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15.魔力の発現と思わぬ展開⑧
「フゥ……」
外にいた人物たちの気配がなくなったところで、大きく息を吐いた。
念の為、外の様子を探ってみようと考え、探索魔法とは違ったやり方がないかと思考を巡らせる。
さっきは魔力を薄く伸ばして、エコーのように反射させてマッピングする方法をイメージしたが、そもそもその仕組み自体が俺にはピンときていないままだったためか、全く成功しなかった。
だったら目視に近いかたちで確認できればと考え、ドローンカメラを使って俯瞰で周囲を見るイメージで魔法を展開してみた。
すると、こっちのほうがイメージしやすかったからか、思っていたよりも随分あっさり成功して拍子抜けする。
早速外の様子を確認したところ、建物の周囲には誰もいなかった。
木々の隙間を縫うようにして公爵邸のほうへカメラ代わりの意識を飛ばしていくと、あちらに向かって小走りで進んでいく人影が見えた。
(あれがリアンと従者で間違いなさそうだな)
身なりの良い金色の髪の少年と、公爵家の使用人の制服を身につけた濃紺の髪の青年。
ぱっと見では、前世でいうところの中学生と大学生くらいに見える。
──この世界は日本よりも成長が早い印象があるため、見た目よりも実年齢は確実に下だと思うけれど。
俺は栄養不足のせいで、小学校低学年くらいにしか見えないため、同じ歳だと聞いている公爵令息の成長具合にビックリだ。
(それにしても、『思い上がった真似をするな』か……)
俺からすれば、この仕打ちを受けて思い上がれる人いるか? という感じだけれど、事情を知らない人から見ればサクセスストーリーの第一歩だと思うのかもしれない。
司祭様からは、この国のために俺の魔力が必要となる時がくるから、その日まで公爵家が保護するのだという説明をされたけれど、話のニュアンス的には、将来有望な子供のための慈善事業という感じにはとれなかった。
たぶんこの扱いは保護というより、『青田買い』か『飼い殺し』だろう。
ワーグナー公爵の目的はわからないが、養子とは名ばかりだと思っていたほうがいい。
この性急ともいえるやり方をみる限り、まだ使い道は決まってないけど、他の人に取られたり、勝手にいなくなったりしないよう、先に手に入れておこうといった場当たり的なものを感じる。
だから使用人たちも息子のリアンも公爵の意図がわからず、その不安と不満の矛先を俺に向けてくるのだろう。
ワーグナー公爵家は、五代前の国王の弟が興した家で、この国に三つしかない公爵家の中でも一番格式が高い家柄なのだそうだ。
しかも現国王の信頼も厚く、豊かな領地を持っているため、この国で一番地位も名誉も財力もある貴族らしい。
当主のローワン・ワーグナー公爵はこの国の宰相。妻のオーレリア様は現国王の妹。ひとり息子のリアンは、未来の公爵であると同時に、王位継承権を持っているという話だ。
そんな中に孤児の俺が入るのは客観的に見ても違和感しかないし、『異物』のように映ってしまうのかもしれない。
それにさっきの話を聞いて推察するに、おそらくオーレリア様は身体が弱いためにリアン以外の子供を望めず、それを気に病んでいる可能性が高い。
(だから余計にみんな俺の存在を受け入れられないんだろうな。──まったく、なんてことしてくれるんだよ、公爵様)
俺が公爵家の養子になることに何か意味があるのだろうけど、それによって誰も幸せにならないとわかっているのは、さすがにちょっとつらすぎる。
(公爵様と直接話すチャンスがあれば、疑問は解消されるし、誤解も解けると思うんだけど……)
王都で宰相の地位に就いている人が、孤児なんかのためにわざわざ領地に戻ってくることはないだろう。
だけど、領地にいなかったのにもかかわらず、俺の魔力のことがわかってわりとすぐのタイミングで引き取ると決めたわけだから、王都にいても連絡を取れる手段があるはずだ。
孤児院ではそんな道具は見たことがなかったし、そんなことができるとも思っていなかったが、この世界は俺が考えるよりも文明が発達しているらしい。
そもそもシリルは、内向的で人見知りな上に、言葉の発達が遅れていると思われていたこともあり、まともに何かを教わった覚えがない。
もしかしたら、この国の人間なら知っていて当たり前のことすら知らない可能性もあるため、知識レベルは物心ついたばかりの子供と変わりないかもしれないのだ。
「あれ? そういえば……」
そこでふとあることに気付き、俺は自分のことながら、あまりの無知ぶりに絶句した。
「…………俺、この国の名前、知らないかも……」
外にいた人物たちの気配がなくなったところで、大きく息を吐いた。
念の為、外の様子を探ってみようと考え、探索魔法とは違ったやり方がないかと思考を巡らせる。
さっきは魔力を薄く伸ばして、エコーのように反射させてマッピングする方法をイメージしたが、そもそもその仕組み自体が俺にはピンときていないままだったためか、全く成功しなかった。
だったら目視に近いかたちで確認できればと考え、ドローンカメラを使って俯瞰で周囲を見るイメージで魔法を展開してみた。
すると、こっちのほうがイメージしやすかったからか、思っていたよりも随分あっさり成功して拍子抜けする。
早速外の様子を確認したところ、建物の周囲には誰もいなかった。
木々の隙間を縫うようにして公爵邸のほうへカメラ代わりの意識を飛ばしていくと、あちらに向かって小走りで進んでいく人影が見えた。
(あれがリアンと従者で間違いなさそうだな)
身なりの良い金色の髪の少年と、公爵家の使用人の制服を身につけた濃紺の髪の青年。
ぱっと見では、前世でいうところの中学生と大学生くらいに見える。
──この世界は日本よりも成長が早い印象があるため、見た目よりも実年齢は確実に下だと思うけれど。
俺は栄養不足のせいで、小学校低学年くらいにしか見えないため、同じ歳だと聞いている公爵令息の成長具合にビックリだ。
(それにしても、『思い上がった真似をするな』か……)
俺からすれば、この仕打ちを受けて思い上がれる人いるか? という感じだけれど、事情を知らない人から見ればサクセスストーリーの第一歩だと思うのかもしれない。
司祭様からは、この国のために俺の魔力が必要となる時がくるから、その日まで公爵家が保護するのだという説明をされたけれど、話のニュアンス的には、将来有望な子供のための慈善事業という感じにはとれなかった。
たぶんこの扱いは保護というより、『青田買い』か『飼い殺し』だろう。
ワーグナー公爵の目的はわからないが、養子とは名ばかりだと思っていたほうがいい。
この性急ともいえるやり方をみる限り、まだ使い道は決まってないけど、他の人に取られたり、勝手にいなくなったりしないよう、先に手に入れておこうといった場当たり的なものを感じる。
だから使用人たちも息子のリアンも公爵の意図がわからず、その不安と不満の矛先を俺に向けてくるのだろう。
ワーグナー公爵家は、五代前の国王の弟が興した家で、この国に三つしかない公爵家の中でも一番格式が高い家柄なのだそうだ。
しかも現国王の信頼も厚く、豊かな領地を持っているため、この国で一番地位も名誉も財力もある貴族らしい。
当主のローワン・ワーグナー公爵はこの国の宰相。妻のオーレリア様は現国王の妹。ひとり息子のリアンは、未来の公爵であると同時に、王位継承権を持っているという話だ。
そんな中に孤児の俺が入るのは客観的に見ても違和感しかないし、『異物』のように映ってしまうのかもしれない。
それにさっきの話を聞いて推察するに、おそらくオーレリア様は身体が弱いためにリアン以外の子供を望めず、それを気に病んでいる可能性が高い。
(だから余計にみんな俺の存在を受け入れられないんだろうな。──まったく、なんてことしてくれるんだよ、公爵様)
俺が公爵家の養子になることに何か意味があるのだろうけど、それによって誰も幸せにならないとわかっているのは、さすがにちょっとつらすぎる。
(公爵様と直接話すチャンスがあれば、疑問は解消されるし、誤解も解けると思うんだけど……)
王都で宰相の地位に就いている人が、孤児なんかのためにわざわざ領地に戻ってくることはないだろう。
だけど、領地にいなかったのにもかかわらず、俺の魔力のことがわかってわりとすぐのタイミングで引き取ると決めたわけだから、王都にいても連絡を取れる手段があるはずだ。
孤児院ではそんな道具は見たことがなかったし、そんなことができるとも思っていなかったが、この世界は俺が考えるよりも文明が発達しているらしい。
そもそもシリルは、内向的で人見知りな上に、言葉の発達が遅れていると思われていたこともあり、まともに何かを教わった覚えがない。
もしかしたら、この国の人間なら知っていて当たり前のことすら知らない可能性もあるため、知識レベルは物心ついたばかりの子供と変わりないかもしれないのだ。
「あれ? そういえば……」
そこでふとあることに気付き、俺は自分のことながら、あまりの無知ぶりに絶句した。
「…………俺、この国の名前、知らないかも……」
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