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13.魔力の発現と思わぬ展開⑥
魔法といえば、空を自由に飛んだり、好きな場所へ瞬間移動したり。
ゲームをやっている人なら、攻撃魔法や回復魔法、そして支援魔法のイメージもあると思う。
俺が考えたのもご多分に漏れずその辺りのことで、特に瞬間移動できる転移魔法があれば、ここを抜け出すことも、好きなところへ行くこともできるから便利だな、なんて思っていた。
ところが、前世で子供の頃から触れてきたRPGのイメージが強すぎたのか、それともシリルとしての知識があまりに足りな過ぎるのか。
いざ実践しようと思ったところで、何を基準にして着地点を決めればいいのかわからないという問題にぶつかった。
俺が行ったことのある場所や知っている場所は、孤児院と儀式を受けた教会とワーグナー公爵家の敷地のみ。
どれも公爵領内にあるものの、徒歩で移動できる距離ではなく、孤児院から教会までは決まったルートを巡回する辻馬車に乗り、教会から公爵邸までは公爵家の馬車で移動してきた。
辻馬車ではずっと下を向いていて、公爵家の馬車ではあのとおり、自分の身を守るだけで精一杯で、どちらも外を見る余裕なんてなかったため、領内の様子もわからない。
「目で確認できるところか、正確に場所がイメージできて、距離がある程度わかるところじゃないと失敗する気がする」
まだ魔法を使えるようになったばかりだが、成功する明確なイメージができない時は、魔法が発動しないんだろうな、という感じがしていた。
とりあえず、見える場所から試そうと決め、リビングから寝室へと飛んでみる。
「やった! 成功した!」
ほんの数歩の距離とはいえ、一瞬で移動できたことに変わりない。
俄然自信がついてきた俺は、今度はこの建物の外に移動してみることにした。
結果は大成功。鍵をかけられドアが開けられないようにされていても、全く問題なく外へ出られることがわかった。
それから色々試してみた結果、明確な目的地がわからない長距離移動は無理でも、見える範囲なら難なく転移が可能で、さらに目視できない場所でも、おおよその距離がわかれば移動できそうなことがわかった。
いつでも逃げられるという心の余裕ができたおかげか、前世で読んだ小説や漫画、そしてアニメで使われていた魔法を次々思い出す。
「距離とか周辺の状況は、探索魔法っていったっけ? あの魔法でどうにかなるかも」
うろ覚えの部分は多いが、魔力を薄く広く伸ばしていくことで地形や建物、人の気配などを感知できる仕組みだった気がする。
早速自分なりの解釈で実践してみたものの、これがなかなか難しく、魔力量は多くても天才肌ではないらしい俺には、今の段階で習得することはできなかった。
「もっと良い方法があるような気がするけど……」
そう考えたところでふと、最初に外に出ようと思った理由を思い出す。
「そうだ。俺、塩が欲しいと思ってたんだった」
塩の相場がどれくらいかわからないけど、街に出たところで、一文無しの俺に譲ってくれる人はいないだろう。かといって覚えたての魔法を駆使して、どこかから勝手に拝借してくるのはさすがに気が引ける。
なんとかタダで手に入る手段はないかと考えていると、ふと孤児院の誰かが、少し離れた場所に海があると言っていたことを思い出した。
「海水から塩を作ろう。作れなくても塩味にすることはできるし、魚介類も手に入るかもしれないし。行ってみる価値はある」
問題は海がどこにあるのかわからないことだけだ。
こういう場合、俺の転移魔法だとちょっと使い勝手が悪い。
他の手段はないかと考えてたどり着いたのは、空を飛んで移動するというものだった。
自分の身体を浮かせるイメージで魔力を全身に巡らせる。
成功しそうな感じではあったものの、地面から少し足が浮いたところでバランスが取れなくなり、尻もちをついた。
その後何度も挑戦したが、身体を浮かせて移動するだけなのに、人間は飛べないという固定観念が捨てきれないせいか、全く上手くいかない。
しばらく試したところで、自分が飛ぶよりも、何かに乗って空を飛ぶほうがイメージしやすく、バランスも取りやすいことがわかった。
さっき髪紐として利用するために、魔法を使って少し切らせてもらったレースのテーブルクロスを魔法の絨毯に見立てて浮かせてみたところ、意外にも安定して飛べたのだ。
シーツや毛布を使うことも考えたが、薄くて軽いテーブルクロスは、折りたためばポケットに入るサイズだったため、これを使うことに決めた。
「海がある方向はわからないけど、いくらなんでも空から探せば見つかるだろ。帰りは転移魔法で帰ってくればいいし」
そう考えて、まずは外に出ようと転移魔法を使おうとした瞬間。
急激な吐き気に見舞われ、その場に蹲る。
元々少食な上に、孤児院では質素な食事ばかりだったというのに、この身体では食べ慣れていない肉を急に食べたから、胃がビックリしたらしい。
吐けば楽になるかもしれないと思い、よろよろと立ち上がる。
しかし足に力が入らずに、身体のバランスを崩して転んでしまった。
起き上がろうと思っても身体が全く動かない。
次の瞬間。まるでブレーカーが落ちた時のように、俺の目の前が真っ暗になったと思ったら、完全に意識がブラックアウトした。
ゲームをやっている人なら、攻撃魔法や回復魔法、そして支援魔法のイメージもあると思う。
俺が考えたのもご多分に漏れずその辺りのことで、特に瞬間移動できる転移魔法があれば、ここを抜け出すことも、好きなところへ行くこともできるから便利だな、なんて思っていた。
ところが、前世で子供の頃から触れてきたRPGのイメージが強すぎたのか、それともシリルとしての知識があまりに足りな過ぎるのか。
いざ実践しようと思ったところで、何を基準にして着地点を決めればいいのかわからないという問題にぶつかった。
俺が行ったことのある場所や知っている場所は、孤児院と儀式を受けた教会とワーグナー公爵家の敷地のみ。
どれも公爵領内にあるものの、徒歩で移動できる距離ではなく、孤児院から教会までは決まったルートを巡回する辻馬車に乗り、教会から公爵邸までは公爵家の馬車で移動してきた。
辻馬車ではずっと下を向いていて、公爵家の馬車ではあのとおり、自分の身を守るだけで精一杯で、どちらも外を見る余裕なんてなかったため、領内の様子もわからない。
「目で確認できるところか、正確に場所がイメージできて、距離がある程度わかるところじゃないと失敗する気がする」
まだ魔法を使えるようになったばかりだが、成功する明確なイメージができない時は、魔法が発動しないんだろうな、という感じがしていた。
とりあえず、見える場所から試そうと決め、リビングから寝室へと飛んでみる。
「やった! 成功した!」
ほんの数歩の距離とはいえ、一瞬で移動できたことに変わりない。
俄然自信がついてきた俺は、今度はこの建物の外に移動してみることにした。
結果は大成功。鍵をかけられドアが開けられないようにされていても、全く問題なく外へ出られることがわかった。
それから色々試してみた結果、明確な目的地がわからない長距離移動は無理でも、見える範囲なら難なく転移が可能で、さらに目視できない場所でも、おおよその距離がわかれば移動できそうなことがわかった。
いつでも逃げられるという心の余裕ができたおかげか、前世で読んだ小説や漫画、そしてアニメで使われていた魔法を次々思い出す。
「距離とか周辺の状況は、探索魔法っていったっけ? あの魔法でどうにかなるかも」
うろ覚えの部分は多いが、魔力を薄く広く伸ばしていくことで地形や建物、人の気配などを感知できる仕組みだった気がする。
早速自分なりの解釈で実践してみたものの、これがなかなか難しく、魔力量は多くても天才肌ではないらしい俺には、今の段階で習得することはできなかった。
「もっと良い方法があるような気がするけど……」
そう考えたところでふと、最初に外に出ようと思った理由を思い出す。
「そうだ。俺、塩が欲しいと思ってたんだった」
塩の相場がどれくらいかわからないけど、街に出たところで、一文無しの俺に譲ってくれる人はいないだろう。かといって覚えたての魔法を駆使して、どこかから勝手に拝借してくるのはさすがに気が引ける。
なんとかタダで手に入る手段はないかと考えていると、ふと孤児院の誰かが、少し離れた場所に海があると言っていたことを思い出した。
「海水から塩を作ろう。作れなくても塩味にすることはできるし、魚介類も手に入るかもしれないし。行ってみる価値はある」
問題は海がどこにあるのかわからないことだけだ。
こういう場合、俺の転移魔法だとちょっと使い勝手が悪い。
他の手段はないかと考えてたどり着いたのは、空を飛んで移動するというものだった。
自分の身体を浮かせるイメージで魔力を全身に巡らせる。
成功しそうな感じではあったものの、地面から少し足が浮いたところでバランスが取れなくなり、尻もちをついた。
その後何度も挑戦したが、身体を浮かせて移動するだけなのに、人間は飛べないという固定観念が捨てきれないせいか、全く上手くいかない。
しばらく試したところで、自分が飛ぶよりも、何かに乗って空を飛ぶほうがイメージしやすく、バランスも取りやすいことがわかった。
さっき髪紐として利用するために、魔法を使って少し切らせてもらったレースのテーブルクロスを魔法の絨毯に見立てて浮かせてみたところ、意外にも安定して飛べたのだ。
シーツや毛布を使うことも考えたが、薄くて軽いテーブルクロスは、折りたためばポケットに入るサイズだったため、これを使うことに決めた。
「海がある方向はわからないけど、いくらなんでも空から探せば見つかるだろ。帰りは転移魔法で帰ってくればいいし」
そう考えて、まずは外に出ようと転移魔法を使おうとした瞬間。
急激な吐き気に見舞われ、その場に蹲る。
元々少食な上に、孤児院では質素な食事ばかりだったというのに、この身体では食べ慣れていない肉を急に食べたから、胃がビックリしたらしい。
吐けば楽になるかもしれないと思い、よろよろと立ち上がる。
しかし足に力が入らずに、身体のバランスを崩して転んでしまった。
起き上がろうと思っても身体が全く動かない。
次の瞬間。まるでブレーカーが落ちた時のように、俺の目の前が真っ暗になったと思ったら、完全に意識がブラックアウトした。
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