5 / 53
5.茶番①
しおりを挟む
「おはよー、瑠衣」
「……おはよう」
「今日部活休みだから一緒に帰ろうよ」
「…………」
「じゃあ決まり。どっか行きたいとこ考えておいて」
あれから一週間。高崎は俺と友達からはじめるというあの日の言葉を実践するかのように、やたらと積極的に話し掛けてくるようになった。
出来るだけ最小限の接触で済ませたいと思っている俺は、極力喋らないようにしているのだが、何故かアイツの中では会話が成立してることになっているらしく、俺のところに来てはほぼ一方的に喋って去っていくということを繰り返している。
今も教室に入ってくるなり俺のところに来たと思ったら、勝手に喋って自分の席に向かっていった。
しかも最初の挨拶以外何も言葉を発した覚えがないのに、一緒に帰ることに決まった上、どこかに寄り道する予定になったらしい。
そんな俺達の様子を見たクラスメートの反応は様々だ。
約半年間同じクラスにいて、俺の存在を認識することすらなかった高崎が突然俺の事を名前で呼び、休み時間ごとに俺の席に来ては話をする。
そんな光景を初めて見た時、クラス内は驚きと疑問が混ざり合った妙に居心地の悪い空気に包まれた。
一週間経った今となっては、おおよその事情を察しているのか、野次馬的な好奇心を孕んだ不躾な視線や、あからさまに俺を馬鹿にしたものや、嫌悪感を露わにしたものという多岐に渡る不快な感情に変わってきている。
中でも今回俺をこの罰ゲームのターゲットに指名したと思われる高崎と同じバスケ部の中田は、高崎が俺に近付いてくる度にいい感じにゲスな視線を向けてくるのだ。
全部知ってる俺からしてみれば滑稽にしか思えないが、本人は実に楽しそうなので、今のうちに精々楽しんでおけばいいと思っている。そのうち笑ってる場合じゃなくなるだろうし。
最初俺は高崎のせいで注目を浴びるのが嫌で堪らず、すぐにでも全てを暴露してさっさとこの鬱陶しさから逃れようと思っていた。
でもあの告白の次の日。
いつものように特別棟の階段の踊り場で昼休みを過ごしていたところ、またしても部室棟付近にいたあの連中の話し声を聞いてしまい、気が変わったのだ。
「昴流ってばマジで頑張ってんじゃん。朝から高嶋んとこまでわざわざ話し掛けに行ったりさー」
「そういえば昨日告ったんだっけ? じゃあ今はガンガンアプローチしてる最中ってこと?」
「スゲーよ。今まで誰にも見向きもされなかったボッチが昴流に話し掛けられてキョドってる姿とか、マジうけたわ。あれはオチるのも時間の問題だと思う」
「あーあ。そんなんじゃ罰ゲームどころか、難易度高めにしても結局昴流のひとり勝ち状態じゃん。つまんねー」
「もう消化試合に入ってんだろ。だったらもうちょい楽しむためにハードルあげてこうぜ」
「よし、昴流。こうなったらトコトンいっとけ!」
「お、いいねー。次何賭けるー? ボッチ君の処女喪失に」
「やめろ。おもしろがってんじゃねぇ」
「お、珍しー。昴流が焦ってる。この間は涼しい顔して聞いてたくせに、いざホントに男とヤるとなるとビビってんのかよ。ダッセー」
「俺だったら絶対無理だけど、昴流ならイケるだろ。がんばれー」
「だよなー。いっとけ、いっとけ。俺なんてまたフラれたぞー」
「マジか!? 今度は誰んとこいったんだよ?」
次の話題に移ったところで俺はスマホのボイスレコーダーを停止させた。
咄嗟に思い付いてやったことだが、録音しておいて正解だと思う。
これはちょっとスルー出来ない。
正直俺は、俺が大人しく高崎に抱かれることが確定だと思われていることよりも、何故か高崎が俺に告白したことになっていて、予定どおり一ヶ月以内に俺をオトす計画が実行されているのだと言われていることに驚いた。
俺と友達になるといったのは、すぐにゲームオーバーになったっていう事実を隠し、一ヶ月以内に俺を落とすという賭けがあたかも成立したかのように装うため。
俺だって高崎が純粋に俺と友達になりたいと思っているわけじゃないことくらいわかってたけど、こうして実際どういうつもりだったのかってのを知っちゃうと、不愉快さが桁違いだ。
しかも俺とのセックスを賭けにするとか、どんだけゲスでクズな連中なんだと嫌悪感さえ沸いてくる。
相当頭にきていた俺は、アイツらの茶番に最後まで付き合うことで、今度こそ一番効果的なタイミングでアイツらがダメージを追うような暴露の仕方をしてやろうと心に決めた。
「……おはよう」
「今日部活休みだから一緒に帰ろうよ」
「…………」
「じゃあ決まり。どっか行きたいとこ考えておいて」
あれから一週間。高崎は俺と友達からはじめるというあの日の言葉を実践するかのように、やたらと積極的に話し掛けてくるようになった。
出来るだけ最小限の接触で済ませたいと思っている俺は、極力喋らないようにしているのだが、何故かアイツの中では会話が成立してることになっているらしく、俺のところに来てはほぼ一方的に喋って去っていくということを繰り返している。
今も教室に入ってくるなり俺のところに来たと思ったら、勝手に喋って自分の席に向かっていった。
しかも最初の挨拶以外何も言葉を発した覚えがないのに、一緒に帰ることに決まった上、どこかに寄り道する予定になったらしい。
そんな俺達の様子を見たクラスメートの反応は様々だ。
約半年間同じクラスにいて、俺の存在を認識することすらなかった高崎が突然俺の事を名前で呼び、休み時間ごとに俺の席に来ては話をする。
そんな光景を初めて見た時、クラス内は驚きと疑問が混ざり合った妙に居心地の悪い空気に包まれた。
一週間経った今となっては、おおよその事情を察しているのか、野次馬的な好奇心を孕んだ不躾な視線や、あからさまに俺を馬鹿にしたものや、嫌悪感を露わにしたものという多岐に渡る不快な感情に変わってきている。
中でも今回俺をこの罰ゲームのターゲットに指名したと思われる高崎と同じバスケ部の中田は、高崎が俺に近付いてくる度にいい感じにゲスな視線を向けてくるのだ。
全部知ってる俺からしてみれば滑稽にしか思えないが、本人は実に楽しそうなので、今のうちに精々楽しんでおけばいいと思っている。そのうち笑ってる場合じゃなくなるだろうし。
最初俺は高崎のせいで注目を浴びるのが嫌で堪らず、すぐにでも全てを暴露してさっさとこの鬱陶しさから逃れようと思っていた。
でもあの告白の次の日。
いつものように特別棟の階段の踊り場で昼休みを過ごしていたところ、またしても部室棟付近にいたあの連中の話し声を聞いてしまい、気が変わったのだ。
「昴流ってばマジで頑張ってんじゃん。朝から高嶋んとこまでわざわざ話し掛けに行ったりさー」
「そういえば昨日告ったんだっけ? じゃあ今はガンガンアプローチしてる最中ってこと?」
「スゲーよ。今まで誰にも見向きもされなかったボッチが昴流に話し掛けられてキョドってる姿とか、マジうけたわ。あれはオチるのも時間の問題だと思う」
「あーあ。そんなんじゃ罰ゲームどころか、難易度高めにしても結局昴流のひとり勝ち状態じゃん。つまんねー」
「もう消化試合に入ってんだろ。だったらもうちょい楽しむためにハードルあげてこうぜ」
「よし、昴流。こうなったらトコトンいっとけ!」
「お、いいねー。次何賭けるー? ボッチ君の処女喪失に」
「やめろ。おもしろがってんじゃねぇ」
「お、珍しー。昴流が焦ってる。この間は涼しい顔して聞いてたくせに、いざホントに男とヤるとなるとビビってんのかよ。ダッセー」
「俺だったら絶対無理だけど、昴流ならイケるだろ。がんばれー」
「だよなー。いっとけ、いっとけ。俺なんてまたフラれたぞー」
「マジか!? 今度は誰んとこいったんだよ?」
次の話題に移ったところで俺はスマホのボイスレコーダーを停止させた。
咄嗟に思い付いてやったことだが、録音しておいて正解だと思う。
これはちょっとスルー出来ない。
正直俺は、俺が大人しく高崎に抱かれることが確定だと思われていることよりも、何故か高崎が俺に告白したことになっていて、予定どおり一ヶ月以内に俺をオトす計画が実行されているのだと言われていることに驚いた。
俺と友達になるといったのは、すぐにゲームオーバーになったっていう事実を隠し、一ヶ月以内に俺を落とすという賭けがあたかも成立したかのように装うため。
俺だって高崎が純粋に俺と友達になりたいと思っているわけじゃないことくらいわかってたけど、こうして実際どういうつもりだったのかってのを知っちゃうと、不愉快さが桁違いだ。
しかも俺とのセックスを賭けにするとか、どんだけゲスでクズな連中なんだと嫌悪感さえ沸いてくる。
相当頭にきていた俺は、アイツらの茶番に最後まで付き合うことで、今度こそ一番効果的なタイミングでアイツらがダメージを追うような暴露の仕方をしてやろうと心に決めた。
22
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
幼なじみの友達に突然キスされました
光野凜
BL
『素直になれない、幼なじみの恋』
平凡な俺、浅野蒼にはイケメンでクラスの人気者な幼なじみ、佐伯瑛斗がいる。
家族ぐるみの付き合いのせいか、瑛斗は昔から距離感がおかしくて、何かと蒼にベッタリ。けれど、蒼はそれを“ただの友情”だと思っていた。
ある日、初めての告白に浮かれていると、瑛斗から突然キスされて......!?
「蒼のことが好きだ」
「お前が他の奴と付き合うのは耐えられない」
友達だと思っていた関係が一気に変わり、戸惑いながらも瑛人の一途で甘い想いに少しずつ心が揺れていく。
しかし、素直になれない蒼は最後の一歩が踏み出せずにいた。
そんなとき、ふたりの関係に”あるトラブル”が訪れて......。
じれったくて、思わず応援したくなるふたりのピュアな青春ラブストーリー。
「......蒼も、俺のこと好きになってよ」
「好きだ。好きだよ、蒼」
「俺は、蒼さえいればいい」
どんどん甘く、独占欲を隠さなくなる瑛斗に、戸惑いながらも心が揺れていく。
【一途で独占欲強めな攻め × 不器用で素直になれない受け】
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
両片思いの幼馴染
kouta
BL
密かに恋をしていた幼馴染から自分が嫌われていることを知って距離を取ろうとする受けと受けの突然の変化に気づいて苛々が止まらない攻めの両片思いから始まる物語。
くっついた後も色々とすれ違いながら最終的にはいつもイチャイチャしています。
めちゃくちゃハッピーエンドです。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる