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1.始まりの日
人気がすっかり無くなった放課後の教室。
残っているのは今日の日直である俺、高嶋瑠衣と高崎昴流の二人きり。
いつもはサボるのが当たり前とばかりに何もしない高崎が、珍しく真面目に日直の仕事である日誌を書いているという不自然な状況に、今日がその日なのだと確信する。
思わず零れ出そうになるため息をそっと飲み込み、俺は黙々と教室の窓とカーテンを閉めて回った。
窓の外では残暑の気配が色濃く残る強烈な日差しが中庭の池の水面に反射し、キラキラと光っている。
その眩しさに思わず軽く目を眇めると、最後の窓とカーテンを閉め、軽く辺りを見回してから、自分の席で日誌を書いている高崎のほうへと歩み寄った。
──どうやら観客はいないらしい。
それを少しだけ残念に思いながら、高崎の前の席の椅子をあえて高崎の方へと向けて座ってやった。
高崎の肩がほんの僅かに揺れる。
おそらく話を切り出すタイミングを窺っているんだろう。それともずっと窺っていたのか。
手元にある日誌を見ると、結構な時間が経ってるにもかかわらず、書くべき内容がほとんど埋められていない状態だった。
こんなお遊びに、高崎のような人間が緊張していたとは思えない。
だから日誌を書くと言ったのはあくまでも俺と二人きりになるための口実で、最初から真面目に仕事をする気はなかったんだろう。
ホントに勝手なヤツ。
だったら一刻も早くこの茶番を終わらせて、いつもどおりにひとりで日直の仕事を片付けたほうが、時間を無駄にせずに済む分だけまだマシだ。
俺は一度ゆっくりと瞬きをすると、内心の苛立ちをキレイに押し込め、かつての自分が当たり前のようにしていた表情を作る。そしてじっと高崎を見つめ、視線が合う瞬間を待った。
俺の視線を感じたのか、それともこのタイミングだと思ったのか。それほど間を置かず、少し色素の薄い茶色の瞳が俺を捉える。普段は余程のことがない限り他人と視線を合わせることのない俺も、この時ばかりは一瞬でも逸らすことなくじっと見つめ続けた。
さっき張り付けた笑顔はそのままに。
──さて、やりますか……。
「……あのさ」
俺の呼びかけに、口を開きかけていた高崎が虚を突かれたような顔をする。
俺は高崎のその反応に、内心ほくそ笑みながらこの時のために用意していた台詞を口にした。
「俺、高崎のことが好きなんだけど……」
途端に高崎の目が大きく見開かれる。
驚きを露わにしたその表情を目にした途端。
──俺の心に歓喜に似た歪んだ衝動が沸き上がった。
残っているのは今日の日直である俺、高嶋瑠衣と高崎昴流の二人きり。
いつもはサボるのが当たり前とばかりに何もしない高崎が、珍しく真面目に日直の仕事である日誌を書いているという不自然な状況に、今日がその日なのだと確信する。
思わず零れ出そうになるため息をそっと飲み込み、俺は黙々と教室の窓とカーテンを閉めて回った。
窓の外では残暑の気配が色濃く残る強烈な日差しが中庭の池の水面に反射し、キラキラと光っている。
その眩しさに思わず軽く目を眇めると、最後の窓とカーテンを閉め、軽く辺りを見回してから、自分の席で日誌を書いている高崎のほうへと歩み寄った。
──どうやら観客はいないらしい。
それを少しだけ残念に思いながら、高崎の前の席の椅子をあえて高崎の方へと向けて座ってやった。
高崎の肩がほんの僅かに揺れる。
おそらく話を切り出すタイミングを窺っているんだろう。それともずっと窺っていたのか。
手元にある日誌を見ると、結構な時間が経ってるにもかかわらず、書くべき内容がほとんど埋められていない状態だった。
こんなお遊びに、高崎のような人間が緊張していたとは思えない。
だから日誌を書くと言ったのはあくまでも俺と二人きりになるための口実で、最初から真面目に仕事をする気はなかったんだろう。
ホントに勝手なヤツ。
だったら一刻も早くこの茶番を終わらせて、いつもどおりにひとりで日直の仕事を片付けたほうが、時間を無駄にせずに済む分だけまだマシだ。
俺は一度ゆっくりと瞬きをすると、内心の苛立ちをキレイに押し込め、かつての自分が当たり前のようにしていた表情を作る。そしてじっと高崎を見つめ、視線が合う瞬間を待った。
俺の視線を感じたのか、それともこのタイミングだと思ったのか。それほど間を置かず、少し色素の薄い茶色の瞳が俺を捉える。普段は余程のことがない限り他人と視線を合わせることのない俺も、この時ばかりは一瞬でも逸らすことなくじっと見つめ続けた。
さっき張り付けた笑顔はそのままに。
──さて、やりますか……。
「……あのさ」
俺の呼びかけに、口を開きかけていた高崎が虚を突かれたような顔をする。
俺は高崎のその反応に、内心ほくそ笑みながらこの時のために用意していた台詞を口にした。
「俺、高崎のことが好きなんだけど……」
途端に高崎の目が大きく見開かれる。
驚きを露わにしたその表情を目にした途端。
──俺の心に歓喜に似た歪んだ衝動が沸き上がった。
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