな香りが漂ってくる昼下がり。今日は戦乙女たちの食事当番で、みんなが手際よく料理を作っていた。しかし、その隅でシルフィアが困った顔をしているのをアルフレッドが見つけた。
「おや、戦乙女さまが珍しく困ってるな」
声をかけると、シルフィアは眉をひそめた。
「うるさい。料理なんてやったことがないんだ」
「まさか。お前でもできないことがあるとはな」
アルフレッドはニヤリと笑い、シルフィアの隣に立った。
「ほら、俺が手伝ってやるよ。何を作りたいんだ?」
「スープだ。簡単そうだから選んだが、どうやら甘く見ていたらしい」
鍋の中には、焦げ付きそうなほど煮詰まった何かが入っている。それを見て、アルフレッドは肩をすくめた。
「これはちょっと手強いな。でも大丈夫だ、俺に任せろ」
アルフレッドは手早く鍋の中身を救出し、新しい材料を取り出して作り直し始めた。その手際の良さに、シルフィアは驚きの表情を浮かべる。
「お前、意外と料理が得意なんだな」
「まぁな。一人旅が長かったから、食えないと困るだろ?」
笑顔で答えながら、アルフレッドはスープを調理していく。鍋から立ち上る香りが厨房全体を包み込み、シルフィアの顔にも少し期待の色が浮かぶ。
「これで完成だ。味見してみろよ」
アルフレッドは器に盛ったスープをシルフィアに差し出す。スプーンを持ち、恐る恐る口に運んだ彼女は、驚いたように目を見開いた。
「……美味しい」
「だろ? お前も練習すればこれくらい作れるようになるさ」
「簡単に言うな。私は剣を握るのが専門だ」
少し不満げに言いながらも、シルフィアはスープを一口また一口と飲み進めていく。その姿を見て、アルフレッドは微笑んだ。
「なぁ、たまにはこういう穏やかな時間もいいだろ?」
「そうかもしれないな。戦場では味わえない貴重なひと時だ」
二人が話している間に、厨房にいた他の戦乙女たちが集まってきた。
「何このスープ! めっちゃ美味しいじゃない!」
「誰が作ったの?」
口々に称賛の声が上がる中、アルフレッドは誇らしげに胸を張った。
「俺だよ。シルフィアに手伝ってもらったけどな」
「手伝っただけだ。ほとんどお前の腕だ」
そう言いながらも、シルフィアの表情は少しだけ得意げだった。それを見た戦乙女たちは、興味津々の視線を向ける。
「二人、仲がいいんだねー」
「まさか、そういう関係?」
冷やかしの声に、シルフィアは顔を赤らめた。
「違う! ただ手伝ってもらっただけだ!」
「へぇ~、でもお似合いだと思うけどな」
アルフレッドは照れるシルフィアを見て、軽く笑った。
「まぁ、そう言われるのも悪くないけどな」
「お前は黙れ!」
スープを作るだけのはずが、いつの間にか砦全体を巻き込んだにぎやかな昼食会となった。そんなひと時も、戦乙女と剣士の間にまた少しずつ距離を縮めるきっかけとなっていく。
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