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7.シリルの生い立ち
俺が生まれ変わったのは、シリルという名の少年だった。
歳は十歳。生まれてすぐに、親に捨てられ、教会に併設されている孤児院に保護された。
発見された当時、身元がわかるようなものは一切身につけておらず、ただ『シリル』と彫られた金属製のタグを右手に握りしめていたことから、シリルと呼ばれるようになったらしい。
前世の記憶が戻る前までの俺は、同じ年頃の子供と比べてもかなり身体が小さい上に、内気で臆病な性格で。しかも、他の人とはあきらかに違った身体的特徴を持っていたせいで、孤児院内ではいつも、揶揄いや蔑みといった感情を向けられ、いじめの標的にされていた。
俺は生まれつき、感情の変化によって瞳の色が変わるという厄介な体質だった。
しかもうっすらとそう見えるなどというレベルではなく、感情の変化でハッキリと色が変わるらしく、同じ孤児院で暮らす子供たちからは気味が悪いと言われたり、怖がられたりしていた。
──おそらく、生みの親が俺を教会の前に置き去りにした理由もこれだろう。
普通と違うことや未知のことを無意識に恐れる感情は、理屈でどうにかなるものじゃない。
ましてや迷信を当たり前のように信じているこの世界では、俺のような存在は不吉なものだったり、呪われたものとして扱われることが圧倒的に多いため、実の親であっても平気で子供を捨てたりするのだ。
前世の記憶が戻るまでは、俺自身も自分のことを呪われた存在だと思っていた。
物心がつく前からずっとそんな風に言われ続けていれば、そういうものだと思い込んでしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
だから何も知らなかった頃の俺は、前髪を長く伸ばすことで瞳を隠し、ずっと下ばかり向いて過ごしてきた。
ずっとそんな状態だったから、当然自分の顔など、まともに見たこともなかったのだが。
「え、これ結構イケてるんじゃ……」
水魔法を使って即席で作った鏡に映る自分の顔を見て、思わずそう口にする。
前髪を手でかきあげ、ずっと隠していた部分をあらためてまじまじと観察すると、自分の容姿が自分で思っていたよりもずっと整っていることに気がついた。
パッチリとした目元に通った鼻筋。栄養状態が良くないせいで痩せこけていて顔色も悪いが、顔立ちは自体は悪くない。
ろくに手入れのされていない伸び放題の黒髪をちゃんと整えて、栄養不足も改善されれば、自分で言うのもなんだけど、かなりの美少年として注目されること間違いなしだろう。
まだ子供だから、これから顔立ちが変わっていく可能性もあるけれど、かなり将来有望だと思う。
「元の色って何色なんだろう」
今は緑に変わっている瞳の色。
どういう感情の時にどんな色になるのかどころか、本当の瞳の色さえわからない。
「うーん。とりあえず、しばらくは様子見かな。その間にこの先どうするか考えないと……」
そう呟いたところで、シリルとして生きてきた知識の中には、これから先の人生において役に立ちそうな有益な情報が、ほとんどないことに気がついた。
シリルはこれまで教会の外に出ることはなく、大勢の中にいてもいつもひとりで、学びの機会すらなかったために、十歳になってもまだ、この世界のことも満足に理解していない状態だった。
自分のこともよくわからないし、ここがどういう世界なのかもさっぱりわからない。
最初から親も兄弟もおらず、他人から異質だと思われるような体質を持って生まれてきた理由を考えたところで無駄だったのだとは思うけど。
でも前世の記憶を持った今の俺には、そのこと全てが『異物』として目印をつけられているように思えて、胸がざわつく。
「厄介な……」
鏡に映る自分の瞳は今、彼の瞳と同じ、薄いブルーグレイに変わっていた。
──どうやらこれが不安を表す色らしい。
元の世界に戻ることも、やり直すこともできないのなら、まっさらな状態で生まれ変わったほうが良かったのに……
まさか魔力の発現と共に記憶を取り戻すことなるなんて、夢にも思わなかった。
引き裂かれそうなほどに痛む胸を押さえながら鏡を消し去ると、俺はその場に立ち尽くしたまま、静かに涙した。
歳は十歳。生まれてすぐに、親に捨てられ、教会に併設されている孤児院に保護された。
発見された当時、身元がわかるようなものは一切身につけておらず、ただ『シリル』と彫られた金属製のタグを右手に握りしめていたことから、シリルと呼ばれるようになったらしい。
前世の記憶が戻る前までの俺は、同じ年頃の子供と比べてもかなり身体が小さい上に、内気で臆病な性格で。しかも、他の人とはあきらかに違った身体的特徴を持っていたせいで、孤児院内ではいつも、揶揄いや蔑みといった感情を向けられ、いじめの標的にされていた。
俺は生まれつき、感情の変化によって瞳の色が変わるという厄介な体質だった。
しかもうっすらとそう見えるなどというレベルではなく、感情の変化でハッキリと色が変わるらしく、同じ孤児院で暮らす子供たちからは気味が悪いと言われたり、怖がられたりしていた。
──おそらく、生みの親が俺を教会の前に置き去りにした理由もこれだろう。
普通と違うことや未知のことを無意識に恐れる感情は、理屈でどうにかなるものじゃない。
ましてや迷信を当たり前のように信じているこの世界では、俺のような存在は不吉なものだったり、呪われたものとして扱われることが圧倒的に多いため、実の親であっても平気で子供を捨てたりするのだ。
前世の記憶が戻るまでは、俺自身も自分のことを呪われた存在だと思っていた。
物心がつく前からずっとそんな風に言われ続けていれば、そういうものだと思い込んでしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
だから何も知らなかった頃の俺は、前髪を長く伸ばすことで瞳を隠し、ずっと下ばかり向いて過ごしてきた。
ずっとそんな状態だったから、当然自分の顔など、まともに見たこともなかったのだが。
「え、これ結構イケてるんじゃ……」
水魔法を使って即席で作った鏡に映る自分の顔を見て、思わずそう口にする。
前髪を手でかきあげ、ずっと隠していた部分をあらためてまじまじと観察すると、自分の容姿が自分で思っていたよりもずっと整っていることに気がついた。
パッチリとした目元に通った鼻筋。栄養状態が良くないせいで痩せこけていて顔色も悪いが、顔立ちは自体は悪くない。
ろくに手入れのされていない伸び放題の黒髪をちゃんと整えて、栄養不足も改善されれば、自分で言うのもなんだけど、かなりの美少年として注目されること間違いなしだろう。
まだ子供だから、これから顔立ちが変わっていく可能性もあるけれど、かなり将来有望だと思う。
「元の色って何色なんだろう」
今は緑に変わっている瞳の色。
どういう感情の時にどんな色になるのかどころか、本当の瞳の色さえわからない。
「うーん。とりあえず、しばらくは様子見かな。その間にこの先どうするか考えないと……」
そう呟いたところで、シリルとして生きてきた知識の中には、これから先の人生において役に立ちそうな有益な情報が、ほとんどないことに気がついた。
シリルはこれまで教会の外に出ることはなく、大勢の中にいてもいつもひとりで、学びの機会すらなかったために、十歳になってもまだ、この世界のことも満足に理解していない状態だった。
自分のこともよくわからないし、ここがどういう世界なのかもさっぱりわからない。
最初から親も兄弟もおらず、他人から異質だと思われるような体質を持って生まれてきた理由を考えたところで無駄だったのだとは思うけど。
でも前世の記憶を持った今の俺には、そのこと全てが『異物』として目印をつけられているように思えて、胸がざわつく。
「厄介な……」
鏡に映る自分の瞳は今、彼の瞳と同じ、薄いブルーグレイに変わっていた。
──どうやらこれが不安を表す色らしい。
元の世界に戻ることも、やり直すこともできないのなら、まっさらな状態で生まれ変わったほうが良かったのに……
まさか魔力の発現と共に記憶を取り戻すことなるなんて、夢にも思わなかった。
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