3 / 70
第一章
3 シーナ=スレヴィアス
しおりを挟む
「すみません!」
いきなりの怒鳴り声に、カウルが反射的に萎縮する。
「ちっ!」
これみよがしの大きな舌打ちをして、シーナ=スレヴィアスが鬱屈そうに伸びた前髪の陰から覗く三白眼の大きな眼でじろりとカウルを睨む。
その背には、カウルが持つのと同じ小銃が掛けられている。
だが特に目を引くのは、この少年の腕にかかえられている、長大な銃器であった。
対装甲狙撃銃と呼ばれるその銃器は、全長140センチほど。シーナの半身よりずっと長いその銃は、重機関銃で使われるのと同じ大型の弾薬を使用する。
そのため、携帯できる火器でありながら、その射程と威力は小銃を遥かにしのぎ、装甲で守られた対象すら破壊する性能を有している。
「……」
自分より小柄なシーナだったが、その鋭い剣幕にカウルは目を伏せ、その隣に立った。
決してカウルは、一番遅かったわけではない。カウルが並んでいる間も、同じ配置場所の他の隊員が後からやってきた。
重巡『アマネ』に乗艦して以来、カウルはこの隣の少年──シーナ=スレヴィアスに目の敵にされているのである。
シーナの階級は上等兵で、新兵訓練を終えて配属されたばかりの二等兵のカウルより二つ上のカウルの上官であった。
また、カウルの任務はシーナの補佐であり、そのためカウルとシーナは二人一組のタッグを組まされている。
「このノロマが」
整列してもなお、シーナはカウルに毒を吐く。
シーナは、実戦経験のない未熟な二等兵であるカウルが気に入らない様子であった。
「第二分隊、整列!」
全員が揃い、整列する隊員たちの前にセーグネル=ハートクレア准尉が出た。
分隊──カウルたち艦上歩兵科は六つの分隊で一個小隊を構成する。その内訳は、一番二番主砲のある艦の正面を守備する第一分隊、右舷前方の第二分隊、右舷後方の第三分隊、左舷前方を守る第四分隊、左舷後方の第五分隊、そして三番四番主砲のある艦の後方を守る第六分隊である。
カウルたち第二分隊を率いるのが、このセーグネル=ハートクレア准尉である。
階級は少尉の一歩手前の准尉で、士官学校を出た士官──カウルたち『兵』を指揮する上級職である。
「教練対空戦闘用意!」
セーグネルがよく通る声で隊員たちに号令する。
艶やかな銀の髪を鉄帽のなかにまとめているが、こぼれた数条が風になびく。澄んだ水色の瞳をした美しい顔立ちの少女だが、訓練である今はキリッと表情を引き締めていた。
重厚な防弾装具に身を包んでいるが、その上からでもその体の華奢さが覗く。
一見、小柄な少女に過ぎない彼女が分隊の指揮官を務めるにはその裏付けがある。
そしてそれは、近年になって作られたばかりの新しい兵科である『艦上歩兵科』も同様だった。
いきなりの怒鳴り声に、カウルが反射的に萎縮する。
「ちっ!」
これみよがしの大きな舌打ちをして、シーナ=スレヴィアスが鬱屈そうに伸びた前髪の陰から覗く三白眼の大きな眼でじろりとカウルを睨む。
その背には、カウルが持つのと同じ小銃が掛けられている。
だが特に目を引くのは、この少年の腕にかかえられている、長大な銃器であった。
対装甲狙撃銃と呼ばれるその銃器は、全長140センチほど。シーナの半身よりずっと長いその銃は、重機関銃で使われるのと同じ大型の弾薬を使用する。
そのため、携帯できる火器でありながら、その射程と威力は小銃を遥かにしのぎ、装甲で守られた対象すら破壊する性能を有している。
「……」
自分より小柄なシーナだったが、その鋭い剣幕にカウルは目を伏せ、その隣に立った。
決してカウルは、一番遅かったわけではない。カウルが並んでいる間も、同じ配置場所の他の隊員が後からやってきた。
重巡『アマネ』に乗艦して以来、カウルはこの隣の少年──シーナ=スレヴィアスに目の敵にされているのである。
シーナの階級は上等兵で、新兵訓練を終えて配属されたばかりの二等兵のカウルより二つ上のカウルの上官であった。
また、カウルの任務はシーナの補佐であり、そのためカウルとシーナは二人一組のタッグを組まされている。
「このノロマが」
整列してもなお、シーナはカウルに毒を吐く。
シーナは、実戦経験のない未熟な二等兵であるカウルが気に入らない様子であった。
「第二分隊、整列!」
全員が揃い、整列する隊員たちの前にセーグネル=ハートクレア准尉が出た。
分隊──カウルたち艦上歩兵科は六つの分隊で一個小隊を構成する。その内訳は、一番二番主砲のある艦の正面を守備する第一分隊、右舷前方の第二分隊、右舷後方の第三分隊、左舷前方を守る第四分隊、左舷後方の第五分隊、そして三番四番主砲のある艦の後方を守る第六分隊である。
カウルたち第二分隊を率いるのが、このセーグネル=ハートクレア准尉である。
階級は少尉の一歩手前の准尉で、士官学校を出た士官──カウルたち『兵』を指揮する上級職である。
「教練対空戦闘用意!」
セーグネルがよく通る声で隊員たちに号令する。
艶やかな銀の髪を鉄帽のなかにまとめているが、こぼれた数条が風になびく。澄んだ水色の瞳をした美しい顔立ちの少女だが、訓練である今はキリッと表情を引き締めていた。
重厚な防弾装具に身を包んでいるが、その上からでもその体の華奢さが覗く。
一見、小柄な少女に過ぎない彼女が分隊の指揮官を務めるにはその裏付けがある。
そしてそれは、近年になって作られたばかりの新しい兵科である『艦上歩兵科』も同様だった。
0
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる