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二章:人狼ゲームスタート
14話:面談 TO 貴常
しおりを挟む小夜里の次は、貴常との個人面談だ。
古里太は、彼女の部屋にやってきた。
室内の見た目は、やはりどの個室も大差ない。
しかし、貴常の姿は、部屋にすっかりなじんでいる。
初めて来た場所なのに、自分の家のようななじみ方だ。
お嬢様育ちの貴常は、やはり豪邸によく似合う。
これが、小夜里の時には、違和感があった。
やはり、委員長が一番似合うのは学校だ。
「あら、いらしたの、伊木野さん」
貴常は古里太の姿を見つけると、一瞬、軽くはにかむ。
ところが、彼女はすぐに険しい表情になった。
「伊木野さん、アレはどういうことですの!」
そして、キンキン声で、噛みついてきた。
「アレって何?」
「アレですわよ……その」
「消灯後にレイプできるルール?」
「そうですわよ。……本気ですの?」
「冗談で言ったとでも?
いやアレは、人狼をけん制する意味で、
消灯後の行動を制限する方に、重点があって……」
「ふーん……、そうですの」
古里太は、貴常に喰ってかかられて、
狐につままれたような顔をしていた。
委員長の怒るところは、学園でよく見ていた。
が、貴常が怒るところはあまり見たことがない。
そもそも単純に、接する機会が少なかったし。
それにしても、この人狼館に来てから、
ずっと澄ました顔をしていたのに、
急に怒り出したのには驚いた。
それはおそらく、こういうことだろうと、彼は推測した。
学園に限らずこの人狼館でも、場を仕切りたい委員長と異なり、
貴常は、学園でもここでも、人前で目立つことを避けている。
それは令嬢として育てられた教育方針なのだろう。
「金持ちケンカせず」ということわざもあるし、
ささいなもめ事に首を突っ込むのは得策ではない。
だが、今の貴常が感情をあらわにしたのは、
「ふたりきり」というのがポイントなのだろう。
それから、「レイプ」という、
身の危険に関わることだから、
というのも常識的に推測できる。
「わたくしったら、取り乱してしまって、
失礼しましたわね。どうぞ、お掛けになって」
貴常は、イスをすすめてきた。
終始立ち話していた小百合とは、やはり違う。
お嬢様には、心の余裕のようなものがあるのだろうか。
テーブルを挟んで、イスに座って向かい合うふたり。
どうも貴常は、じっくり話したいようだ。
貴常の顔から、さっきの険しさは取れたが、
いぜんとして、真剣な面持ちは維持している。
怒った顔も、澄ました顔も、どちらも美しい。
「――さて、もうひとつ、伊木野さんに、
キチンと言っておきたいことがありますの」
「なんだい、谷唐さん」
貴常は、正面からジッと見つめてくる。
古里太は、湾子以外の女子から、
こんなに見つめられる経験があまりない。
貴常に眼力があることから、少しドキっとしてしまう。
なぜ、さっきの委員長ほどは、イラつかないのか。
貴常が美人だからか。お嬢様だからか。
それとも、態度の違いなのか。
「伊木野さんは、どなたを処刑なさるおつもり?」
「それは秘密だよ?」
「わたくしにだけ、教えて下さってもいいのに」
「みんな教えてほしいからね」
「でも、指名先の見当はついていますのよ」
「……だれ?」
「海野さんでしょう?」
「……さあ」
貴常は、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
さっきのキンキン声も、落ち着いてきた。
一方の古里太は、なるべく、
ポーカーフェイスを保つようにした。
貴常も、委員長が処刑ランキング筆頭だと見抜いている。
だから、自分が処刑されることを恐れていないのだろう。
古里太は、ハーレムを作る上で、
都合が悪い展開であると考えた。
しかし、打開策がパッと浮かばなかった。
そこで、彼が頭を回転させるために、
少し深呼吸すると、良い匂いが鼻に入ってくる。
彼女が香水をつけているのかもしれない。
「わたくしの言いたいことは、まだありますのよ」
「なんだい」
「わたくしを処刑対象にしないと、
約束して欲しいんですの」
「おや? 今の話だと、谷唐さんは、
委員長が処刑対象だと思ってるんでしょ?」
「そうですけど……私が予想するのと、
あなたが直接言うのでは、
安心感がぜんぜん違いますわ」
「それもそうだ。でも、それを言うと、
ボクの側にどんなメリットがあるの?」
「そうですわね……うーん、難しいのかしら。
普段ならお金で解決するんですけれど、
今は囚われのお姫様ですし」
ちょっとお茶目でユーモラスな言い方だが、
「お金」と「お姫様」という言葉を、
両方とも使って似合うのは、貴常くらいのものだろう。
明らかに、話し合いは平行線をたどっている。
古里太は、先ほどの委員長との会話に出てきた、
「選挙制」を導入することを思い浮かべていた。
処刑対象がもう自分以外に決まっている、
と予測されると、安心されてしまう。
そこで、全員での投票なら、誰になるか分からない。
しかし一方、選挙制には大きな問題があった。
それは、投票で決めるということは、
自分の処刑指名権を放棄するようなものだからだ。
もし、古里太が選挙制にしたとして、
女子たちが、彼に従う理由も消えてしまう。
それでは、元も子もないではないか。
はたして、この難問を解決できるのだろうか?
彼は、あと少しで、糸口がつかめそうな気がしていた。
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