常夏の恋

夜色シアン

文字の大きさ
13 / 15
Re:Memories of summer

常夏の恋-Re:Memories of Summer-⑫

しおりを挟む
「……あと少しで花火始まるのに」

 そんな清宮の声は透也に届くことはなかった。

 ーーそれから間もなくして最初の花火が打ち上がる。幾千の星が浮かぶ夜空に、とても大きくがいくつも咲き誇った。刹那、様々な花火が打ち上げられている音がその場にとどまらず、町に響き渡る。

 だが彼は決して振り返り花火を見ることはない。ましてや後戻りすることも無い。

 それだけ彼女を必死に、探し続けているのだから。

 花火大会のため静まった街を探しても、彼女の実家へと寄ってみるも、やはり彼女の姿はない。

 しかしそれでもなお、彼は探し続けた。

 気づけば三部編成になってる花火大会は、後半へとさしあたる。聞きなれた花火の音だからこそ、会場にいなくとも、花火大会が休む間もなく終わりに近づいていることを悟る。

「くそっ……どこにいるんだ……」

 今戻れば花火は見れる。

 和香羽はただの幼馴染。探す必要など普通はない。そもそも先程のが本当に和香羽だという根拠がない。

 そんな邪念が、疲れ切った脳を支配し始める。しかしその邪念が頭に過ぎる度、不思議と胸が締め付けられていた。

 だからこそ、邪念を振り払い再び歩みを進める。しかし街中を隈無く探しても、彼女の姿は一向に見えない。

 一体どこに行ったのか、息を切らしつつそう思っていると、

「……そういえば昔もこんなことあったな……」

 彼はふと、昔の出来事を思い出した。

 ーー私達が大人になったら結婚しよ?約束だよトーヤ。

 ーーうん。約束!街一番の叶木かなえぎに誓って約束!

 それは時が経ち忘れてしまった大切な記憶。

 それは和香羽に伝えなくてはならない想い。

 それはーー

 たった一シーンでしかないが、“約束”した日を思い出した透也は、ゆっくりと息を整えると、ただひたすらにある場所へと走り出した。

 ーーーーーー

 ーーーー

 ーーもうすぐ花火が終わる。

 いや、正確にはパン、パンパンっと鉄砲の銃声のようにも聞こえる締めの花火が三発打ち上げられた。

 とうとう今年の花火大会が終わってしまったのだ。

 だがそれと引き換えにあの場所ーーおおきな木がある、あの場所へとたどり着いた。

「はぁ……はぁ……」

 花火の光は無くなり、暗闇の中頼りになる光はもはや月の光しかないが、淡く大地を照らす月明かりでもそこに望月和香葉がいるのは、確か。何せ会場で見た白い着物を着ているのだから、間違いはない。

 しかし彼女は闇に溶け込むおおきな木を見上げており、彼が隣に並ぶまで気づくことはなかった。

「折角二人きりにしてあげたのに……馬鹿だな君は」

「嘘つきなんて言われて消えたら……探すだろ」

「ははっ……それもそうだね」

 会話を交わしつつも和香羽の目は木の上。ただでさえも彼がこうして追いかけ、彼女の所にやってきた事に嬉しさを感じている。故に涙を流しそうになっているというのに、今彼を見てしまうと涙は滝のように溢れ出ると察しがついていたのだ。

 だからこそ、見上げたまま、口を開く。

「私ね……言ってなかったことがあるんだ……いや、本当は怖くて言えなかった……それを言ったらきっと透也は凄く悲しい顔をするだろうから」

「言ってなかったこと?」

 覚悟を決めたのか、見上げるのは止めて真っ直ぐ透也を見つめ始めた。

 その時静かに流れる涙が、彼女の頬を伝い落ちていく瞬間を見て、一瞬心臓が高鳴る。いや、高鳴らずとも彼女に何か違和感を感じるのは確かだ。

 今まで涙を見せたことの無い和香羽が、涙を流してるからこそ違和感や不安に駆られたのだ。

「私ね……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

Short stories

美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……? 切なくて、泣ける短編です。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【完結】大好きなあなたのために…?

月樹《つき》
恋愛
私には子供の頃から仲の良い大好きな幼馴染がいた。 2人でよく読んだ冒険のお話の中では、最後に魔物を倒し立派な騎士となった男の子と、それを支えてきた聖女の女の子が結ばれる。 『俺もこの物語の主人公みたいに立派な騎士になるから』と言って、真っ赤な顔で花畑で摘んだ花束をくれた彼。あの時から彼を信じて支えてきたのに… いつの間にか彼の隣には、お姫様のように可憐な女の子がいた…。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...