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今日は会社の同期が集まっての飲み会。
春の人事異動で海外やら地方やらに行く人がいるので、本社にいるメンバーが集まってお別れ会という名の飲み会をやることになったのだ。
俺の同期は仲が良い。
入社して三年が経とうとしているが、節目ごとの集まりの出席率はかなりのものだ。
みんな忙しいにもかかわらず、ちゃんと予定を調整して参加しており、俺も出来るだけ参加するようにしている。
いくら会社の繋がりとはいえ、入社当初新入社員研修で苦楽を共にした仲間との飲み会は案外楽しく、俺も少しだけ羽目を外し、いつもは飲まない日本酒を勧められるがままに飲んでしまっていた。
やたらと身体が熱く感じられ、少し外の風に当たろうと席を立ったところで自分がかなり酔ってることに気が付いた。
このままではヤバいと店の人に冷たい水を一杯貰って飲み干してから外に出た。
ここ近年春の訪れが早まってきているとはいえ、夜はまだまだ冷える。
でも火照った身体と酔いを冷ますにはちょうど良い感じだった。
さすがに星は見えないな、なんてありきたりの事を思いながら、店から少し離れた所でぼんやりする。
すると。
「もしかして樹?」
名前を呼ばれて反射的に振り向いてしまい、すぐにそれを後悔することになった。
──何でここに……?
そこに立っていたのは見覚えのある人物だった。
見覚えがあるというよりは、どちらかというと二度会いたくなかった人物と言うべきか。
酔いが回っているせいで上手く表情が取り繕えなかった俺は、その人物を見てうっかり嫌そうな顔をしてしまっていた。
一方、その人物こと深見 佑は、複雑そうな表情を浮かべながらゆっくりと俺に近付いてくる。
「久しぶり……」
そう言ってはにかんだ笑みは、以前と少しも変わらない。
でもすっかり変わってしまった俺達の関係と心の距離を思うと、薄れた筈の俺の傷が痛みだし、自然と声が硬くなった。
「……久しぶりだな」
なんとか言葉を返したものの、俺はそれ以上何も言えずに黙り込む。
先程まで感じていた身体の熱さやほろ酔い気分が一気に冷めていく気がした。
深見は大学時代の友人で俺が四年間ずっと片思いしていた相手であり、卒業式が終わった日の夜。俺が告白しフラれた相手。
やっと忘れられたはずだったのに……。
苦い思いが込み上げる。
深見はそんな俺の気も知らず勝手に距離を縮めると、以前と変わらず優しい手付きで俺の髪に触れてきた。
「前から綺麗だと思ってたけど、益々綺麗になったな」
──何言ってんだコイツ。まさかアメリカに行って感化されてきたのか?
口説き文句のような事を平然と口にする深見に、嬉しさよりもどういうつもりなのかという疑念のほうが先に立ち、思わず眉を潜めてしまう。
渡米することが決まっていた深見に想いを告げたのは俺。
それを受け取れないと言ったのは深見。
気まずいのは俺の方だけってことなのか……。
この三年間、深見からは何の連絡もなかった。
もちろんフラれた俺からは連絡できる筈もなく、大学時代の友人に誘われた飲み会も全くといっていいほど参加してこなかったため、深見の情報は入ってこなかった。
あの時まで誰よりも近くにいると思っていた深見は一番遠いところにいる人に変わってしまったものだと思っていたのに。
今更こんな再会とかって……。
俺はこの『運命のいたずら』とも云える状況に苦々しさしか感じられず、無意識に唇を噛んでいた。
春の人事異動で海外やら地方やらに行く人がいるので、本社にいるメンバーが集まってお別れ会という名の飲み会をやることになったのだ。
俺の同期は仲が良い。
入社して三年が経とうとしているが、節目ごとの集まりの出席率はかなりのものだ。
みんな忙しいにもかかわらず、ちゃんと予定を調整して参加しており、俺も出来るだけ参加するようにしている。
いくら会社の繋がりとはいえ、入社当初新入社員研修で苦楽を共にした仲間との飲み会は案外楽しく、俺も少しだけ羽目を外し、いつもは飲まない日本酒を勧められるがままに飲んでしまっていた。
やたらと身体が熱く感じられ、少し外の風に当たろうと席を立ったところで自分がかなり酔ってることに気が付いた。
このままではヤバいと店の人に冷たい水を一杯貰って飲み干してから外に出た。
ここ近年春の訪れが早まってきているとはいえ、夜はまだまだ冷える。
でも火照った身体と酔いを冷ますにはちょうど良い感じだった。
さすがに星は見えないな、なんてありきたりの事を思いながら、店から少し離れた所でぼんやりする。
すると。
「もしかして樹?」
名前を呼ばれて反射的に振り向いてしまい、すぐにそれを後悔することになった。
──何でここに……?
そこに立っていたのは見覚えのある人物だった。
見覚えがあるというよりは、どちらかというと二度会いたくなかった人物と言うべきか。
酔いが回っているせいで上手く表情が取り繕えなかった俺は、その人物を見てうっかり嫌そうな顔をしてしまっていた。
一方、その人物こと深見 佑は、複雑そうな表情を浮かべながらゆっくりと俺に近付いてくる。
「久しぶり……」
そう言ってはにかんだ笑みは、以前と少しも変わらない。
でもすっかり変わってしまった俺達の関係と心の距離を思うと、薄れた筈の俺の傷が痛みだし、自然と声が硬くなった。
「……久しぶりだな」
なんとか言葉を返したものの、俺はそれ以上何も言えずに黙り込む。
先程まで感じていた身体の熱さやほろ酔い気分が一気に冷めていく気がした。
深見は大学時代の友人で俺が四年間ずっと片思いしていた相手であり、卒業式が終わった日の夜。俺が告白しフラれた相手。
やっと忘れられたはずだったのに……。
苦い思いが込み上げる。
深見はそんな俺の気も知らず勝手に距離を縮めると、以前と変わらず優しい手付きで俺の髪に触れてきた。
「前から綺麗だと思ってたけど、益々綺麗になったな」
──何言ってんだコイツ。まさかアメリカに行って感化されてきたのか?
口説き文句のような事を平然と口にする深見に、嬉しさよりもどういうつもりなのかという疑念のほうが先に立ち、思わず眉を潜めてしまう。
渡米することが決まっていた深見に想いを告げたのは俺。
それを受け取れないと言ったのは深見。
気まずいのは俺の方だけってことなのか……。
この三年間、深見からは何の連絡もなかった。
もちろんフラれた俺からは連絡できる筈もなく、大学時代の友人に誘われた飲み会も全くといっていいほど参加してこなかったため、深見の情報は入ってこなかった。
あの時まで誰よりも近くにいると思っていた深見は一番遠いところにいる人に変わってしまったものだと思っていたのに。
今更こんな再会とかって……。
俺はこの『運命のいたずら』とも云える状況に苦々しさしか感じられず、無意識に唇を噛んでいた。
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