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第一章:森の覇者
第41話 何処に行っても腐敗は根の如く
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【前回】新たな傀儡として騎士団長アルグトール・フェフューカを手に入れた
第41話 何処に行っても腐敗は根の如く
――その言葉の覚悟とやらを見せてみろ。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
「……カルストゥーラ様。」
……やっぱり。
「お前、魔法が効いていないな?」
「あぁ、やっぱり? 私もそんな気がしてたのよ。」
「全く効いていない、という訳ではありませんよ。気を、抜いたら……全部ずり落ちてしまいそうではあります。ただ、堕ちてしまう前にどうしてもお願いしたい事がございまして。」
「話せ。」
「私を、其方の方のように理性を保ったまま貴方様のお傍に置いてはくださいませんか。」
「……不思議だなぁ。王都でお前のように闇を抱えている者をより多く見ている気がする。なんだ、この国は一見お綺麗に見えて実は汚いとかそういう国なのか?」
「いえ、心に傷を負っている者が多いだけです。帝国から普通の国家になって5年しか経っていない事、最後の大戦争からあまり日が経っていないのもあって誰もが心に闇を抱えているのです。……かといって国王は死者を弔う事よりも教育や国の繫栄ばかりに目が行き、下々の気持ちなど考慮致しません。」
下々の気持ち、ねぇ。
「私が同じ事をするとは思わないのか? たかが一度救われただけで他者を信じるなどあまり褒められた物ではないな。」
「それでも、それでも今よりはマシ……になる気がします。差別も貧富の差もなく、飢える事も凍える事もない国。それが叶うだけでもこの国の国民的な幸福度は跳ね上がります。……時に、カルストゥーラ様。貴方様はもう、城下は全てご覧になられましたか?」
「地下や郊外はまだ見れていないな。」
「墓地、1つでもありましたか?」
「……そういえばなかったな。」
「この国の王はアンデッドを恐れて全て燃やしてしまいます。骨すらも燃やして城壁から風に攫わせるんです。その癖、自身は死にたくないと言ってずっと王宮で延命処置を続けている。……おかしいじゃないですか。どうして、どうして国の為に使うお金で延命なんて。どうして、置いていかれる人達の気持ちを考えずに“アンデッドが発生する為、墓を作ってはならない”なんて法律があるんですか。どうして、どうして死んでまでそんな風に扱われなきゃいけないんですか!! 死んでからでも、死んだ後だとしても、お墓の1つくらいどうして建てちゃ駄目なんですか!!」
死者がアンデッドになる。それは、この世界において一般常識だ。
しかもそれに差別などなく、裕福な者も。貧しい者も。人間も。非人間族も。王様も。大人も子供も皆、ある時突然アンデッドとなって自ら墓から這い出してくる。
別にネクロマンサーなどが居る必要はなく、世界の常識的には何が原因でそうなるのか知られていないが私の研究では“未練のある者はアンデッドになる”事が分かっている。だからこそ、アンデッドになる死体とそうでない死体があるのだろう。
仮に未練があってもちゃんと供養すればアンデッド化する事はないが……まぁ、そんな事も知らんだろうなぁ。
「……カルストゥーラ様。教えて下さい。貴方が実現しようとしている未来は、今の国よりも酷い物ですか? 今の国よりも非道な物ですか?」
「……非道、ではあるだろうな。しかし墓を建ててはならんなどとは流石に言わん。死者は正しく弔うべきだ。如何なる死者にも敬意を示すべきだ。例え、生前腐っていたとしても。物言わぬ骸に何を言っても無駄なように、物言わぬ骸に価値などなくなったように。もう悪さをする事も出来ず、贖罪も出来ない矛盾のない存在。死者に善悪はない。むしろ変に刺激して逆鱗に触れてしまわぬよう、過剰なぐらいに丁重に扱うべきだと私は思う。」
「……それで、それだけで十分です。どうか、どうか私をお傍に置いて下さいませんか、カルストゥーラ様。私はこんな国、嫌なんです。」
「……どうするの?」
「……ミュシェルよ、私は臆病で傲慢で独占欲の強い人格だ。お前がどれだけそう言っても完全には信用出来ない事は分かるな?」
「勿論です。簡単に人を信じる者など、ただの愚か者ですから。」
「宜しい。ではこれを。」
「血の……蛇?」
「私の仲間が作った物だ。これを飲む事で“一時的に”お前を信用するとしよう。少なくとも、これでお前の裏切りと逃走を防ぐ事は出来るのでな。」
「……完全に、信用してもらう為には?」
「私は実力のない者は要らん。だが、実力と言うのは時に様々な定義を持つ。純粋な力、知識、技術、魔法。一言に実力と言ってもその含意はとても広い。先に挙げた物以外にも世界には沢山の実力がある。欲しいのであれば勝ち取れ。欲しいのであれば諦めるな。……先に行って時々様子を見てやる。私を振り向かせ、私に着いてきてみろ。死に物狂いでな。」
「……ええ、必ず。必ず、貴方の信用を勝ち取って御覧に入れますカルストゥーラ様。」
お前が此方に来るのと私がこの国を支配するのが早いか見物だなぁ。
❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖❖
――次回「第42話 供給元を抑えてしまえば」
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今後とも『悠久の宴にようこそ』をよろしくお願いいたします。
第41話 何処に行っても腐敗は根の如く
――その言葉の覚悟とやらを見せてみろ。
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「……カルストゥーラ様。」
……やっぱり。
「お前、魔法が効いていないな?」
「あぁ、やっぱり? 私もそんな気がしてたのよ。」
「全く効いていない、という訳ではありませんよ。気を、抜いたら……全部ずり落ちてしまいそうではあります。ただ、堕ちてしまう前にどうしてもお願いしたい事がございまして。」
「話せ。」
「私を、其方の方のように理性を保ったまま貴方様のお傍に置いてはくださいませんか。」
「……不思議だなぁ。王都でお前のように闇を抱えている者をより多く見ている気がする。なんだ、この国は一見お綺麗に見えて実は汚いとかそういう国なのか?」
「いえ、心に傷を負っている者が多いだけです。帝国から普通の国家になって5年しか経っていない事、最後の大戦争からあまり日が経っていないのもあって誰もが心に闇を抱えているのです。……かといって国王は死者を弔う事よりも教育や国の繫栄ばかりに目が行き、下々の気持ちなど考慮致しません。」
下々の気持ち、ねぇ。
「私が同じ事をするとは思わないのか? たかが一度救われただけで他者を信じるなどあまり褒められた物ではないな。」
「それでも、それでも今よりはマシ……になる気がします。差別も貧富の差もなく、飢える事も凍える事もない国。それが叶うだけでもこの国の国民的な幸福度は跳ね上がります。……時に、カルストゥーラ様。貴方様はもう、城下は全てご覧になられましたか?」
「地下や郊外はまだ見れていないな。」
「墓地、1つでもありましたか?」
「……そういえばなかったな。」
「この国の王はアンデッドを恐れて全て燃やしてしまいます。骨すらも燃やして城壁から風に攫わせるんです。その癖、自身は死にたくないと言ってずっと王宮で延命処置を続けている。……おかしいじゃないですか。どうして、どうして国の為に使うお金で延命なんて。どうして、置いていかれる人達の気持ちを考えずに“アンデッドが発生する為、墓を作ってはならない”なんて法律があるんですか。どうして、どうして死んでまでそんな風に扱われなきゃいけないんですか!! 死んでからでも、死んだ後だとしても、お墓の1つくらいどうして建てちゃ駄目なんですか!!」
死者がアンデッドになる。それは、この世界において一般常識だ。
しかもそれに差別などなく、裕福な者も。貧しい者も。人間も。非人間族も。王様も。大人も子供も皆、ある時突然アンデッドとなって自ら墓から這い出してくる。
別にネクロマンサーなどが居る必要はなく、世界の常識的には何が原因でそうなるのか知られていないが私の研究では“未練のある者はアンデッドになる”事が分かっている。だからこそ、アンデッドになる死体とそうでない死体があるのだろう。
仮に未練があってもちゃんと供養すればアンデッド化する事はないが……まぁ、そんな事も知らんだろうなぁ。
「……カルストゥーラ様。教えて下さい。貴方が実現しようとしている未来は、今の国よりも酷い物ですか? 今の国よりも非道な物ですか?」
「……非道、ではあるだろうな。しかし墓を建ててはならんなどとは流石に言わん。死者は正しく弔うべきだ。如何なる死者にも敬意を示すべきだ。例え、生前腐っていたとしても。物言わぬ骸に何を言っても無駄なように、物言わぬ骸に価値などなくなったように。もう悪さをする事も出来ず、贖罪も出来ない矛盾のない存在。死者に善悪はない。むしろ変に刺激して逆鱗に触れてしまわぬよう、過剰なぐらいに丁重に扱うべきだと私は思う。」
「……それで、それだけで十分です。どうか、どうか私をお傍に置いて下さいませんか、カルストゥーラ様。私はこんな国、嫌なんです。」
「……どうするの?」
「……ミュシェルよ、私は臆病で傲慢で独占欲の強い人格だ。お前がどれだけそう言っても完全には信用出来ない事は分かるな?」
「勿論です。簡単に人を信じる者など、ただの愚か者ですから。」
「宜しい。ではこれを。」
「血の……蛇?」
「私の仲間が作った物だ。これを飲む事で“一時的に”お前を信用するとしよう。少なくとも、これでお前の裏切りと逃走を防ぐ事は出来るのでな。」
「……完全に、信用してもらう為には?」
「私は実力のない者は要らん。だが、実力と言うのは時に様々な定義を持つ。純粋な力、知識、技術、魔法。一言に実力と言ってもその含意はとても広い。先に挙げた物以外にも世界には沢山の実力がある。欲しいのであれば勝ち取れ。欲しいのであれば諦めるな。……先に行って時々様子を見てやる。私を振り向かせ、私に着いてきてみろ。死に物狂いでな。」
「……ええ、必ず。必ず、貴方の信用を勝ち取って御覧に入れますカルストゥーラ様。」
お前が此方に来るのと私がこの国を支配するのが早いか見物だなぁ。
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