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46.リセット③(瑠衣視点)
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──自分から一方的に俺を切り捨てたくせに今更連絡してくるなんて。
スマホの画面に表示された番号を見た時に思ったのは、先ずそれ。
かつてあの人からのメッセージに一喜一憂していたのが嘘みたいに、嫌悪感しか感じなかった。
SMSを受信した時に表示された文字を見ただけで鳩尾辺りがズンと重くなり、怒りのせいなのか苛立ちのせいなのかスマホを持つ手が勝手に震える。
そんな自分がダサくて情けないって思ったけど、あの人がどの面下げてこんな真似してんだろうって思ったら、僅かに残っていた数少ない良い思い出も全部台無しにされた気がして、ただひたすらに腹が立ったのだ。
俺の気持ちはどうあれ、あの人の望みどおり、『なかった事』にしてやってたのに。
──なんで今更こんな真似すんだよ……。
俺はすぐにメッセージを削除すると、相手の番号を着信拒否に設定してからスマホの電源を切った。
確かに以前はあの人の事が好きだったけど、さすがに現実がわかっちゃった今となっては、同じ気持ちを持ち続けていられるほど、おめでたい性格はしていないつもりだ。
あの人の裏切りを知ったばかりの頃は、ショックが大き過ぎて現実を受け止めきれずに思考が停止しきっていたけれど、こっちに来てからは少しずつ目が覚めたっていうか、ひとりきりで色んな事を考えているうちに現実が見えてきたから尚更。
そうなってまず最初に感じたのは父や姉への罪悪感。
父が後継と見込んでいる姉の婚約者と親密過ぎる関係になっていた俺は、許されない過ちを犯したんだと漸く自覚出来た。
そんな事に気付いたら家族に合わせる顔なんてあるはずがなく、こっちに来てからは一度も実家には戻っていなかったりする。
その二人だけじゃなくて、万が一にもあの人と顔を合わせる可能性を考えたら、俺に帰る場所なんてないも同然だと思うから。
時折心配した母親が訪ねて来ては「長期の休みの時くらい実家に帰ってきたら?」と言ってくれるけど、こんな俺が平気な顔をして実家に行けるはずもなく、その度に「気が向いたら帰るから」とお決まりの台詞で誤魔化してる。
それももう限界が近いだろうな……。
春にはあの人と姉の結婚式がある。
今まで向こうの家族との顔合わせの食事会も、婚約のお披露目パーティーも体調不良を理由に欠席してきた。
あの『学校での出来事』はわりと有名らしく、療養中ってことにしておけば、後継でもなんでもない長男の事を表向き心配はしても、深く事情を詮索しようって人もいないだろうけど。
結婚式に出ないのは、さすがにマズいよな……。
未練なんてものはこの二年程ですっかり無くなってしまったけれど、あの人と顔を合わせて何事もなかった振りをしていられるほど、俺の負った傷は浅くない。
両親からは『結婚式だけはちゃんと出るように。出来れば年末年始に帰ってくるように』って言われてるけど、それすらも返事をしていない状態だ。
高崎達とのアレコレのおかげでっていうか、それにかまけてずっと後回しにしてたけど、そろそろ本気でどうするか考えないといけないところにきてるんだろうな……。
俺の答えは、高崎達の時と同様に、『二度と関わり合いになりたくない』一択だけど。
◇◆◇◆
風が随分と冷たくなって、寒いのが苦手な俺としてはあんまり外には出たくないな、って思い始めた頃。
またしても俺の代わり映えのない日常に波風がたつような出来事が起こった。
お気に入りの場所だったところはあの茶番の決着をつけた時に高崎達に知られてしまっているから使う気になれず。かといって新しく定位置を探すのもなかなか難しくて、俺はなるべく人目につかないところを探して適当に昼食を食べるっていうことを繰り返していた。
大抵の場合は滅多に人がこない特別棟の空き教室を勝手に使ったりしてるんだけど、この日に限って何故かその場所に先客がいたのだ。
「あ、高嶋! 良かったー、今日は当たりだった! 一緒に昼メシ食おうぜ!」
まるで旧知の仲のように親しげに声をかけてくる相手に、教室に入ろうとしていた足が止まる。
そしてその相手を朧げながらに認識した途端、俺は直ぐ様何も聞こえなかった振りをして踵を返した。
すると。
「ちょ、待って待って! 俺の事無視しててもいいからここにいて! 一緒に食べるのが無理なら、俺が一方的に話したら出てくから! 喋りたくないんだったら返事とかしなくてもいいし、ちょびっと頭の片隅にでも留めておいてもらえればそれでいいから!」
相手は慌てて俺に駆け寄り、俺を引き留めようと必死に言い募る。
っていうか、圧がスゴすぎ。
でもって最初は無視していいって言ったのに、段々要求が図々しくなってるんだけど。……ワザとやってんのか?
そもそも顔すら合わせたくないって思ってる俺の気持ちはどうなるわけ?
相手の要求を聞いてやる義理もないので、迷うことなくこのまま無視して立ち去ることに決めた。
しかしその目論見は失敗に終わる。
「ちょおっと! ホントに待って!! もしかして俺が誰かわかんないとか?! あ、そういえば面と向かって話すの初めてだった! 俺、隣のクラスの岡野由貴! バスケ部で昴流の友達なんだけど!!」
逃がさないとばかりに腕を掴まれ、すごい勢いで自己紹介されてしまった。
俺はこんなにアグレッシブに近付いてくる人が今まで周りにいなかったこともあり、ビックリし過ぎたせいでうっかり足を止めてしまい。
まんまと岡野に腕を引かれる形で教室の中に入る羽目になったのだった。
スマホの画面に表示された番号を見た時に思ったのは、先ずそれ。
かつてあの人からのメッセージに一喜一憂していたのが嘘みたいに、嫌悪感しか感じなかった。
SMSを受信した時に表示された文字を見ただけで鳩尾辺りがズンと重くなり、怒りのせいなのか苛立ちのせいなのかスマホを持つ手が勝手に震える。
そんな自分がダサくて情けないって思ったけど、あの人がどの面下げてこんな真似してんだろうって思ったら、僅かに残っていた数少ない良い思い出も全部台無しにされた気がして、ただひたすらに腹が立ったのだ。
俺の気持ちはどうあれ、あの人の望みどおり、『なかった事』にしてやってたのに。
──なんで今更こんな真似すんだよ……。
俺はすぐにメッセージを削除すると、相手の番号を着信拒否に設定してからスマホの電源を切った。
確かに以前はあの人の事が好きだったけど、さすがに現実がわかっちゃった今となっては、同じ気持ちを持ち続けていられるほど、おめでたい性格はしていないつもりだ。
あの人の裏切りを知ったばかりの頃は、ショックが大き過ぎて現実を受け止めきれずに思考が停止しきっていたけれど、こっちに来てからは少しずつ目が覚めたっていうか、ひとりきりで色んな事を考えているうちに現実が見えてきたから尚更。
そうなってまず最初に感じたのは父や姉への罪悪感。
父が後継と見込んでいる姉の婚約者と親密過ぎる関係になっていた俺は、許されない過ちを犯したんだと漸く自覚出来た。
そんな事に気付いたら家族に合わせる顔なんてあるはずがなく、こっちに来てからは一度も実家には戻っていなかったりする。
その二人だけじゃなくて、万が一にもあの人と顔を合わせる可能性を考えたら、俺に帰る場所なんてないも同然だと思うから。
時折心配した母親が訪ねて来ては「長期の休みの時くらい実家に帰ってきたら?」と言ってくれるけど、こんな俺が平気な顔をして実家に行けるはずもなく、その度に「気が向いたら帰るから」とお決まりの台詞で誤魔化してる。
それももう限界が近いだろうな……。
春にはあの人と姉の結婚式がある。
今まで向こうの家族との顔合わせの食事会も、婚約のお披露目パーティーも体調不良を理由に欠席してきた。
あの『学校での出来事』はわりと有名らしく、療養中ってことにしておけば、後継でもなんでもない長男の事を表向き心配はしても、深く事情を詮索しようって人もいないだろうけど。
結婚式に出ないのは、さすがにマズいよな……。
未練なんてものはこの二年程ですっかり無くなってしまったけれど、あの人と顔を合わせて何事もなかった振りをしていられるほど、俺の負った傷は浅くない。
両親からは『結婚式だけはちゃんと出るように。出来れば年末年始に帰ってくるように』って言われてるけど、それすらも返事をしていない状態だ。
高崎達とのアレコレのおかげでっていうか、それにかまけてずっと後回しにしてたけど、そろそろ本気でどうするか考えないといけないところにきてるんだろうな……。
俺の答えは、高崎達の時と同様に、『二度と関わり合いになりたくない』一択だけど。
◇◆◇◆
風が随分と冷たくなって、寒いのが苦手な俺としてはあんまり外には出たくないな、って思い始めた頃。
またしても俺の代わり映えのない日常に波風がたつような出来事が起こった。
お気に入りの場所だったところはあの茶番の決着をつけた時に高崎達に知られてしまっているから使う気になれず。かといって新しく定位置を探すのもなかなか難しくて、俺はなるべく人目につかないところを探して適当に昼食を食べるっていうことを繰り返していた。
大抵の場合は滅多に人がこない特別棟の空き教室を勝手に使ったりしてるんだけど、この日に限って何故かその場所に先客がいたのだ。
「あ、高嶋! 良かったー、今日は当たりだった! 一緒に昼メシ食おうぜ!」
まるで旧知の仲のように親しげに声をかけてくる相手に、教室に入ろうとしていた足が止まる。
そしてその相手を朧げながらに認識した途端、俺は直ぐ様何も聞こえなかった振りをして踵を返した。
すると。
「ちょ、待って待って! 俺の事無視しててもいいからここにいて! 一緒に食べるのが無理なら、俺が一方的に話したら出てくから! 喋りたくないんだったら返事とかしなくてもいいし、ちょびっと頭の片隅にでも留めておいてもらえればそれでいいから!」
相手は慌てて俺に駆け寄り、俺を引き留めようと必死に言い募る。
っていうか、圧がスゴすぎ。
でもって最初は無視していいって言ったのに、段々要求が図々しくなってるんだけど。……ワザとやってんのか?
そもそも顔すら合わせたくないって思ってる俺の気持ちはどうなるわけ?
相手の要求を聞いてやる義理もないので、迷うことなくこのまま無視して立ち去ることに決めた。
しかしその目論見は失敗に終わる。
「ちょおっと! ホントに待って!! もしかして俺が誰かわかんないとか?! あ、そういえば面と向かって話すの初めてだった! 俺、隣のクラスの岡野由貴! バスケ部で昴流の友達なんだけど!!」
逃がさないとばかりに腕を掴まれ、すごい勢いで自己紹介されてしまった。
俺はこんなにアグレッシブに近付いてくる人が今まで周りにいなかったこともあり、ビックリし過ぎたせいでうっかり足を止めてしまい。
まんまと岡野に腕を引かれる形で教室の中に入る羽目になったのだった。
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