エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

文字の大きさ
39 / 70
第一章

39 迎撃はじめ

しおりを挟む
──来る!!
 敵艦の発砲を認めた瞬間、カウルの顔からさっと血の気が引き、胸のなかがぎゅんと縮み上がる。
(し、死ぬ……)
 自己の悲惨な未来を想像したカウルは恐怖に囚われる。
 砲弾が直撃すれば、自分は跡形もなく消し飛ぶのだろうか──自分が次の瞬間にでも死ぬのではないかという恐怖に、ここから走って逃げ出したい衝動に駆られる。
 しかし、周囲を海に囲まれたこの艦のどこにも、そのような逃げ場はない。
 カウルの視界の先で、敵艦隊の一番前の艦に続き、後続艦からもぽつ、ぽつと黒煙が上がった。
 敵艦隊全体が攻撃を開始したのだ。
「迎撃はじめ!!」
 号令がかかり、第四分隊の対空迎撃要員とシーナが対装甲狙撃銃を構え、銃口を空に向ける。
 敵艦隊の砲撃を視認してから数秒、何も起きない緊張の時間が流れる。
 艦砲の速度は、初速で秒速八百メートル程度である。口径が小さい艦砲であれば、それよりもっと速く、大口径であれば砲弾の重量も増すので初速は少し遅くなる。
 砲弾の速度は空気抵抗により次第に低下するが、単純計算なら、八千メートルの距離を十秒ほどで飛翔する。
 ただ敵艦隊までの距離がどれほどあるかは、それを肉眼で見るカウルにはわからない。
 だが仮に敵艦隊までの距離が一万メートル以上あるとしても、砲弾があと十秒ほどでこちらに到達することは間違いなかった。
(どこだ──?!)
 カウルの目が、空に向かって見開かれる。しかし、眼前に広がる虚空のなかに、飛来する砲弾を見つけることはできない。
 すると、ダン、ダァンと発射音が木霊した。第四分隊の対空迎撃要員が射撃を開始したのだ。
 だが、カウルの斜め前に立つシーナは、まだ対装甲狙撃銃を撃たない。狙撃銃の照門に顔を寄せ、鋭い瞳で瞬きすることなく空を睨んでいる。
──た、頼む……!!
 なすすべなく焦るカウルがシーナのほうに顔を向けた、その瞬間──
 ダァン!!
 シーナの対装甲狙撃銃が、その大口径の銃口から火を噴いた。

 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

処理中です...