告白ごっこ

みなみ ゆうき

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13.茶番⑨

俺は最後の仕上げに取りかかるため、ベッドに座って高崎を待っていた。

自分から誘うつもりは毛頭ないが、これに高崎が食い付いてくれれば余計な手間が省ける。
我ながら最低な事をやっている自覚はあるが、あっちも充分最低なのでおあいこだ。

これさえ乗りきれば完全にチェックメイト。

後は自分が勝ったと思い込んでいるアイツに決定的な敗北を突き付けて、ついでに観客達にもネタばらししてやれば俺の完全勝利でゲームオーバー。
もう二度とこんな馬鹿な遊びをしようとは思えないほどに徹底的に逃げ道を塞いでやる。

その瞬間を想像しただけで、初日にアイツに告白した直後に感じた、歓喜に似た歪んだ衝動が沸き上がる。

だいぶヤバい考えになっている自分にちょっと引いた。



シャワーを浴びて部屋に戻ってきた高崎は、ベッドに座っている俺を見て、軽く目を見開きその場に立ち尽くしていた。

予想と違った反応に、俺の目論見がバレてしまったのかと不安になる。


「昴流?」


そんな反応をされる意味がわかりませんって感じで、不思議そうに高崎を見つめると。
高崎は大股で俺ほうへと歩み寄り、俺をベッドに押し倒した。

賭けに勝ちたいと思っている高崎なら、こんないかにもなシチュエーション、見逃すはずはない。それをわかっていて仕掛けたはずなのに、上手くかかってくれたと思う反面、やっぱりそういうことなのかと苦々しい気持ちにさせられる。


「瑠衣……」


名前を呼ばれ、すぐ上にある高崎の顔を見つめる。
俺を見下ろすその瞳に、仄かに情欲の色が灯っている様子が見てとれた。

いかにも嫌々やってるという雰囲気を出されなかっただけ良かったと思うべきか……。

試しにチロリと舌を出し、思わせ振りに唇を濡らしてみたところ、まるでそこを目掛けて食らい付くかのように、今までで一番荒々しいキスを仕掛けられた。

何度も角度を変えては舌で俺の口腔内を蹂躙していく激しいキスに、俺はされるがままになっていく。

キスと同時に高崎の手が俺の身体に触れる。
髪を撫で、耳に触れ、指先が首筋をなぞる感触がいつもよりずっと生々しいもの感じた。


やがてその手が俺のシャツのボタンにかかった時。
俺の身体に異変が起きた。

触れられたところを中心に全身がゾワリと粟立ち始めたのだ。

これは快感などではなく、明らかな不快感。

いくらある程度までのことは覚悟していたとはいえ、身体は正直なものらしい。

一旦それを認識してしまうと、もう誤魔化しは効かなくなってしまい、最早高崎に触れられること自体が耐え難いものに変わっていた。


「やめてッ!」


思わず顔を背けキスから逃れると、自由になった口からは自然と静止を求める言葉が飛び出していた。

しまったと思った時にはもう遅かった。


「瑠衣……」


俺の名前を呼ぶ高崎の声は硬く、おそらくその表情は険しいものになっていると推測される。

実際のところ高崎が今どんな表情をしているのかはわからない。
確認しようともしたいとも思わないまま、俺はギュッと目を閉じた。

そうでないと、泣きたくもないのに涙が勝手に溢れ出てきそうだったから。


高崎はこんな俺を見て、まだ続行しようと思えるほど鬼畜な性格はしてなかったらしく、すぐに俺から離れていった。

気まずい沈黙が部屋の中を支配する。

俺はのろのろと身体を起こし、あえて高崎のほうを見ないようにしながらベッドをおりる。そして床に置いてあったボディバッグを手にとると、そのまま無言で高崎の家を後にした。


雨はまだ止む気配すらみせずに降り続いている。

高崎に触れられたところ全てを今すぐ洗い流したい衝動に駆られた俺は、ちょうどいいとばかりにその中へ身を踊らせた。
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