『第二の性別』が存在する乙女ゲーム異世界で、性別詐称している悪役令嬢(α)に転生してしまった

サトウミ

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「えっ、嘘。私、転生しちゃったの!?」

前世の記憶が蘇った私の第一声は、それだった。

前世は乙女ゲームをやるのが趣味な隠キャOLだったこと。
この世界が、前世で遊んだ乙女ゲーム『キミの二つ目の生』の世界であること。
私が『キミの二つ目の生』に登場する、悪役令嬢アデリーナ・プレスティに転生してしまったこと。
そして、アデリーナが実は性別を詐称していたこと。

……蘇った記憶の情報量が多すぎて、頭では理解できていても気持ちが追いつかない。

百歩譲って、だ。
ネット小説によくある『乙女ゲームの悪役令嬢に転生した』という展開は、まだ気持ちが追いつく。
だけど、いくらなんでも『オメガバースが存在する乙女ゲーム』に転生してしまうとは思わなかった。

とはいえ私自身、オメガバースについて、そんなに詳しくはない。
男女の性別とは別の『第二の性別』ということだけは覚えているが、その他の設定に関する記憶は自信がない。

確か……。


ずば抜けた知能と身体能力を持つ、優秀な性別の『α』。

人口が圧倒的に多いものの、目立った特性はなく能力は平均的な性別の『β』。

『ヒート』と呼ばれる発情期が定期的に起こるが故に日常生活に支障をきたす、社会的弱者な性別の『Ω』。


……の3種類で合っていただろうか?

細かい設定はあやふやで自信がない。
そもそも前世の私にとって、オメガバースは『二次創作でたまに見かける設定』程度の認識でしかない。
前世の私が読んだラノベや乙女ゲームで、オメガバースの設定が出てくる作品は『キミの二つ目の生』しかなかった。
オメガバースって、結局、どこ由来の設定だったんだろう?
という疑問は、今はどうでもいい。

今はそれ以上に、衝撃的な事実を知ってしまったのだから。

「アデリーナって、αだったんだ。作中ではΩだって言ってたのに」

なぜ性別詐称を?
と一瞬思ったが、この世界の設定を思い出せば理由は明白だ。

この世界の貴族社会は、女性は家庭に入って子供を作ることが何より重要視される。
外に出て活躍する女性は男性から顰蹙を買いやすく、それ故に先天的に優秀なαの女性は結婚し辛い。
それに対してΩの女性は、男のプライドを傷つけない程度に馬鹿な上に、授かりやすい体質であるため、男性からの需要が高い。
わざわざΩだと宣言して馬鹿のふりをする理由も納得だ。

だからこそアデリーナは、本当のΩであるヒロインのオデッタ・イルミナティ男爵令嬢に激しく嫉妬したのだろう。
その色香で、婚約者である公爵令息ベルトルド・カルレーイの心まで奪われたのだから、オデッタに嫌がらせをするのも無理はない。

だけど今の私には、ヒロインに対する嫉妬も婚約者に対する執着もない。
仮にオデッタがベルトルドルートに入っても『どうぞ』と差し上げよう。
オデッタに嫌がらせをして破滅するくらいなら、婚約解消は甘んじて受け入れるわ。

αの令嬢は結婚できない?
上等だ。
結婚を諦めて一人で生きていく覚悟は、前世の時点で持ち合わせている。
それにせっかくαとして生まれたのだから、恵まれた能力を活かして生きたい。

とはいえ、オデッタがベルトルドを攻略しないのであれば、そのまま結婚しても構わないけど。

どっちみち、オデッタとは関わらないようにしよう。
触らぬ神に祟りなし、だ。

私は記憶を取り戻したものの、特に対策は打たず今まで通り過ごし、月日は流れた。


◆◆◆


数年後。
『キミの二つ目の生』の舞台である王立魔法学院に、ヒロインのオデッタが入学した。
誰もが目を奪われる程の美少女な上に、Ωの令嬢だということで、学院中が彼女の噂で持ちきりだ。

私は彼女とクラスが違うため、接点がない。
このままベルトルドルートに入らず、彼女とは無縁の平穏な学院生活を過ごせればいいのだけれど。

そんなささやかな願いは、叶うことはなかった。


「ねぇ、聞きました? あの噂」
「オデッタ様のことですわよね? どの噂のことでしょうか?」
「あの方、今度はベルトルド様にも目をつけたそうですよ」
「本当ですか?! つい先日、ロドヴィーコ様やルーベン様、それにメルキオッレ様とも親しくしておりませんでしたか?」
「またあの方に魅了されてしまった殿方が出てしまったのですよ。しかもベルトルド様はアデリーナ様という婚約者がいらっしゃるのに」
「Ωの侯爵令嬢の婚約者がいる殿方ですら、オデッタ様の誘惑に打ち勝つことができないのですね」
「あぁ。私の婚約者もオデッタ様に魅了されてしまったらどうしましょう」
「あなたの婚約者は貧乏子爵令息ですから大丈夫ですよ。オデッタ様が狙うのはいつも高位貴族の方ですもの」


そんな噂を耳にしてしまった。

どういうこと?
『キミの二つ目の生』にハーレムルートは存在しない。
周りが勘違いしているだけで、本人にはその気がない、とかかしら?
まさか彼女も私と同じで転生者だったりして。
もし彼女が転生者で、自力でハーレムルートを作ろうとしているのなら、シナリオ通りに動かない私に敵意を向けてくるかもしれない。
なんにせよ、現段階では判断できないからもう少し様子を見てみるか。

その答えが明白になったのは、数週間後のことだった。

オデッタはある時を境に、『アデリーナわたしに嫌がらせをされているかもしれない』と吹聴するようになった。

もちろん、私は無実。
オデッタにもベルトルドにも興味はない。
たとえオデッタが転生者であろうが、ゲームにないシナリオを歩もうが、婚約者を寝取ろうが、彼女が直接敵意を向けてこなければ見逃すつもりだった。
だけど、冤罪をふっかけられたのであれば話は別だ。
黙って破滅させられるほど、私もお人よしではない。

「いいわ、その喧嘩。買ってあげる」

断罪される前に、身の潔白を証明してみせるわ。


◆◆◆


それから数週間後。
オデッタはことあるごとに、私に因縁をふっかけてきた。

通りすがりにすれ違っただけで大袈裟に「痛い」と騒ぎ出したり、階段で遭遇しただけでわざと落ちて「押された」と吹聴したり。
とにかく、オデッタの中の人は悪質だ。

その上、毎日攻略対象達を侍らせては「ヒートした」と騒ぎ立てて彼らに介抱してもらっている。
ただでさえオデッタはプレイヤーから「オメガビッチ」と言われていたのに、これじゃあ真性のビッチだ。

まぁ、彼女がアバズレになろうが娼婦になろうが文句を言うつもりはない。
だけど、私を悪者扱いした報いは受けてもらうわ。

今日は学院の創立祭。
ゲームだと攻略対象とダンスをしたり、私が断罪されたりするイベントである。
本来なら婚約者がいる場合、女性は男性にエスコートしてもらえるのだけれど、肝心のベルトルドはここにはいない。
ベルトルドは他の攻略対象達と一緒に、さも当然かの如くオデッタの隣にいる。

ゲームだと攻略対象は5人いたが、オデッタの側にいるのは4人。
あとの一人は彼女の好みじゃなかったようで、されずに彼女達とは離れた場所にいる。

「ねぇ、あの噂、聞きました?」
「聞きましたわ。アデリーナ様がオデッタ様に、また嫌がらせをしようと企んでいるのでしょう?」
「せっかくの創立祭に、今度は何をするつもりなのかしら?」
「いくらオデッタ様がベルトルド様と仲が良いとはいえ、流石にオデッタ様が可哀想ですわ」

令嬢達の噂話は、私とオデッタのことで持ちきりだ。
何かを企んでいるのはオデッタの方だろう。
私は彼女の断罪ごっこに付き合う準備しかしていない。

私は誰とも雑談することなく一人で佇んでいると、オデッタと攻略対象達が私の前にわざわざやってきた。

「あの……アデリーナ様。今日はお話があるそうですが、ご用件は何でしょうか?」
「あら? 私はオデッタ様を呼び出した記憶はございませんが」
「とぼけるなっ!」

私を怒鳴りつけたのはベルトルドだった。
彼の側にいた他の攻略対象も、私を睨みつけている。

「今日の創立祭で、オデッタ嬢に一人で会いに来るように言っていただろう? 君の筆跡で書かれたメモが彼女のノートに挟んでいたのが、その証拠だ」

気づけば周囲も私を責めるような目で眺めている。

「証拠、と言われましても。私はそのメモに身に覚えがありません。どなたかが私の筆跡を真似てオデッタ様のノートに挟まれたのでしょう」
「しらを切るつもりか。まぁいい。このメモは君が書いたものだと仮定して……彼女一人でないと言えないような話でもあるのか?」

「オデッタ様一人でないと話せない内容、ですか? 百歩譲ってそのような話があるならば、それこそ、この場では言えません」
というより、そんな話は用意していない。

「君の屁理屈にはうんざりだ。だったら君は彼女に言いたいことはないのか? 彼女にコソコソと何かをするくらいなら、正々堂々と話してみたらどうだ?」
「あら、よろしいのですか?」
「もちろんだ。オデッタ嬢も良いよな?」
「当然ですわ!」

そう言い切るオデッタは、まるで自分に非はないかのように堂々としていた。
陰湿ないじめ工作をしているのに、よくもまぁ「私は被害者です」と言わんばかりの表情ができるものだ。

ただ、せっかくオデッタとちゃんと話せる機会をもらえたわけだし、彼女と話してみるか。

「それではお言葉に甘えます。私が話したいことはただ一つ。オデッタ様やベルトルド様達は嫌がらせの件で誤解されております。ですので、私の主張を聞いていただけますでしょうか?」
「誤解だと? ふざけるな! 誰が君の主張なんか……」
「さすがはベルトルド様ですわ! 感情論に流されず客観的判断を下すために、私の話を聞いてくださるなんて。優秀なαの殿方は凡人とは違いますわ。βやΩでは到底、そのような冷静さはもてません」
「っ?!」

私の牽制に、ベルトルドは言葉を失う。
それもその筈、彼はαを自称しているが実際はβなのだから。
コンプレックスを刺激された彼は、歯ぎしりをしながら鬼の形相で私を見つめた。

「学院で噂されております、私がオデッタ様に嫌がらせをしたという話は、全くもってデタラメでございます。今日はその証拠をお持ちしました」
「証拠だと?」

隠していたを取り出すと、ベルトルド達は勿論、周囲の生徒達の視線もその道具に集まった。

「こちらは『真実の御鏡』と呼ばれるアーティファクトで、過去の出来事を嘘偽りなく映し出すことのできる鏡でございます」
「アーティファクトだと? 馬鹿な。アーティファクトを手にして良いのは王族か、王族の許可を得た者だけだぞ?」
「こちらのアーティファクトは私が『深淵の海底』にて発見致しました。国王陛下が、その功績を考慮してくださったため、本日は陛下の許可を得て持ち出しております」
「ヒトを馬鹿にするのもいい加減にしろ。深淵の海底はS級冒険者でも死者が出る最難関ダンジョンだぞ? Ωの令嬢である君が攻略できるはずないだろ。第一、君がもし攻略したのであれば国中がその噂で持ちきりだろ?」
「深淵の海底を攻略した旨は、陛下に箝口令を敷いていただいていました。私がαであることが公になればベルトルド様との婚約が破談になる恐れがありましたので」
「君がαだと……? まさか……」

その事実に場の空気が一変し、好奇の目で見られる。

「アデリーナ様、なぜ今更αであることを明かしたのでしょうか? まさか武勇伝を語りたかったからでしょうか?」

オデッタは嘲笑しながら尋ねてきた。
まるで『アデリーナわたしがαであろうが大したことはない』と言わんばかりの舐め切った態度だ。

「ベルトルド様のお気持ちに気づかない程、私も愚かではありません。私がΩのフリをしようと、オデッタ様へ嫌がらせをしていない事実が公になろうと、婚約を解消されるのは時間の問題です。ならば、αであることが公になりましても大した問題ではないかと考えた次第です」

「アデリーナ嬢にそこまで思わせていたのなら、僕が悪かった。だけどもし君が本当にαだというのなら、婚約破棄するしかない。性別詐称は重大な契約違反だ。プレスティ侯爵にも抗議する」
「あら。お父様に婚約に関する契約内容を確認しましたが、性別詐称に関する内容は記載されていませんでしたよ? 仮にそれが重大な違反であれば、お互い様ではありませんか」
「っ!?」

ベルトルドは意表を突かれて、苦虫を噛み潰したような顔をする。

「とりあえず、私がαである事実は変えられませんので、婚約破棄の件はお父様に報告いたしますね。α

私の嫌味が伝わったのか、ベルトルドは鋭い眼差しを向けながら小さく舌打ちをした。

「ですが、アデリーナ様。仮にベルトルド様と婚約破棄されましても、αのご令嬢であると公になれば婚約者が見つからなくなるのではありませんか?
……あっ! ですがαでしたら、殿方に恵まれなくともお一人で生きていけますよね? なにせ、最難関ダンジョンを攻略されるほどのお力がおありですもの。アデリーナ様はきっと、家庭に入るより冒険者として活躍する方が性に合っていらっしゃるのではありませんか?」

オデッタの言う通りではあるが、なぜこうも見下した言い方をしてくるのだろう?
嘲笑してくるのは彼女だけではない。
会場にいた生徒達も皆、頬を緩めながら笑いを必死に堪えて私を見ている。
侯爵令嬢わたしが冒険者になるのが、そんなにおかしいかしら?
とりあえず、そんな彼らをスルーして話を戻そうとした。

その時。
一人の男性が、私を庇うように現れた。

「そんなことはない。アデリーナ嬢は魅力的な女性だから、その気になればすぐに相手を見つけられる」

そう断言したのは、第一王子のオネスト殿下だった。
彼も攻略対象の一人だったが、唯一オデッタに攻略されていないキャラだ。
眉目秀麗で凛とした佇まいの彼だが、なぜオデッタは麗しい彼を攻略しなかったのだろう?

「お、オネスト殿下?! アデリーナ嬢とお知り合いなのですか?」
「まぁな。前に体調不良で倒れていた時に、彼女に助けてもらったのがきっかけで友人になった」

オネスト殿下はΩだ。
それ故にゲームではヒートしてピンチに陥るイベントが何度かあった。
だけど、この世界のオデッタは彼を攻略する気がないので、ヒートした彼が放置される可能性がある。
そう考えた私は、彼のヒートイベントが起きるタイミングを見計らって手助けをしたのだった。
恩を売るつもりはなかったけれど、この場で私を庇ってくれるなんて律儀な人だ。

「だけど、婚約解消するのであれば友人である必要はないか」
「えっ? それは……どういう意味ですか?」
「アデリーナ嬢。もし君が良ければ、俺と婚約して欲しい。ベルトルドも問題ないだろう?」

突然の展開に、私もベルトルドも目を丸くして言葉を失った。
頭が一瞬、真っ白になったが、私が首を縦に振るとオネスト殿下は静かに微笑んだ。

その光景に周囲の生徒達は、大きく騒ぎ立てる。
オデッタは数秒固まっていたが、やがて扇子で口元を隠しながら、周囲の生徒以上にうるさい笑い声を出した。

「アハハハハハ! ……おっと、失礼。アデリーナ様、おめでとうございます。オネスト殿下に見初められるとは、流石ですわ。やはり男女逆とはいえ、αとΩは惹かれ合う関係なのですね」

おめでたい、という感情が一切伝わってこない笑顔だ。

「オデッタ嬢、それはどういう意味だ?」
「あっ、すみません殿下! 殿下がΩであることを隠されていたのをすっかり忘れていました」
「俺がΩ、だと?」
「あれ、違いましたか? 学院の中庭や薬草室でヒートしている姿を目撃しましたが、見間違えでしょうか?」
「……っ?!」

Ωだとバラされたオネスト殿下は、一気に顔から血の気が引いた。

「αのご令嬢であるアデリーナ様と、Ωの王子であるオネスト殿下。……とてもお似合いなお二人ですわ!」

オデッタの言葉には、確実に侮蔑が含まれている。
そんな姿を見て、彼女がオネスト殿下を攻略しなかった理由が何となく分かった。

Ω男性は彼女の趣味ではないのだろう。
Ωの攻略対象は彼しかいなかったし、間違いない。
彼女からはこの世界の貴族達と同様に、Ω男性を心底見下している感じが、ひしひしと伝わってくる。

「αとΩ……って、まさか!」
「オネスト殿下はΩなのか?」
「嘘だろ? オネスト殿下はαじゃなかったのか!?」

オネスト殿下には悪いことをしたわね。
私の断罪劇に付き合ってもらったばかりに、Ωだということが公になってしまった。
周囲にいた生徒も最初こそ驚いてはいたものの、次第にオネスト殿下を嘲笑しだした。

「それはどうも、ありがとうございます。オデッタ様も、素敵な殿方に恵まれると良いですね。
オデッタ様であればきっと、
『大した能力もないクセにαを自称するプライドの高い男』や『オデッタ様がヒートになるのを良いことに好き勝手する下衆男』、『α以外をうっすら見下しているレイシスト男』や『Ω恐怖症を隠すためにΩに暴言を吐くカス男』
……なんかより素晴らしい殿方に巡り会えますよ」

「なっ……!」
「馬鹿にしているのか!?」

「はて、どうなされましたか? 誰もベルトルド様達のことだとは言っていませんよ?」

だけど皮肉は通じたようね。
ベルトルドも他の攻略対象達も、顔を真っ赤にして私を睨みつけてくる。

「それにベルトルド様達はオデッタ様とお似合いではありませんか。爵位こそ釣り合っておりませんが、人間性や学力は釣り合っていると思いますよ?」

「何だと!?」
「貴様、私達を馬鹿だと言いたいのかっ!」

「いえいえ。誰も馬鹿だとは思っておりません。むしろ皆様は何故そう思われたのですか?」

するとベルトルド達は気まずそうにオデッタの顔を見ながら黙り込んだ。
その視線を浴びたオデッタは、顔を真っ赤にさせて怒った。

「酷いですわ、ベルトルド様達ったら! 私を馬鹿だと言いたいのですか?」
「ち、違う! 誤解だよ!」
「ただ、αの俺達とΩの君とじゃ、生まれつきの性能が違うというか……」

「その言葉、俺の前でも言えるのか?」

オネスト殿下の一言で、ベルトルド達は固まった。
無理もない。
殿下は学年主席なのだから。

「Ωの俺と、αのお前達の『性能差』とやらを教えてくれよ」
「それは……」
「無理だよな。試験じゃいつも、αのお前達よりΩの俺の方が上だもんな。学年主席の俺が、お前達が見下していたΩだと知って、今どんな気持ちだ?」

オネスト殿下が鼻で笑うと、さっきまで嘲笑していた周囲の生徒達までもが表情が固くなった。

「それより、話がかなり逸れたが本題へ戻そう。アデリーナ嬢、話の続きを聞かせてくれ」
「勿論です。こちらの『真実の御鏡』と呼ばれるアーティファクトで、オデッタ嬢に対する嫌がらせを行った犯人を調べてみましょう」

真実の御鏡は、過去の出来事を映し出す。
私とすれ違った時に、わざとぶつかったフリをする映像。
私と階段で鉢合わせた時に、私に押されたフリをしなが階段から落ちた時の映像。
自身のノートに私の筆跡でメモを残した時の映像。
その全てが、客観的に誰が見ても私が無実であることを証明していた。

「……映像は以上です。オデッタ様、何か反論はございますか?」
「……嘘よ。嘘、嘘! こんな映像、デタラメですわ!」

今までの悪事が明るみになったオデッタは、口をガクガクと震えさせている。

「この鏡に映し出された映像は真実だ。これが本物のアーティファクトであることや能力に関しては、宮廷魔術師団長お墨付きだ」

オデッタは助けを乞うように攻略対象達に視線を送るも、彼らは気まずそうに視線を逸らすだけで彼女に手を差し伸べることはなかった。

「オデッタ様がなぜ私にこのような事をされたのかは理解できませんが、このことは貴女のお父上であるイルミナティ男爵に相談させていただきますね」

オデッタと攻略対象の4人は、それ以降、私に絡んでくることはなかった。
今回の件で気まずくなったのか、彼らがその後、学院で一緒にいるところを見かけることはなくなった。

厄介ごとに巻き込まれた、今回の断罪劇。
オデッタに一つ、感謝したいことがある。

それは──オネスト殿下と婚約できたことだ。

嗚呼、結果的に推しと結婚できるなんて、最っ高!!



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