告白ごっこ

みなみ ゆうき

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15.終わりの日②

一階の窓際に立つと、こっちに顔を向けていたヤツらが俺の姿を認め、ギョッとした顔をした。
俺はそれに構わず、口許に笑みを浮かべながら窓を開ける。

そして。


「随分と面白そうな話してんじゃん。せっかくだから俺も交ぜてよ」


なんて事のないようにそう言い放てば、さっきまで実に楽しそうに話していた連中が、わかりやすく顔を強張らせ沈黙した。その様子は滑稽以外の何物でもない。

ほんの一瞬だけ高崎と目が合うも、すでに俺の中ではここにいる連中と変わらない価値しかない存在だけに、視線をとめることはしなかった。

こっちに背中を向けていた中田が振り返り、俺を睨み付ける。


「盗み聞きかよ。コソコソしやがって、ストーカーみてぇだな? 急に昴流に相手にされなくなったからって付きまとうとか、キモいんだよッ!」


口汚く罵るその顔は、怒りのせいなのか焦りのせいなのか、真っ赤になっていてサルみたいだ。


「そっちこそ聞かれたくなければ、もっとコソコソしたら? そんな大騒ぎしてたら丸聞こえだし。
言っとくけど、俺は別にお前らがいるからここに来たんじゃない。最初から・・・・ここにいただけだ」

「嘘言ってんじゃねぇ!」

「信じるかどうかはお前らの勝手だけど。そうだなぁ……」


俺は少しだけ考える素振りをしてからニッコリと微笑んだ。


「紅白戦で負けたヤツの罰ゲーム、今回のメンバーだったら告白一択なんだっけ?」


その言葉に全員がわかりやすく顔色を変えた。


「で、高崎は女子相手だと罰ゲームにならないから男に告白することになって、ターゲットに選ばれたのが俺。その上、一ヶ月以内に俺を惚れさせたら焼き肉食べ放題。今回のルールはこんな感じ?」


全部知っていてわざとらしく確認するも、誰からも返事は返ってこない。


「あ、そうだ。俺の事抱けるかどうかってのも加わったんだった。そういう事に一生縁がなさそうな俺に、高崎のテクニックを実践するとかなんとか。
俺、ちょっと聞いてみたかったんだけど、それで俺が喜ぶと本気で思ってたのかな、って。──もし本気だったら、その自信はどっからくんの? 普通、そんなことされたら喜ぶどころか、俺のほうが罰ゲームさせられてる状態になるって思わない?」


あからさまに馬鹿にしたような言い方をしてやると、ゲスいくせにプライドだけは高いらしい中田が声を荒げた。


「誰に聞いたか知らねぇけど、昴流に相手にされなくなったからって負け惜しみ言ってんじゃねぇよッ。教室で昴流に話しかけられて嬉しそうにしてたくせにッ! 公園でキスされた時も喜んでただろうが!!
残念だったな! 昴流がしてたことは全部賭けに勝つためにしたことで、お前のことなんてこれっぽっちも好きじゃねぇんだよッ!!」


自分から覗き見してた事を自己申告してきただけじゃなく、賭けのことまで暴露するとか。ホントに馬鹿というか単純というか……。


「だから? 俺も別に高崎の事なんて好きじゃないけど?」

「……は?」


マヌケな声を出した中田だけじゃなく、ここにいる全員が訳がわからないって顔をしている。


「あのさ、普通に考えてこんなゲスい真似してるって知ってて好きになる要素ある? 本音を言えば関わり合いにもなりたくなかったけど、引っ掛かったふりをしたほうが、より効果的な結果を引き寄せられるかなって」

「ふざけんなッ!」

「お前らにとっては遊びの延長で娯楽のつもりでも、こんな風に相手の人格を無視して影で笑い者にするとか、そうなるように仕向けたり、誰かをけしかけたりとか、普通に考えたら許されないことだから。
バスケ部でこういう卑劣な遊びが日常的に行われてるってわかったら、個人の問題だけじゃ済まないってことわかってる? ヘタしたら連帯責任で部活動停止くらいはあるかもよ」

「ハッ、脅しのつもりかよ? 俺らが否定すれば済むだけの話だろ。お前ひとりが言い出したことなんて誰が信じるって言うんだよ」

「まあ、お前らに結託されたら俺の証言だけじゃ弱いかもな」


俺が同意したことで、途端に形勢逆転とばかりに勝ち誇ったような顔をする中田。

単純すぎて笑えてくる。

だからさ。勝ったと思わせたところで効果的な結果を引き寄せるって言ってんじゃん。


「でも言った言わないで揉めるのも面倒だし、ちゃんと証拠を残してあるから大丈夫」


ポケットからスマホを取り出し、外にいる連中に向かって翳してみせる。

全員がその意味を正確に理解したらしく、俺とスマホを見て絶句していた。
ここまで言えば、さすがに中田からも反撃の言葉は返ってこないだろう。

ここでまだ反論するようなら、実際に録音した音声を流して黙らせるつもりだ。


──さて、チェックメイトかな?


「だから言っただろ? 最初からここにいたって」


最後に高崎と視線を合わせてそう言えば、高崎は信じられないものでも見るかのように、大きく目を見開いた。
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