告白ごっこ

みなみ ゆうき

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47.リセット④(瑠衣視点)

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この状況に全く納得できないまま教室の中へと入る羽目になった俺は、目の前で気不味そうな顔をしたままいっこうに話を切り出そうとしない岡野に苛立っていた。


勝手に喋るから無視してくれていいって言ったって、ガッツリ腕を掴まれてる状態でどうしろと?

さっさとしろよっていう意味も込めて軽く岡野を睨むと、岡野は慌てた様子で俺の腕を離す。


「ゴメンッ! 無理矢理言うことを聞いてもらおうとかそういう意図はなくて!」

「……じゃあどういうつもりなわけ?」

「ホントにゴメン。高嶋に話を聞いてもらいたくて必死で……」


さっきまでの勢いはどこに行ったのかと思うくらい、みるみるうちに悄気げていく岡野に、俺は軽くため息を吐いた。

もうこの教室から出てってもいいかな? 岡野に話があっても俺にはないし。

そもそもコイツの話をきいてやる義理はない。


「俺に話はないし、あの話に関して何か言おうとしてるんなら聞きたくないから。俺に関わらないでいてくれればそれでいいし」


キッパリ言い切ると、岡野は青い顔で俯いた。


まさか本気であの話を蒸し返そうとしてたわけ?
どんだけお気楽な性格してんだよ。

ムカついてることに変わりはないけど、あんな事があったのに普通に俺と喋ろうとか考えるあたり、どういう神経してんのかとちょっと呆れた。


すると。


「謝れば許されるとは思っていない。けど、高嶋には一度きちんと謝りたかったんだ。──本当にすみませんでした!」


ガバっと勢いよく頭が下げられる。

俺は下げられたままの岡野の後頭部を冷めた目で見つめた。


たぶん岡野って真っ直ぐな性格なんだろうとは思うよ。

こんな風にして、俺に対して面と向かって謝ってくるとか、相当勇気がいることだと思うし。

知らない振りしたっていいのに、ちゃんとケジメをつけようとするところとか、普通だったら好感が持てるところになるのかもしれない。


でもさ。


「それってこっちが望んでない以上、自己満足でしかないってわかってる?」


ちゃんと謝ってきた相手に対して嫌な言い方をしてる自覚はあるけど、俺自身が望んでない謝罪に意味はないということをちゃんとわかってもらいたい。


「……わかってる。これはあくまでも俺の気持ちの問題で、高嶋にとっては迷惑にしかならないことだって。許されたいとか図々しいこと思ってるわけじゃない。でも一回ちゃんと謝っておきたかったんだ。──高嶋を傷つけるような真似して本当にごめん。思い切り罵るなり、殴るなり、好きにしていいから。あ、でも殴るんだったらなるべく見えないところでお願いしますッ!」


そう言うなり今度は床に正座し、床につくほどに頭を下げた。

生まれて初めて目の前で見せられた土下座に、俺のほうが面食らう。

どうしろっていうんだよ……。


「そんな事、普通に考えて出来るわけないだろ。さっさと立って、高崎達のところに戻れよ」


暗にこれ以上話すことはないし、この空間に一緒にいるつもりもないってことを主張すると、岡野は俺の言いたいことが漸く理解出来たのか、一瞬動きを止めた後、のろのろと身体を起こした。

自分の想像とは違った展開に落胆が隠しきれないのか、その表情は暗く冴えない。


なんか俺が一方的にいじめてるみたいで気分悪いんだけど。

なんて思っていたら。


「……あの日から昴流は部活の時以外、俺達と一緒にいることはないよ。だから、昴流が昼休みどこでどうしてるか知らないんだ」


聞きたくもないのに高崎の情報を聞かされ、ただでさえ良くなかった俺の気分は急降下した。

そんな俺の様子に気付いていないらしい岡野は、躊躇いがちに話を続ける。


「……昴流は高嶋にフラれてから、これまでの自分を反省してすごく頑張ってるよ。今までだったら絶対に引き受けるはずのない部長にもなったし、女の子達の誘いは全部断って、色んなことに真面目に取り組んでる」


確かに。今までやったこともなかった日直の仕事もちゃんとやるようになったな。

日直は月に一回くらいのペースで回ってくる。
茶番が終わってから二回ほどあったけど、高崎はこれまでの態度が嘘のように、自分から率先してやるようになった。
代わりに俺はやらなくなったけど、女子達が挙って高崎を手伝うようになったから、文句を言われるどころか感謝されてる。

誘いを断られて、女の子達も必死なのかもしれない。


「昴流は何も言わないけど、それもこれも全部、もう一度高嶋との関係をやり直すためだと思うんだ」


は? 何でそんな事になるんだよ?

俺との関係? やり直す?

そんな風に言えるようなモン、俺達の間にあったっけ?


岡野の言葉は高崎ことを思ってのつもりだろうけど、俺には逆効果だ。


「だから、」
「だから、何? 俺に、高崎の頑張りを認めて許してやれって言いたいわけ?」


段々と腹が立ってきた俺は、岡野の話を全部聞くことなく言葉を被せた。

勝手な言い分にイライラし過ぎてだいぶ強い口調になってるけど、これで俺の心情を察してもらいたい。


友達思いなのは結構だけど、お前らの言い分を俺に押し付けてくるなよ!

頑張れば想いが報われる、相手が自分を見てくれるはず、なんて考えは、夢見がちで独りよがりな考えだってことを、誰よりも俺が一番よく知ってる。

なのにそれを俺に認めろって言うのか……。


「言っとくけど、許す許さないじゃなくて、二度と関わり合いになりたくないっていうのが俺の考えだから。高崎が何をどれだけ頑張ったところで俺には関係ない」


感情を爆発させてしまわないように気をつけながらそれだけ言い切ると、俺は岡野に視線を向けることなくこの場を後にした。


結局、昼休みを過ごす場所も残り時間もなくなった俺は、仕方なく以前使っていたあの場所で手早く昼食を摂り、イライラした気分のまま教室へと戻る羽目になった。


最悪だ……。

そう思ってたのに。




その日の夜。

あの人との結婚を控えて毎日忙しくしてるはずの姉から、突然連絡がきたのだ。
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