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12.魔力の発現と思わぬ展開⑤
「とりあえず衣食住はしっかり確保しつつ、俺の置かれている状況を把握するのが最優先かな」
さっきの執事長らしき人の口ぶりじゃ、俺が呼ばない限り、誰もここに来ることはないのだろう。
さすがに死んだら困るから、時々誰かしらが様子を見に来るにしても、それは今日じゃないと思う。
(人間は、一週間くらいなら水だけでも生きられるって聞いたことがあるけど、水すらない状態なら何日もつんだっけ?)
俺のように栄養状態が悪く、体力もない子供は、普通の人よりも早く限界が訪れるということを、あの連中がわかっているかどうか怪しいものだ。
再びキッチンへと移動する。
煮炊きする設備を確認したところ、俺には使えないと高を括っていたのか、それとも時間がなかったせいか、意外にも下手な小細工などは一切されておらず、魔力さえ通せば、誰にでも使えるようになっていた。
おそらくこれは高級なものだろうし、ただの孤児には使い方が想像できないと思っていたんだろうが、残念ながら現代日本で生まれ育った記憶を持つ俺には、それほど難しいものではなかった。
レンガ造りのかまどに埋め込まれている透明な石に魔力を注ぎ、色が白く変わったら火がつく仕組みで、火加減をどうするのかまでは試してみないとわからないが、とりあえず使えることがわかってほっとした。
ただし、食材はあっても調理器具が一切ないため、直火で炙る以外の調理方法を思いつくことができなかったけれど。
他にも確実に不備があると感じた俺は、とりあえず棚の中にあったものをすべてダイニングテーブルの上に並べてみた。
「最悪。調味料もない……」
焼いただけでも食べられないわけじゃないが、せめて塩くらいは欲しいところだ。
さらに食器類も一切ないことが発覚し、なんだか考えることが面倒に思えてきた俺は、先に他のことをやることにした。
バスルームに向かい、浴槽にお湯を貯める。
こちらは浴槽に井戸の手押しポンプのようなものがついていて、ハンドル部分にある石に魔力を注いだ後、そのハンドルを数回上下させると水が出る仕組みらしい。
そしてこれをお湯にするには、さらに浴槽に魔力を注いで沸かすという手間が必要だと発覚したため、早々にこれらを使うことは諦め、結局魔法でお湯を出した。
「あ~、生き返るー。やっぱり風呂は気持ちいいなぁ……」
孤児院には、バスルームなどといった贅沢なものはなかったため、ゆっくりとお湯に浸かるのは、前世以来だ。
これまでは水で濡らした布で身体を清めるか、たまに水浴びをする程度。
髪は天気の良い日に外で洗うのだが、俺の場合は、誰かにこの目を見られたくなかったために、夜みんな寝静まった後、こっそり外に出て洗っていた。
しかもシャンプーやコンディショナーがあるわけもないので、かまどの灰を水に溶いたもので洗っていたのだが、日本人の記憶が戻った今となっては、信じられないことばかりだ。
お湯だけで身体と髪を洗い、さっぱりしたところで、魔法を使って全身を乾かす。
タオルどころか、身体を洗ったり拭いたりする布もないため、これ以外の方法はない。
ついでに残り湯で、さっきまで着ていた服を洗濯し、魔法で乾かしてから身につけた。
髪がだいぶ伸びていて鬱陶しいと思ったけれど、この家にはハサミやナイフを置いてなかったため、レースのテーブルクロスを少し拝借して紐にし、髪をひと纏めにした。
初心者にもかかわらず、魔法を使いまくってはいるが、髪はさすがに魔法でどうにかしようとは思えず(失敗したら嫌だから)、当分このスタイルでいこうと決めた。
魔法は発想力と応用力と想像力の産物だ。
いくら魔力があっても、使い方がわからなければ宝の持ち腐れ。でもそれさえわかれば、工夫次第で大抵のことは出来る。
この世界での一般的な使い方を知らないけれど、俺は俺のやり方で使えることがわかったから問題ない。
逆に固定観念に縛られてしまったら、その先の発展はなくなってしまう可能性だってあるため、柔軟な発想で色々試してみたいと思っている。
次は何をしようかと考えていると、突然お腹がクゥ~と鳴った。
ただのシリルだった時は、普段からあまり食事に関心はなかったし食も細かったが、記憶が戻ったせいなのか、普通にお腹が減ってるし、何か食べたくて仕方ない。
でも残念なことに、ここにあるのは原材料のみ。
仕方なく魔法で肉を焼くことにしたのだが。
「贅沢は言えないけれど、塩くらい欲しいかも……」
あまりの味気なさに、せめてそれだけでもどうにかならないかと思ってしまう。
その時、ふと妙案が閃いた。
「いっそ外に出てみるか」
外の世界のことなど何も知らないし、先立つものもないけれど、ここにいるよりも確実に、役に立つものが見つかる気がする。
──そうと決まれば善は急げだ。
俺はどんな魔法を使おうかしばらく考えた後、俺の中で、使えたら絶対便利な魔法ランキングの上位にくるものに挑戦することにした。
さっきの執事長らしき人の口ぶりじゃ、俺が呼ばない限り、誰もここに来ることはないのだろう。
さすがに死んだら困るから、時々誰かしらが様子を見に来るにしても、それは今日じゃないと思う。
(人間は、一週間くらいなら水だけでも生きられるって聞いたことがあるけど、水すらない状態なら何日もつんだっけ?)
俺のように栄養状態が悪く、体力もない子供は、普通の人よりも早く限界が訪れるということを、あの連中がわかっているかどうか怪しいものだ。
再びキッチンへと移動する。
煮炊きする設備を確認したところ、俺には使えないと高を括っていたのか、それとも時間がなかったせいか、意外にも下手な小細工などは一切されておらず、魔力さえ通せば、誰にでも使えるようになっていた。
おそらくこれは高級なものだろうし、ただの孤児には使い方が想像できないと思っていたんだろうが、残念ながら現代日本で生まれ育った記憶を持つ俺には、それほど難しいものではなかった。
レンガ造りのかまどに埋め込まれている透明な石に魔力を注ぎ、色が白く変わったら火がつく仕組みで、火加減をどうするのかまでは試してみないとわからないが、とりあえず使えることがわかってほっとした。
ただし、食材はあっても調理器具が一切ないため、直火で炙る以外の調理方法を思いつくことができなかったけれど。
他にも確実に不備があると感じた俺は、とりあえず棚の中にあったものをすべてダイニングテーブルの上に並べてみた。
「最悪。調味料もない……」
焼いただけでも食べられないわけじゃないが、せめて塩くらいは欲しいところだ。
さらに食器類も一切ないことが発覚し、なんだか考えることが面倒に思えてきた俺は、先に他のことをやることにした。
バスルームに向かい、浴槽にお湯を貯める。
こちらは浴槽に井戸の手押しポンプのようなものがついていて、ハンドル部分にある石に魔力を注いだ後、そのハンドルを数回上下させると水が出る仕組みらしい。
そしてこれをお湯にするには、さらに浴槽に魔力を注いで沸かすという手間が必要だと発覚したため、早々にこれらを使うことは諦め、結局魔法でお湯を出した。
「あ~、生き返るー。やっぱり風呂は気持ちいいなぁ……」
孤児院には、バスルームなどといった贅沢なものはなかったため、ゆっくりとお湯に浸かるのは、前世以来だ。
これまでは水で濡らした布で身体を清めるか、たまに水浴びをする程度。
髪は天気の良い日に外で洗うのだが、俺の場合は、誰かにこの目を見られたくなかったために、夜みんな寝静まった後、こっそり外に出て洗っていた。
しかもシャンプーやコンディショナーがあるわけもないので、かまどの灰を水に溶いたもので洗っていたのだが、日本人の記憶が戻った今となっては、信じられないことばかりだ。
お湯だけで身体と髪を洗い、さっぱりしたところで、魔法を使って全身を乾かす。
タオルどころか、身体を洗ったり拭いたりする布もないため、これ以外の方法はない。
ついでに残り湯で、さっきまで着ていた服を洗濯し、魔法で乾かしてから身につけた。
髪がだいぶ伸びていて鬱陶しいと思ったけれど、この家にはハサミやナイフを置いてなかったため、レースのテーブルクロスを少し拝借して紐にし、髪をひと纏めにした。
初心者にもかかわらず、魔法を使いまくってはいるが、髪はさすがに魔法でどうにかしようとは思えず(失敗したら嫌だから)、当分このスタイルでいこうと決めた。
魔法は発想力と応用力と想像力の産物だ。
いくら魔力があっても、使い方がわからなければ宝の持ち腐れ。でもそれさえわかれば、工夫次第で大抵のことは出来る。
この世界での一般的な使い方を知らないけれど、俺は俺のやり方で使えることがわかったから問題ない。
逆に固定観念に縛られてしまったら、その先の発展はなくなってしまう可能性だってあるため、柔軟な発想で色々試してみたいと思っている。
次は何をしようかと考えていると、突然お腹がクゥ~と鳴った。
ただのシリルだった時は、普段からあまり食事に関心はなかったし食も細かったが、記憶が戻ったせいなのか、普通にお腹が減ってるし、何か食べたくて仕方ない。
でも残念なことに、ここにあるのは原材料のみ。
仕方なく魔法で肉を焼くことにしたのだが。
「贅沢は言えないけれど、塩くらい欲しいかも……」
あまりの味気なさに、せめてそれだけでもどうにかならないかと思ってしまう。
その時、ふと妙案が閃いた。
「いっそ外に出てみるか」
外の世界のことなど何も知らないし、先立つものもないけれど、ここにいるよりも確実に、役に立つものが見つかる気がする。
──そうと決まれば善は急げだ。
俺はどんな魔法を使おうかしばらく考えた後、俺の中で、使えたら絶対便利な魔法ランキングの上位にくるものに挑戦することにした。
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