告白ごっこ

みなみ ゆうき

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6.茶番②

そして迎えた放課後。

周囲からの下世話な視線を一心に浴びながら高崎と一緒に下校することになった俺は、うんざりした気持ちで高崎の隣を歩いていた。


「行きたいところ考えた?」


駅に向かう道すがら、高崎が俺に問いかける。

俺の行きたいとこなんて家に帰るという一択だが、さすがに馬鹿正直にそれを言うわけにもいかず、仕方なく少しだけ考える素振りをしてみた。


「どこでもいいよ。瑠衣が行きたいところなら」


そう言って微笑みかける高崎。

その表情は嘘を吐いてまで賭けに勝とうとした挙げ句、あんなゲスい賭けにのり、そういう嗜好でもないくせに俺を抱こうとしている人間にはとても見えない。

いくら賭けに勝ちたいからって、ここまで出来る高崎にある意味感心する。あの賭けのことを知らなかったら、案外良いヤツかもしれないなんて、ちょっと思ったりしてそうだ。

危ない、危ない。


チラリと隣にいる高崎の顔を見ると、「決まった?」と尋ねられ、慌てて首を振る。


一応高崎のことが好きだと言ってる以上、ホントはこういうシチュエーションとかでそれっぽいリアクションしなきゃならないんだろうけど……。

う~ん。出来る気がしない。


とりあえず俺は愛想笑いを浮かべた後、高崎から視線を外し、前だけを見据えて歩くことにした。


普通は好きな人と話せるだけで嬉しいし、名前を呼ばれたら照れ臭いけど温かい気持ちになったりもする。一緒に出掛けようと誘われたら、行き先はどこでもいいと思えるくらいに、ただ一緒にいられるということに喜びを感じる。
隣に並んで歩くのはドキドキするし、チラリと横顔を見た時に目があったり、微笑みかけられたりとかしたら、恥ずかしいけど幸せな気持ちになったりする。そこに甘い言葉が加わわれば、たとえ相手からハッキリした言葉がもらえず曖昧な態度をとられていても、もしかしたらと期待する。

……かつての俺がそうだったように。


高崎はそういうの、よくわかってるんだろうな。どうしたら相手が喜ぶかとか、どうしたら相手の気持ちが自分に向くかとか。

俺の場合は既にコイツの事を好きだって言ってるんだから、こういう無駄なサービスは必要ないと思うんだけど。

……これも自分に気持ちを向かせ続けるためのテクニックだろうか。

こういう細かいことの積み重ねで俺の気持ちをがっちり捕まえとこうって、作戦か?
俺の気持ちが離れたら賭けが成立しない可能性もあるから案外必死なのかもしれない。


実際のところ微塵も高崎のことを好きじゃない俺は、こんなサービスされても、スゲーなコイツとしか思わない。

しかも好感を持てない人間と一緒に行きたい場所とか聞かれても、全然思い付かないんだけど。

さて、どうするかな……。


こういう時は無理に自分の意見を捻りだそうとはせず、相手に任せてみるのも手かもしれない。

そもそも俺は高校入学と同時にこっちに住むことになった人間だから、行きたいところって言われてもよくわかんないし。


「あのさ」

「うん?」

「俺、特に行きたいとことか思い付かないから、高崎の行きたいところに行くっていうのでどう?」


俺の提案に高崎はちょっと困った顔をする。

もしかしてコイツ、俺が考えてると思ってノープランだったんじゃ……。

やっぱり男相手じゃこんなもんか。

なんて思っていたら。


「名前」

「え?」

「名前で呼んで?」

「……は?」

「俺のこと、『高崎』じゃなく『昴流』って呼んで」

「…………」

「友達はみんな昴流って呼んでるし、高崎って呼ぶ人あんまりいないから」


なるほどね。目的はどうあれ、俺に対してはあくまでも友達からっていった言葉を実践しようってわけか。

嘘とはいえ、一応好きな人ってことになっている相手からそう言われれば、表向きは了承しないわけにはいかない。


「…………わかった」


本当はそんな風に呼ぶのは抵抗があるが、これも期間限定のことだと割り切って、高崎が提案した『友達ごっこ』のルールに従うことにした。
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