3 / 28
2.終わりと始まり②
青年は俺の姿を見て、酷く驚いた顔をしていた。
しかしすぐに険しい表情になると、俺にむかって何かを言っていた。
おそらく、『お前は誰だ』とか、『ここで何をしているんだ』とか、そういった類のことだったのだろう。
でも、寒さと疲労と不安で身も心も限界に達していた俺は、彼の言葉を理解する前に意識を失っていた。
(なんて酷い夢だろう……)
そう思ったところで目が覚めた。
先ほどまで感じていた、凍てつくような寒さや身体の痛みが無いことに、ほっと胸を撫で下ろす。
ところがそんな風に思っていられたのは、ほんの僅かな間のことで。
視界に映った見慣れない光景に、俺は自分の置かれている状況が、望んだものではないことを悟り、落胆した。
(もう一度眠れば、何かが変わるだろうか……)
そんな風に考えて、目を閉じようとしたその時。
『※※※※※※※※※』
誰かが話しかけてきた気がして、俺は反射的に声のするほうに顔を向けた。
それほど広くない室内には、先ほど意識を失う前に見た青年の姿があった。
状況から察するに、ここはあの青年が出てきたログハウス風の建物の一室で、彼は目の前で倒れた俺をそのままにはしておけず、自分の家に運び入れて介抱してくれた、といったところだろうか。
彼の見た目と醸し出す雰囲気から冷たい印象を受けるものの、悪い人ではなさそうだった。
『※※※※※※※※※?』
再び彼が話しかける。
でも俺には、意味のある言葉として認識できず、困惑した。
何かを聞かれているらしいことはわかるのに、何を言っているのかさっぱりわからなかったのだ。
『※※※※※※※※※。※※※※※※※?』
話しかけているのに俺が何も言わないことをどう思ったのか、青年が怪訝そうな顔をする。
俺は俺で、聞いたこともない言葉が理解できるわけもなく、コミュニケーションすら取れない状況に愕然としていた。
(目を覚ましたら全く知らない場所にいて、季節まで変わっていたことすら現実として受け入れ難いのに、言葉も通じないなんて……)
いっそ夢だと思いたかったが、これが現実ならば、自分の身に何が起こっているのか、まずは状況を把握することが先だと、なんとか気持ちを切り替えた。
『え~と、助けてくださってありがとうございます。──俺の言ってることわかりますか?』
困惑しながらも、とりあえず日本語で話しかけてみる。
すると、青年は驚いたように軽く目を見開いた。
その表情で、言葉はわからなくとも、彼の気持ちがなんとなく理解できた気がした。
まさか言葉が通じないだけではなく、未知の言語で話しかけられるとは思っていなかった、といったところだろう。
俺も同じ状況だから、似たようなものだと思う。
それからは、お互いに身振り手振りでなんとか意思の疎通を図ろうと試みた。
しかし言葉の壁は厚く、この時点でちゃんと伝わったのは、お互いの名前だけだった。
彼は『ラーシュ』という名前で、話してる間ずっと、他の人の気配を感じなかったことから、この家にひとりで住んでいるらしいことが窺えた。
見るからに育ちが良さそうなのに、こんなところで一人暮らしだなんて、もしかしたら訳ありなのかなとも思ったけれど、それを知ったところで俺にはどうしてみようもないので、深く考えないことにした。
それよりも俺には考えなければいけないことが山のようにあった。
まずは、ここがどこで、俺はなぜこの場所にいるのか。
──そしてこの先どうやって生きていくか。
この時点ではもう、夢だとか、実は誰かのドッキリだったのかも、などという甘い考えはすでになく、目の前の現実を受け止める覚悟をするだけで精一杯だった。
だけど頭の片隅では、『もしかしたらこれは、昨今流行りの異世界転移かもしれない』と密かに思っていて。
そういう場合の主人公のお約束のようなものが俺にもあるのかな、なんてぼんやりと思ったりもした。
まさか自分が、単なる『異物』でしかないなんて、想像すらできずに。
しかしすぐに険しい表情になると、俺にむかって何かを言っていた。
おそらく、『お前は誰だ』とか、『ここで何をしているんだ』とか、そういった類のことだったのだろう。
でも、寒さと疲労と不安で身も心も限界に達していた俺は、彼の言葉を理解する前に意識を失っていた。
(なんて酷い夢だろう……)
そう思ったところで目が覚めた。
先ほどまで感じていた、凍てつくような寒さや身体の痛みが無いことに、ほっと胸を撫で下ろす。
ところがそんな風に思っていられたのは、ほんの僅かな間のことで。
視界に映った見慣れない光景に、俺は自分の置かれている状況が、望んだものではないことを悟り、落胆した。
(もう一度眠れば、何かが変わるだろうか……)
そんな風に考えて、目を閉じようとしたその時。
『※※※※※※※※※』
誰かが話しかけてきた気がして、俺は反射的に声のするほうに顔を向けた。
それほど広くない室内には、先ほど意識を失う前に見た青年の姿があった。
状況から察するに、ここはあの青年が出てきたログハウス風の建物の一室で、彼は目の前で倒れた俺をそのままにはしておけず、自分の家に運び入れて介抱してくれた、といったところだろうか。
彼の見た目と醸し出す雰囲気から冷たい印象を受けるものの、悪い人ではなさそうだった。
『※※※※※※※※※?』
再び彼が話しかける。
でも俺には、意味のある言葉として認識できず、困惑した。
何かを聞かれているらしいことはわかるのに、何を言っているのかさっぱりわからなかったのだ。
『※※※※※※※※※。※※※※※※※?』
話しかけているのに俺が何も言わないことをどう思ったのか、青年が怪訝そうな顔をする。
俺は俺で、聞いたこともない言葉が理解できるわけもなく、コミュニケーションすら取れない状況に愕然としていた。
(目を覚ましたら全く知らない場所にいて、季節まで変わっていたことすら現実として受け入れ難いのに、言葉も通じないなんて……)
いっそ夢だと思いたかったが、これが現実ならば、自分の身に何が起こっているのか、まずは状況を把握することが先だと、なんとか気持ちを切り替えた。
『え~と、助けてくださってありがとうございます。──俺の言ってることわかりますか?』
困惑しながらも、とりあえず日本語で話しかけてみる。
すると、青年は驚いたように軽く目を見開いた。
その表情で、言葉はわからなくとも、彼の気持ちがなんとなく理解できた気がした。
まさか言葉が通じないだけではなく、未知の言語で話しかけられるとは思っていなかった、といったところだろう。
俺も同じ状況だから、似たようなものだと思う。
それからは、お互いに身振り手振りでなんとか意思の疎通を図ろうと試みた。
しかし言葉の壁は厚く、この時点でちゃんと伝わったのは、お互いの名前だけだった。
彼は『ラーシュ』という名前で、話してる間ずっと、他の人の気配を感じなかったことから、この家にひとりで住んでいるらしいことが窺えた。
見るからに育ちが良さそうなのに、こんなところで一人暮らしだなんて、もしかしたら訳ありなのかなとも思ったけれど、それを知ったところで俺にはどうしてみようもないので、深く考えないことにした。
それよりも俺には考えなければいけないことが山のようにあった。
まずは、ここがどこで、俺はなぜこの場所にいるのか。
──そしてこの先どうやって生きていくか。
この時点ではもう、夢だとか、実は誰かのドッキリだったのかも、などという甘い考えはすでになく、目の前の現実を受け止める覚悟をするだけで精一杯だった。
だけど頭の片隅では、『もしかしたらこれは、昨今流行りの異世界転移かもしれない』と密かに思っていて。
そういう場合の主人公のお約束のようなものが俺にもあるのかな、なんてぼんやりと思ったりもした。
まさか自分が、単なる『異物』でしかないなんて、想像すらできずに。
あなたにおすすめの小説
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
Rは書こうか悩み中です。本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
雪解けに愛を囁く
ノルねこ
BL
平民のアルベルトに試験で負け続けて伯爵家を廃嫡になったルイス。
しかしその試験結果は歪められたものだった。
実はアルベルトは自分の配偶者と配下を探すため、身分を偽って学園に通っていたこの国の第三王子。自分のせいでルイスが廃嫡になってしまったと後悔するアルベルトは、同級生だったニコラスと共にルイスを探しはじめる。
好きな態度を隠さない王子様×元伯爵令息(現在は酒場の店員)
前・中・後プラスイチャイチャ回の、全4話で終了です。
別作品(俺様BL声優)の登場人物と名前は同じですが別人です! 紛らわしくてすみません。
小説家になろうでも公開中。
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
当て馬に転生した俺、メインヒーローに懐かれすぎて物語が崩壊しています ~最強の騎士様、俺じゃなくてヒロインを追いかけてください!~
たら昆布
BL
処刑される元貴族に転生していたので婚約破棄して雑用係になった話
好きだから手放したら捕まった
鳴海
BL
隣に住む幼馴染である子爵子息とは6才の頃から婚約関係にあった伯爵子息エミリオン。お互いがお互いを大好きで、心から思い合っている二人だったが、ある日、エミリオンは自分たちの婚約が正式に成されておらず、口約束にすぎないものでしかないことを父親に知らされる。そして、身分差を理由に、見せかけだけでしかなかった婚約を完全に解消するよう命じられてしまう。
※異性、同性関わらず婚姻も出産もできる世界観です。
※毎週日曜日の21:00に投稿予約済
本編5話+おまけ1話 全6話
本編最終話とおまけは同時投稿します。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み/数日おきに予定
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!