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私の休日(ほのぼの)
しおりを挟むエイル様の誕生日をお祝いするようになって、今年は記念すべき5回目。
最初は覚えた刺繍を披露するべくハンカチを。2回目はちょっと大人っぽく万年筆を。3回目は黒の森で見つけた蜻蛉入りの琥珀のブローチ。4回目は角熊の魔石を細工したカフスを。勿論、角熊は自ら狩ったもの。あれは運が良かった…残りの破片はペンダントにして、皮は御館様のマントと奥様の帽子に出来たし、ペンダントは困った時に売り払えば良いのでお得しかない。
そうして5回目は……
「何が良いですかねー」
「いや、本当に毎回良いのに……祝ってくれるだけでありがたいよ?」
「何をおっしゃっているんですか!15歳という節目のお誕生日なんですよ??お祝いの言葉だけなんて寂しいじゃないですか」
「そうは言ってもね…」
と、言い合いしながら商店街を歩くけど、特にビビっとくるものはなく。15歳は成人とされる為、今回久々のパーティーを開催する程重要性のある年齢なのだ。ここはエイル様の好みど真ん中でインパクトのある物を送りたい。
侯爵家であるし、坊ちゃんのおかげ(?)で資金も潤っているから、欲しいものは困ることなく手に出来るであろうことが、更にプレゼントを悩ませる。
「おー!レナ嬢。デートか?」
そこへいつもお世話になっている武器屋の店主が手を振って近づいてきた。
「エイル様に失礼ですよ?」
「これは小侯爵様!いつもご贔屓に」
店主がわざとらしく深々と頭を下げると、彼のちょっと寂しい頭がきらりと光った。いっそのこと剃ってしまえば良いのに……と思っているのは内緒だ。
「こちらこそ、いつも騎士団が世話になってるね」
「いやいや、騎士団は黒の森を抑える要です。微力ながらお仕え出来て幸せってもんですよ。で、今日はまた街の視察かなんかですか?」
「それが、レナが」
「エイル様のお誕生日に何か良いものを探しているのです」
「おお!もうそんな時期になりましたか」
「それがデートじゃないのか…?」と聞こえた気もするけど、これはあくまで付き添いに来て貰っているので、デートではない。
「ふむ。小侯爵様は学園を卒業してどうなさるんでしたか?」
「慣例に乗っ取って、暫く王都の騎士団に入るつもりだよ」
「でしたらほら!新しい剣とか、防具とか」
「すかさず商売しようとしますね……騎士団に入ったら配給品を身につけるんだと思いますよ?」
「ありゃ、これは失敗」
おどけてみせる店主だが、おっさんのおどけた姿は痛いのでやめて頂きたい。
「予め手に馴染んだ物とかは使って良いとは聞いたけど」
「ほうほう。なら、剣帯はどうでしょう?それか房飾りなんて配給品にも付けられますし」
「ああ、基本的に騎士団の寮は貴金属の持ち込みは禁止だし、良いかも知れないな」
ぐぬぬ。店主にプレゼントを決められるなんて不覚!!しかし、房飾りに剣帯……良いかも知れない。
「なら、是非当店で……」
「ふむ。房飾りなら私の髪で編みましょう。きっと丈夫です」
「「えっ」」
「冗談です」
「真顔で冗談は言わないで欲しいな」
「申し訳ございません」
苦笑いを浮かべるエイル様。
私の表情筋が死んでるのは仕方ないことなので、慣れて下さいね?
さてと、こうなったら特別な毛で房飾りを編みたい……絹も良いけど、もっとこう、丈夫な……
「黒鉄狐の毛皮!!」
「おいおい、そんな高級品うちにはないぞ」
「今日私が狩りました!15頭!」
「15?!」
「うーん、一部は持ち帰りで残りは売り払ったので、今ギルドに行けば買えるかも??」
「何?!こうしちゃいられない!小侯爵様、申し訳ないが失礼します!!」
黒鉄狐は滅多に市場に出ない高級品。
耐久性もあるので、胸当てや腰巻きにすると防御力も上がるし、とても人気がある。
さて、店主は買えるかしら?
あーでも、黒鉄狐の房飾りなんて絶対他と被らないよね?硬くて魔力を込めながら作業しなきゃいけないけど、それもまた良い練習になるし……結構楽しみになってきた。
「じゃあ、お散歩は終わりかな?」
「そうですね、案を店主に貰ったのは屈辱ですが…」
「屈辱って。じゃあ、マダム・レイムのお店に行かない?そろそろ新作が出てるかも」
「行きます!是非!」
マダム・レイムはこの辺で1番人気のスイーツショップだ。坊ちゃんのレシピもこっそり売っているので、クオリティーがとても高い。考えただけで涎が……
旅は思いの外早く終わり、エイル様と私はマダム・レイムに向かうことにした。
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