告白ごっこ

みなみ ゆうき

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50.リセット⑦(瑠衣視点)

駅までの道すがら。
やたらと女の子達が騒がしくしてるな、とは思っていた。

でも俺には関係ないことだと思ってたし、そんなことよりも、賢人がどういうつもりであちこちに繋ぎをとってまで、急に俺のことを知ろうとしてるのかってことが気になって、正直周りに目が向いていなかった。

だから、住んでる部屋の最寄り駅で電車を降りた時。別の車両から慌てて降りてくるアイツの姿が視界の端に映ったのを見て漸く、この騒がしさの原因が何だったのかってことを知り、一気に脱力した。

それと同時に、さっきの挙動不審ともいえる岡野の態度が、ただ俺への気まずさからくるものじゃなく、この高崎の不可解な行動を知ってたせいもあったのかな、なんてチラリと思ったりもした。


ここにいるのは単なる偶然かもしれない可能性も頭の片隅に残しつつ、改札を出たところで一旦アイツから死角になりそうな位置に移動し、様子を覗う。

明らかに誰かを探してる素振りと、ちょっと焦ってる感じの高崎の姿を視界に捉えながら、その背後にそっと近付いていった。


無視したっていいけど、アイツが探してる相手が俺だった場合、今日やり過ごしても、今度はこの駅で待ち伏せされそうだし。
それに、安達には気にならないって言ったけど、高崎がこんな真似までしてる原因が賢人と話した内容だとしたら、一回話を聞いてみたほうがいいのかな、って。

──後ろ姿でも目立ちまくりの高崎。

その高崎に話しかけたら嫌でも周りの注目を集めそうだから、あんまり気が進まないんだけどさ……。

俺はこっそりため息を吐くと、若干うんざりした気持ちで口を開いた。


「コソコソと人の後をつけるとか、どういうつもりだよ?」


突然後ろから声を掛けられたことに相当驚いたのか、振り返った高崎は、あの日、──俺が最初から高崎達の罰ゲームのことを全部知っていたと暴露した時と同じような表情をしていた。
でもそれは、すぐに切なそうなものへと変わる。

俺はというと。見つめ合うかたちになったことに居心地の悪さを感じつつも、言いたいことがあるなら聞いてやる、くらいの気持ちでジッと高崎の顔を見つめ返してやった。

暫しの沈黙の後。

「……ゴメン」

我に返ったらしい高崎は、何についてなのかよくわからない謝罪をした挙げ句、気不味そうにそっと目を伏せた。

謝るくらいなら、つけ回すような真似すんなよ、とは思ったけど、それを口に出したところで何の解決にもならないし、面倒臭いからやめておく。

それよりも何よりも。
高崎が無駄に目立つせいで、思った以上に周りの注目を集めているのが、すごく不快で。

「……話は後だ。移動しよう」

俺はこの状況から逃れるため、高崎に文句を言うよりもまず、すぐにこの場から離れるという選択をした。


駅の構内を出て、駅前の通りを目的もなく歩いていく。
高崎は何も言わずに俺の後を着いてきてるから、とりあえずはあそこから離れたいっていう俺の意図を汲んでくれたんだろうとは思うけど。

さて、ここからどうしよう……。

あの場で話すのは絶対に無理だと思って歩き出したはいいけれど、よく考えてみれば、目立つコイツと人目を気にせず話が出来そうな場所なんて、全然思いつかない。
部屋に連れて行くのは絶対嫌だし、適当にどっかの店に入ったとしても、視線を集めることには変わりないだろうし。

邪魔が入らず、他人の視線も気にならない上に、話をするのに最適な場所。

パッと思いついたのはカラオケだったけど、生憎俺が住んでる場所は住宅街で、駅前といえどもそれらしき店は見あたらなかった。

わざわざカラオケがある駅まで戻るのも面倒だし、仕方ない……。どっか適当な場所で立ち話でもするか……。

そう考えて、後ろにいる高崎のほうを振り返ったその時。


「瑠衣ッ!」


高崎からではなく、全く別の方向から名前を呼ばれ、俺は反射的にその方向に視線を向けた。

視界に映ったのは、予想外ともいえる人物の姿。

それをハッキリと認識した途端。
俺の身体と思考は、凍り付いたかのように動かなくなった。


「瑠衣……?」


異変を感じ取ったらしい高崎が、俺を呼んだのがわかったが、それに答えるだけの心の余裕はない。
高崎は、立ち尽くしたまま動かなくなった俺の様子にただならぬものを感じ取ったのか、心配そうな表情で俺の顔を覗き込むと、そっと俺の腕を引いた。

目の前には高崎の背中。

強制的に視界が遮られたことで、妙にホッとしてしまった自分に気付いて、思わず苦笑いしてしまう。

でもそのおかげで、停止していた思考が若干の冷静さを伴って動き出した。


まさかこんな風にして、高崎の存在に助けられる日がくるなんてな……。

頭半分以上高い高崎の後ろ頭を見上げながら、ぼんやりとそんな事を思う。

深く息を吐き出すと、少しだけ身体が軽くなった気がした。


さっき安達ってヤツに賢人の話を聞いた時。
物事が動き出す時っていうのは、こういう感じなんだな、なんて思ったりもしたけど、いくら何でも急過ぎる感は否めない。
それでも事態が動き出してる以上、ここでキッチリ決着つけなきゃならないってことなんだろう。

俺は、大丈夫だという意思を込めて高崎の背中に軽く触れると、この状況に対峙するための覚悟を決め、一歩前へと踏み出した。
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