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11.魔力の発現と思わぬ展開④
俺が案内されたのは、立派な屋敷の中にある一室、──ではなく、屋敷から少し離れた場所にある建物だった。
屋敷の裏手にある林の中に建てられているコテージ風の建物は、鬱蒼と生い茂る木々が目隠しの役目をしているために、林の外側からは一切見えないようになっている。
ここに案内される時に、俺が住む場所は『離れ』だと説明されたのだが、そんな呼び方よりも、この林を管理するための小屋だと言われたほうがしっくりくる感じの建物だった。
(養子っていうのは聞き間違いで、実は就職の斡旋だった……?)
そう思っても仕方ない状況に戸惑っていると、俺をここまで案内してきた執事長らしき人物が建物の扉を開け、俺に入るよう促してきた。
「シリル様にお使いいただくお部屋はこちらになります。どうぞお入りください」
「……はい」
恐る恐る足を踏み入れてみると、中は意外にも居心地の良さそうな雰囲気の部屋だったことに、ある意味驚いた。
間取りは1LDK。バス・トイレ付き。最低限必要な家具は設えてあり、すぐにでも住めるようになっている。
俺を教会まで迎えに来た執事見習いや、さっきの出迎えの時の使用人たちの様子を見た感じでは、冷遇されるんだろうなとは思っていたけど……
これだったらむしろ、孤児院にいた時より良い環境だと言えなくもない。
(……逆に警戒するべきなのか?)
全く状況を把握できずにあれこれ考えていると、入り口のところにいる執事長に声をかけられた。
「それでは、これにて失礼いたします。何かございましたら、そちらにある通信装置でご連絡ください」
そう言うなり扉が閉められたと思ったら、ガチャリという施錠するような音がした。
扉を見ると、内側には鍵どころかノブすらなく、外側からしか開けられない構造になっていることに気付き、愕然とした。
(やっぱりそういうことか……)
この扉のおかげで、自分がどういう状況に置かれることになったのか、嫌でも理解することができた。
──どうやら俺はここに軟禁されるらしい。
これが公爵の指示なのか、執事長の判断なのかはわからないが、俺が歓迎されていないことだけは、はっきりわかる。
そんな目に遭わなければいけない理由を考えたところで、なんの解決にもならないと悟った俺は、とりあえずこの建物の中がどうなっているのか、ひと通り確認してみることにした。
それほど広くもない室内に視線を巡らせると、リビングスペースのテーブルの上に、箱のようなものが置かれているのが目に入った。
ティッシュボックスほどの大きさの革張りの箱の中央部分には、金属製のプッシュボタンのようなものが、横一列に十個並んでいる。
ぱっと見で、これが何かはわからないものの、さっき執事長が言っていた通信装置らしきものが他に見当たらないことから、これがそうかもしれないと当たりをつけた。
しかし、この存在さえ知らなかった俺には、使い方なんて当然わからない。
説明書のようなものもなく(あっても字が読めないのだが)、使い方の説明すらしてもらえない状態で、何かあったらこれで連絡しろとは、なかなか乱暴なことを言うものだ。
前世の電話と似たような使い方をするものなら、ボタンを押せば相手と繋がる可能性は高いけれど、これが本当に通信装置だとしても、あの使用人たちの態度を考えると、まともにこちらの要望を聞いてもらえるとは思えない。
一旦このことは置いておくことにして、他の場所も確認していくと、嫌がらせとも言えないような絶妙なラインで色々と小細工されていることがわかり、あまりの幼稚さに思わず笑ってしまった。
この建物は、キッチンにしろ、バスルームにしろ、魔力なしには使えない仕様になっていて、水を出したり火をおこしたりするためにも魔力が必要となる。
それだけでなく、家の中にあるもののほとんどが、魔力を動力源とするもので揃えられていて、たとえ魔力を持っていたとしても、その使い方を知らない人間には、何もできないようになっていた。
こういうのは抗議したところで、聞かれれば教えるつもりだったと言われるのが予想できるだけに、腹が立つ。
キッチンで食料を確認を確認したところ、そのまま口にできそうなものはなく、ご丁寧にも、小麦粉やイモ類、生肉などといった、ひと手間加えないといけないようなものばかりが取り揃えられていた。
中身は二十八歳の成人男性だから、それほどのダメージは受けなかったものの、ただの十歳の子供なら、不安のあまり泣き出していただろう。
(これ、絶対わざとやってるよな?)
それはわかるけれど、こんな中途半端な真似をして、どういう結果を望んでいるのかがわからない。
泣いて許しを請う姿が見たいのか、俺を衰弱死寸前まで追い詰めたいのか。それとも人並み以上にある魔力を使って、この建物ごと吹き飛ばすくらいの惨事を起こさせたいのか。
もちろん、そんなものに付き合ってやる義理は全くないので、俺は俺で自由にやらせてもらおうと心に決めた。
まずは、こんな真似をした連中の手を借りずに生活するにはどうすればいいのか、それを考えなければならない。
幸いなことに俺には魔力と前世の知識がある。
しかも魔法についても、イメージさえできれば問題なく使えることは、すでに実証済みだ。
この状況に不安がないわけじゃないが、生きるためにはやるしかない。
「──さて、何から始めようかな」
自分を勇気づけるようにそう口にすると、少しだけ自分の未来に希望が持てた気がして、気持ちが軽くなった。
屋敷の裏手にある林の中に建てられているコテージ風の建物は、鬱蒼と生い茂る木々が目隠しの役目をしているために、林の外側からは一切見えないようになっている。
ここに案内される時に、俺が住む場所は『離れ』だと説明されたのだが、そんな呼び方よりも、この林を管理するための小屋だと言われたほうがしっくりくる感じの建物だった。
(養子っていうのは聞き間違いで、実は就職の斡旋だった……?)
そう思っても仕方ない状況に戸惑っていると、俺をここまで案内してきた執事長らしき人物が建物の扉を開け、俺に入るよう促してきた。
「シリル様にお使いいただくお部屋はこちらになります。どうぞお入りください」
「……はい」
恐る恐る足を踏み入れてみると、中は意外にも居心地の良さそうな雰囲気の部屋だったことに、ある意味驚いた。
間取りは1LDK。バス・トイレ付き。最低限必要な家具は設えてあり、すぐにでも住めるようになっている。
俺を教会まで迎えに来た執事見習いや、さっきの出迎えの時の使用人たちの様子を見た感じでは、冷遇されるんだろうなとは思っていたけど……
これだったらむしろ、孤児院にいた時より良い環境だと言えなくもない。
(……逆に警戒するべきなのか?)
全く状況を把握できずにあれこれ考えていると、入り口のところにいる執事長に声をかけられた。
「それでは、これにて失礼いたします。何かございましたら、そちらにある通信装置でご連絡ください」
そう言うなり扉が閉められたと思ったら、ガチャリという施錠するような音がした。
扉を見ると、内側には鍵どころかノブすらなく、外側からしか開けられない構造になっていることに気付き、愕然とした。
(やっぱりそういうことか……)
この扉のおかげで、自分がどういう状況に置かれることになったのか、嫌でも理解することができた。
──どうやら俺はここに軟禁されるらしい。
これが公爵の指示なのか、執事長の判断なのかはわからないが、俺が歓迎されていないことだけは、はっきりわかる。
そんな目に遭わなければいけない理由を考えたところで、なんの解決にもならないと悟った俺は、とりあえずこの建物の中がどうなっているのか、ひと通り確認してみることにした。
それほど広くもない室内に視線を巡らせると、リビングスペースのテーブルの上に、箱のようなものが置かれているのが目に入った。
ティッシュボックスほどの大きさの革張りの箱の中央部分には、金属製のプッシュボタンのようなものが、横一列に十個並んでいる。
ぱっと見で、これが何かはわからないものの、さっき執事長が言っていた通信装置らしきものが他に見当たらないことから、これがそうかもしれないと当たりをつけた。
しかし、この存在さえ知らなかった俺には、使い方なんて当然わからない。
説明書のようなものもなく(あっても字が読めないのだが)、使い方の説明すらしてもらえない状態で、何かあったらこれで連絡しろとは、なかなか乱暴なことを言うものだ。
前世の電話と似たような使い方をするものなら、ボタンを押せば相手と繋がる可能性は高いけれど、これが本当に通信装置だとしても、あの使用人たちの態度を考えると、まともにこちらの要望を聞いてもらえるとは思えない。
一旦このことは置いておくことにして、他の場所も確認していくと、嫌がらせとも言えないような絶妙なラインで色々と小細工されていることがわかり、あまりの幼稚さに思わず笑ってしまった。
この建物は、キッチンにしろ、バスルームにしろ、魔力なしには使えない仕様になっていて、水を出したり火をおこしたりするためにも魔力が必要となる。
それだけでなく、家の中にあるもののほとんどが、魔力を動力源とするもので揃えられていて、たとえ魔力を持っていたとしても、その使い方を知らない人間には、何もできないようになっていた。
こういうのは抗議したところで、聞かれれば教えるつもりだったと言われるのが予想できるだけに、腹が立つ。
キッチンで食料を確認を確認したところ、そのまま口にできそうなものはなく、ご丁寧にも、小麦粉やイモ類、生肉などといった、ひと手間加えないといけないようなものばかりが取り揃えられていた。
中身は二十八歳の成人男性だから、それほどのダメージは受けなかったものの、ただの十歳の子供なら、不安のあまり泣き出していただろう。
(これ、絶対わざとやってるよな?)
それはわかるけれど、こんな中途半端な真似をして、どういう結果を望んでいるのかがわからない。
泣いて許しを請う姿が見たいのか、俺を衰弱死寸前まで追い詰めたいのか。それとも人並み以上にある魔力を使って、この建物ごと吹き飛ばすくらいの惨事を起こさせたいのか。
もちろん、そんなものに付き合ってやる義理は全くないので、俺は俺で自由にやらせてもらおうと心に決めた。
まずは、こんな真似をした連中の手を借りずに生活するにはどうすればいいのか、それを考えなければならない。
幸いなことに俺には魔力と前世の知識がある。
しかも魔法についても、イメージさえできれば問題なく使えることは、すでに実証済みだ。
この状況に不安がないわけじゃないが、生きるためにはやるしかない。
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