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本編
1.始まり
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「あぁ…ッ、そこ、ぁん…ッ…、もっと……!」
「可愛いよ、コウキ。今日もいやらしい……。本当に素晴らしい身体だ。すぐにイキそうだよ……」
「早くぅ、……全部ちょうだい!!」
「う…ッ…、イクよ!」
「あぁ…んッ、イッちゃう…!!」
所謂バックの体勢でガンガン突かれながら、上体を捻り潤んだ瞳を向け懇願する素振りを見せると、その男は俺の中で呆気なく果ててくれた。
ハッキリ言ってチョロい。
俺は心の中である魔法の呪文を唱えると、白い液体をシーツに垂らし、自分もイッた振りをして仰け反った。
◇◆◇◆
「じゃあ、また来るからね。イイコで待ってるんだよ」
「お待ちしております」
毎度ありー!!心の中でそう呟きながら、目一杯甘えたような表情を作り客を見送る。
職業、王都でナンバーワンの高級男娼。
その実態は突然異世界転移してきた元現役ナンバーワンホスト。
それが俺、宇佐美高貴だ。
今から遡ること三ヶ月前。
国内有数の歓楽街でホストをしていた俺は普通に働いていたら絶対に手に出来ないような大金を一晩で稼ぐ人気ナンバーワンホストだった。
そこまで上り詰めるために、普通の接客営業の他に店から禁じられている枕営業もガンガンこなし、太客を掴んできた。
そんな俺の24回目の誕生日を祝うための誕生日営業で過去最高の売り上げを記録した翌朝。
ほろ酔い気分で俺の努力の結晶である超高級タワーマンションの部屋に帰ると、そこはもう別世界だった。
かなりレトロな街並みに、ファンタジー映画で見るような服装で行き交う人々。そして当たり前のように馬が闊歩するここが俺の住んでいるところじゃないことくらいは察したが、だからといってその現実をすぐに受け止められるほど俺は度量の大きい人間じゃない。
何度か瞬きをした後。後ろを振り返り、たった今通ったばかりの玄関扉を確認すると、そこはもう見慣れない石壁に変わっていた。
何で!?
何故か全く知らない場所にいることにパニックになりかけてた俺を助けてくれたのは、役所のお兄さん。
ただし、役所といっても区役所とかそういう馴染みのあるところではなく、俺の全く知らない世界の役所だったわけで。
そのお兄さんの話によると。
この世界では突然異世界から人間がやってくるということが年に数件あるそうで、その対応をしてくれる部署もちゃんと各地に存在する。
今回は王都と呼ばれるこの街にその兆候が現れたという報告を受けて、わざわざこの近くで俺の到着を待っていたらしい。
お兄さんは非常に手慣れた様子で、この世界とこの国の概要と今の俺の状態を説明をすると、俺を役所に連れて行き、酔いが冷めるのを待ってから、手続きが必要な諸々をひとつひとつ懇切丁寧に説明してくれたのだ。
聞き終わった俺はというと。
一言で言えば、『ウソでしょ!?』って感じ。
勝ち組のお約束ともいえるタワーマンションの高層階の俺の部屋は!? 買ったばっかのイタリア車は!? 俺の高級時計コレクションは!? 俺の血と汗と涙の結晶の預貯金は!?
何よりも大事にしていた俺の成功の証の数々と一瞬にしてお別れする羽目になった俺の絶望はかなりのものだった。
しかし、そんな俺に構うことなく役所のお兄さんは淡々と説明と手続きを進めていく。
そして最終的に、この国の国民として生きることに同意する書類に俺のサインを求めてきたのだが……。
二度と元の世界に戻れない以上、これからこの世界で生きていかなければならないことはわかる。
その為にはこっちでの戸籍的なものが必要なのもわかるよ。
でもそれを登録した瞬間から、普通の国民と同じように扱われるってさ、ちょっと納得いかないっていうか、正直不安しかねぇんだけど!
いきなり異世界から飛ばされてきて、すぐに受け入れてもらえるって、それは一見いいことのようにも思えるけど、こっちの常識とか、そういう生きてく上で必要な知識が一切わからないこっちにしてみれば、『え?もう? もうちょっとチュートリアル的なものないの?』って感じになるわけ。
特別扱い一切なしかよ。なんて思ってたら。
当然の事ながら住む家も先立つものもないため、その辺りの斡旋制度は充実してた。
仕事の斡旋が終わり次第、その職業にあった住居も斡旋してくれるそうで……。
……でもそれって要するに、この国の国民として認めて家も当分の生活費も面倒みてあげるから、早いところ自活して税金納めてね、ってことに他ならない気がするのは俺だけか?
ここは素直に親切な世界だと思っておいたほうがいいんだろうか……?
これ、もし子供や女の子だったら酷だよな、と思っていたら。
子供だったら国が責任を持って教育を施し、社会に出れるようになるまで面倒見てくれるし、女の子だったら国が手厚く保護してくれ、本人が望めば結婚相手まで紹介してくれるそうだ。
しかもほとんどが玉の輿コース。
何ソレ。羨まし過ぎ。
なんか男だけ扱い酷くね?
でもそうする理由を聞けば納得。
なんとこの世界には全人口の三割程度しか女性がおらず、年々人口が減少している今、子供を産める女性は国から保護の対象となっているんだそうだ。
だから言い方は悪いが血脈を途絶えさせてはいけない家から順に女性があてがわれていくって寸法だから、そりゃ玉の輿にもなるよな。
その代わりそういった斡旋を受ける女性は子供を五人以上産むことが義務になっており、そういった生活を望まない女性は、一般男性と同じく自分で生計を立てて、結婚相手も自分で探すという道もある。
それでも基本女性は結婚以外の目的でのお付き合い禁止。
婚前交渉なんて以ての他で。
女性の意思を無視して男側から無理矢理関係を持とうとすれば最悪死罪。
賛否両論はあると思うが、この世界じゃこういう手段で女性は大事に守られている。
ちなみに結婚は男同士でも出来る、むしろ平民はそれが一般的。
王候貴族であっても正妻以外のポジションにいるのは男。
恋人も愛人もセフレもみんな男だ。
世界が変われば色々変わるもんなんだな~。
男相手にどうこうって今まで考えたことなかったけど、これからここで生きていかなきゃならない以上、これから先の俺の恋人も結婚相手もセックスの相手も全部が男になったということだ。
……なんかあまりにも今までの俺の生活と違いすぎて笑えてくるんだけど。
「それでは次にお仕事の斡旋に移らせていただきます。何かご希望の職種はございますか?」
緩慢な動作で同意書にサインをした俺に、役所のお兄さんは少しだけホッとしたような表情で次の段階へと移行した。
いきなり他の世界から来た人間を相手にするのだ。少なからず不安もあったのだろうとは思うけどさ。
──言っとくけど、俺はもっと不安だから!
幸いどういう仕組みか知らんけど、言葉がすんなり通じることだけが救いだ。
「そうッスねぇ……」
俺は高校卒業後、家出同然で上京し、すぐに夜の世界に入った。
学もなく、特技らしい特技もなく、資格も持ってない。
あるのはそこそこの若さと自分の身体だけ。
こんな世界でホストが天職だって言われ続けた俺に出来る仕事って何よ?
っていうか前と同じくらい稼げる仕事じゃないとやる気しないんですけどー。
「俺、自分トコの世界じゃ結構リッチなほうだったんで、出来たら生活水準変えたくないんスよね。手っ取り早く稼げる職業ってないッスか?」
若干投げやりにそう聞いてみると、意外な職業を斡旋された。
「手っ取り早く、ですか……。──そうですねぇ。では、冒険者はいかがですか? 魔力適正もあるようですし、向いてると思いますよ。それだったら一攫千金も夢じゃないですし」
この世界。人間の居住区を囲むようにして張り巡らされている高い塀の外には魔物が跋扈してるんだと。
だから魔物を退治して報償金を獲得することで生計を立てる冒険者という職業が存在する。
もちろんそれだけじゃ魔物の脅威は無くならないから、国が持ってる軍隊的なものが魔物の討伐をすることもあるらしいけどな。
「命の危険があるような職業はちょっと」
俺の人生の最終目標はあくまでも長生きだ。
せっかくガツガツ稼いでも、ゆったりと過ごす時間が短かったら意味がない。
「ちなみに、コウキさんが今までされていたお仕事は何ですか?」
「ホストです」
「ホスト?」
あ、そっかこっちにはそんな職業ないよなぁ。
「えーと、お店で女性を接待してお金をもらう職業って言えばわかります?」
「ああ、なるほど。女性限定の社交場で接客業をされていたのですね。接客業で稼げる職業となるとここでは男娼というものがありますが、あそこもなかなか厳しい世界でしてね。そこまで稼げるのはほんの一握りの人間だけ。年齢を重ねていってからも出来る職業じゃないのでそう長くは続けられませんし、何よりもやる気があっても、向いてるとは限りませんから」
なるほどな。数少ない女性が風俗業に従事することができない以上、そういう店の店員はみんな男になるわけか。
そんでもって、そこでナンバーワンになれば相当稼げるってことなんだな。
このお兄さんの口振りじゃ、人間の入れ替わりも結構早そうだし、俺にも充分チャンスはあるとみた。
それに何より、三十まではがむしゃらに稼いで、欲しいもの全部手に入れたら、貯めた金でのんびり暮らすってのが俺の人生設計だったので、ここに来たからといってそれを諦める気は更々ない。
大体、今までやってたホストにしても、最初の動機云々はともかく、結局向いてたから続けてこれたし、ナンバーワンにもなれた。
男娼だって口で言うほど簡単な商売だとは思ってないし、ずっと続けられる仕事じゃないこともわかってるけど、ワンチャンあるならそれに賭けるのも悪くない。
身体ひとつで稼げて、大金を手にするチャンスがある仕事があるってんなら、やってやろうじゃん。
俺にとって女のアソコを舐めて枕営業するのも、男のアレをしゃぶって金稼ぐのもそう大差ないことだしな。
「わかりました。俺、男娼になります」
俺の決断に、今までわりと事務的な態度を貫いてきた役所のお兄さんの表情があからさまに驚いたものになる。
あれ……? もしかして冗談のつもりだった、とか?
──いやいや。でも提示した以上は絶対紹介してもらうからな。
そう考え、お兄さんをじっと見据えると。
「……まあ、あなたの場合は借金のカタに売られるわけではないので、ダメだと思ったらすぐに辞めても問題ないでしょう。その際はまたこちらにおいでいただければあなたの適正にあった職業を紹介するように致しますので、お気軽にご相談下さい」
本当は再就職の斡旋は出来ないんですけどね、と言いながら、お兄さんはこの国で一番の高級男娼館に紹介状を書いてくれた。
そんなこんなで俺は元の世界の生活水準を取り戻し、自分の決めた人生設計を遂行するために奮闘する日々が始まったのだ。
「可愛いよ、コウキ。今日もいやらしい……。本当に素晴らしい身体だ。すぐにイキそうだよ……」
「早くぅ、……全部ちょうだい!!」
「う…ッ…、イクよ!」
「あぁ…んッ、イッちゃう…!!」
所謂バックの体勢でガンガン突かれながら、上体を捻り潤んだ瞳を向け懇願する素振りを見せると、その男は俺の中で呆気なく果ててくれた。
ハッキリ言ってチョロい。
俺は心の中である魔法の呪文を唱えると、白い液体をシーツに垂らし、自分もイッた振りをして仰け反った。
◇◆◇◆
「じゃあ、また来るからね。イイコで待ってるんだよ」
「お待ちしております」
毎度ありー!!心の中でそう呟きながら、目一杯甘えたような表情を作り客を見送る。
職業、王都でナンバーワンの高級男娼。
その実態は突然異世界転移してきた元現役ナンバーワンホスト。
それが俺、宇佐美高貴だ。
今から遡ること三ヶ月前。
国内有数の歓楽街でホストをしていた俺は普通に働いていたら絶対に手に出来ないような大金を一晩で稼ぐ人気ナンバーワンホストだった。
そこまで上り詰めるために、普通の接客営業の他に店から禁じられている枕営業もガンガンこなし、太客を掴んできた。
そんな俺の24回目の誕生日を祝うための誕生日営業で過去最高の売り上げを記録した翌朝。
ほろ酔い気分で俺の努力の結晶である超高級タワーマンションの部屋に帰ると、そこはもう別世界だった。
かなりレトロな街並みに、ファンタジー映画で見るような服装で行き交う人々。そして当たり前のように馬が闊歩するここが俺の住んでいるところじゃないことくらいは察したが、だからといってその現実をすぐに受け止められるほど俺は度量の大きい人間じゃない。
何度か瞬きをした後。後ろを振り返り、たった今通ったばかりの玄関扉を確認すると、そこはもう見慣れない石壁に変わっていた。
何で!?
何故か全く知らない場所にいることにパニックになりかけてた俺を助けてくれたのは、役所のお兄さん。
ただし、役所といっても区役所とかそういう馴染みのあるところではなく、俺の全く知らない世界の役所だったわけで。
そのお兄さんの話によると。
この世界では突然異世界から人間がやってくるということが年に数件あるそうで、その対応をしてくれる部署もちゃんと各地に存在する。
今回は王都と呼ばれるこの街にその兆候が現れたという報告を受けて、わざわざこの近くで俺の到着を待っていたらしい。
お兄さんは非常に手慣れた様子で、この世界とこの国の概要と今の俺の状態を説明をすると、俺を役所に連れて行き、酔いが冷めるのを待ってから、手続きが必要な諸々をひとつひとつ懇切丁寧に説明してくれたのだ。
聞き終わった俺はというと。
一言で言えば、『ウソでしょ!?』って感じ。
勝ち組のお約束ともいえるタワーマンションの高層階の俺の部屋は!? 買ったばっかのイタリア車は!? 俺の高級時計コレクションは!? 俺の血と汗と涙の結晶の預貯金は!?
何よりも大事にしていた俺の成功の証の数々と一瞬にしてお別れする羽目になった俺の絶望はかなりのものだった。
しかし、そんな俺に構うことなく役所のお兄さんは淡々と説明と手続きを進めていく。
そして最終的に、この国の国民として生きることに同意する書類に俺のサインを求めてきたのだが……。
二度と元の世界に戻れない以上、これからこの世界で生きていかなければならないことはわかる。
その為にはこっちでの戸籍的なものが必要なのもわかるよ。
でもそれを登録した瞬間から、普通の国民と同じように扱われるってさ、ちょっと納得いかないっていうか、正直不安しかねぇんだけど!
いきなり異世界から飛ばされてきて、すぐに受け入れてもらえるって、それは一見いいことのようにも思えるけど、こっちの常識とか、そういう生きてく上で必要な知識が一切わからないこっちにしてみれば、『え?もう? もうちょっとチュートリアル的なものないの?』って感じになるわけ。
特別扱い一切なしかよ。なんて思ってたら。
当然の事ながら住む家も先立つものもないため、その辺りの斡旋制度は充実してた。
仕事の斡旋が終わり次第、その職業にあった住居も斡旋してくれるそうで……。
……でもそれって要するに、この国の国民として認めて家も当分の生活費も面倒みてあげるから、早いところ自活して税金納めてね、ってことに他ならない気がするのは俺だけか?
ここは素直に親切な世界だと思っておいたほうがいいんだろうか……?
これ、もし子供や女の子だったら酷だよな、と思っていたら。
子供だったら国が責任を持って教育を施し、社会に出れるようになるまで面倒見てくれるし、女の子だったら国が手厚く保護してくれ、本人が望めば結婚相手まで紹介してくれるそうだ。
しかもほとんどが玉の輿コース。
何ソレ。羨まし過ぎ。
なんか男だけ扱い酷くね?
でもそうする理由を聞けば納得。
なんとこの世界には全人口の三割程度しか女性がおらず、年々人口が減少している今、子供を産める女性は国から保護の対象となっているんだそうだ。
だから言い方は悪いが血脈を途絶えさせてはいけない家から順に女性があてがわれていくって寸法だから、そりゃ玉の輿にもなるよな。
その代わりそういった斡旋を受ける女性は子供を五人以上産むことが義務になっており、そういった生活を望まない女性は、一般男性と同じく自分で生計を立てて、結婚相手も自分で探すという道もある。
それでも基本女性は結婚以外の目的でのお付き合い禁止。
婚前交渉なんて以ての他で。
女性の意思を無視して男側から無理矢理関係を持とうとすれば最悪死罪。
賛否両論はあると思うが、この世界じゃこういう手段で女性は大事に守られている。
ちなみに結婚は男同士でも出来る、むしろ平民はそれが一般的。
王候貴族であっても正妻以外のポジションにいるのは男。
恋人も愛人もセフレもみんな男だ。
世界が変われば色々変わるもんなんだな~。
男相手にどうこうって今まで考えたことなかったけど、これからここで生きていかなきゃならない以上、これから先の俺の恋人も結婚相手もセックスの相手も全部が男になったということだ。
……なんかあまりにも今までの俺の生活と違いすぎて笑えてくるんだけど。
「それでは次にお仕事の斡旋に移らせていただきます。何かご希望の職種はございますか?」
緩慢な動作で同意書にサインをした俺に、役所のお兄さんは少しだけホッとしたような表情で次の段階へと移行した。
いきなり他の世界から来た人間を相手にするのだ。少なからず不安もあったのだろうとは思うけどさ。
──言っとくけど、俺はもっと不安だから!
幸いどういう仕組みか知らんけど、言葉がすんなり通じることだけが救いだ。
「そうッスねぇ……」
俺は高校卒業後、家出同然で上京し、すぐに夜の世界に入った。
学もなく、特技らしい特技もなく、資格も持ってない。
あるのはそこそこの若さと自分の身体だけ。
こんな世界でホストが天職だって言われ続けた俺に出来る仕事って何よ?
っていうか前と同じくらい稼げる仕事じゃないとやる気しないんですけどー。
「俺、自分トコの世界じゃ結構リッチなほうだったんで、出来たら生活水準変えたくないんスよね。手っ取り早く稼げる職業ってないッスか?」
若干投げやりにそう聞いてみると、意外な職業を斡旋された。
「手っ取り早く、ですか……。──そうですねぇ。では、冒険者はいかがですか? 魔力適正もあるようですし、向いてると思いますよ。それだったら一攫千金も夢じゃないですし」
この世界。人間の居住区を囲むようにして張り巡らされている高い塀の外には魔物が跋扈してるんだと。
だから魔物を退治して報償金を獲得することで生計を立てる冒険者という職業が存在する。
もちろんそれだけじゃ魔物の脅威は無くならないから、国が持ってる軍隊的なものが魔物の討伐をすることもあるらしいけどな。
「命の危険があるような職業はちょっと」
俺の人生の最終目標はあくまでも長生きだ。
せっかくガツガツ稼いでも、ゆったりと過ごす時間が短かったら意味がない。
「ちなみに、コウキさんが今までされていたお仕事は何ですか?」
「ホストです」
「ホスト?」
あ、そっかこっちにはそんな職業ないよなぁ。
「えーと、お店で女性を接待してお金をもらう職業って言えばわかります?」
「ああ、なるほど。女性限定の社交場で接客業をされていたのですね。接客業で稼げる職業となるとここでは男娼というものがありますが、あそこもなかなか厳しい世界でしてね。そこまで稼げるのはほんの一握りの人間だけ。年齢を重ねていってからも出来る職業じゃないのでそう長くは続けられませんし、何よりもやる気があっても、向いてるとは限りませんから」
なるほどな。数少ない女性が風俗業に従事することができない以上、そういう店の店員はみんな男になるわけか。
そんでもって、そこでナンバーワンになれば相当稼げるってことなんだな。
このお兄さんの口振りじゃ、人間の入れ替わりも結構早そうだし、俺にも充分チャンスはあるとみた。
それに何より、三十まではがむしゃらに稼いで、欲しいもの全部手に入れたら、貯めた金でのんびり暮らすってのが俺の人生設計だったので、ここに来たからといってそれを諦める気は更々ない。
大体、今までやってたホストにしても、最初の動機云々はともかく、結局向いてたから続けてこれたし、ナンバーワンにもなれた。
男娼だって口で言うほど簡単な商売だとは思ってないし、ずっと続けられる仕事じゃないこともわかってるけど、ワンチャンあるならそれに賭けるのも悪くない。
身体ひとつで稼げて、大金を手にするチャンスがある仕事があるってんなら、やってやろうじゃん。
俺にとって女のアソコを舐めて枕営業するのも、男のアレをしゃぶって金稼ぐのもそう大差ないことだしな。
「わかりました。俺、男娼になります」
俺の決断に、今までわりと事務的な態度を貫いてきた役所のお兄さんの表情があからさまに驚いたものになる。
あれ……? もしかして冗談のつもりだった、とか?
──いやいや。でも提示した以上は絶対紹介してもらうからな。
そう考え、お兄さんをじっと見据えると。
「……まあ、あなたの場合は借金のカタに売られるわけではないので、ダメだと思ったらすぐに辞めても問題ないでしょう。その際はまたこちらにおいでいただければあなたの適正にあった職業を紹介するように致しますので、お気軽にご相談下さい」
本当は再就職の斡旋は出来ないんですけどね、と言いながら、お兄さんはこの国で一番の高級男娼館に紹介状を書いてくれた。
そんなこんなで俺は元の世界の生活水準を取り戻し、自分の決めた人生設計を遂行するために奮闘する日々が始まったのだ。
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