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第一章
65 白兵戦
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(シーナが戻ったなら──!)
シーナに危ないところを救われたセーグネルは望みを繋がれた思いだった。
彼がいるならこの状況でも、持ちこたえられるかもしれない。
しかし一方で、セーグネルの目の前の敵兵──グレンも、シーナの銃弾を受けたもののいまだ健在である。
──鋼鉄の律動。
剣と小銃を手にした敵に、十字槍だけで対抗するのは難しいと判断したセーグネルは新たに別の武器を創出した。
十字槍を放し、セーグネルが新たに手にしたのは、小型の盾と細身の剣であった。
左手に盾を、右手にした剣を携えたセーグネルと、小銃と片手剣を手にしているグレンが、つかの間にらみ合う。
先に動いたのはグレンであった。
ダララッ!!
グレンは握っている小銃を片手だけで発砲してきた。
カン!カン!
手にした盾で銃弾を防ぐセーグネル。
「──っ!」
その間にグレンが距離を詰め、握った剣を振り下ろしてきた。
ガァン!
セーグネルが敵の斬撃を盾で受け止める。
「ふっ!」
セーグネルの反撃──盾の陰からセーグネルは右手に握る剣を横に薙いだ。
カン!
しかし、敵に容易くいなされてしまう。
「ぐっ!」
直後、小さなモーションで繰り出されたグレンの前蹴りが、セーグネルの胴体を打った。
セーグネルが後ろによろめき、グレンはすかさず彼女を追撃する。
「っ!!」
振り下ろされた剣にセーグネルはかろうじて盾を向けるも──
ギィン!!
崩された体勢では、敵の重たい斬撃を堪えることはできなかった。
セーグネルの盾が弾き退かされ、隙が生まれる。
(しまっ──)
セーグネルの瞳に自分に向けられた銃口が映る。
ダララッ!
「う"っ!」
短い悲鳴とともに、銃撃を受けたセーグネルの体は宙を飛びながら仰向けに倒れた。
──こんなものか。
接近戦のあっけない決着に、グレンは少し期待が外れた心境だった。
敵の女兵士がはじめ、自分の二式紅炎を水の律動を用いて防いだのには確かに驚いた。
しかし、グレンが戦い方を切り替えて、単純な白兵戦──体格にモノを言わせた格闘に持ち込んだらとたんに力の差が露になった。
銃撃を受けた敵の女兵士にはまだ息がある。
才能はあったのだろうが──グレンが気を失ってぐったりとしている彼女に止めを刺そうと銃口を向ける。
──その時だった。
ダララッ!
小銃の連射がグレンを襲った。
「っ!」
寸前に胸騒ぎを覚えたグレンは、反射的に回避行動を取った。
その短い射撃は、そもそも狙い澄まされたものではなかったのか、グレンがその場で身を反らしただけで空を切って彼方に飛んでいった。
誰だ──グレンがその火線の元を辿ると、そこにいたのは先ほどグレンが倒した、目の前の女兵士とタッグを組んで戦っていた兵士だった。
一瞬、危機感を覚えたグレンであったが、その敵に目を向けると半ば呆気にとられた。
銃撃を仕掛けてきた敵兵は、苦悶の表情を浮かべたまま、甲板に腹這いになって、なんとかこちらに小銃を向けている有り様だった。
(なんだこいつ、虫の息じゃねえか)
それ以上の銃撃は来ない。弾切れを起こしたのか、敵兵は小銃の引き金を引き絞ったままだ。
じっとしておけばよかったものを──死体撃ち同然に、グレンは動けない敵兵の顔面に小銃を向けた。
(隊長……)
セトは朦朧とする意識に抗いながら敵を睨みつけた。
セーグネルを守る──その思いで仕掛けた銃撃もあえなく回避されてしまった。
「うっ……」
敵の銃撃を受けたせいで、少し動いただけでも体に激痛が走る。
弾切れになった小銃に新たな弾倉を挿す力も残っていない。
敵はセーグネルではなく、自分のほうに銃口を向けている。
──ああ……
セトはぎゅっと目を瞑り、観念した。
脳裏に、セーグネルの姿が浮かぶ。
死の瞬間を待つセト。
敵に撃たれるまでの時間がとてもゆっくり感じられた。
「ええええいっ!!」
しかし、敵の銃口が火を吹かなかった。
銃声の代わりに聞こえたのは、高い音をした喚声。
──なんだ.......?!
セトがはっと目を開けると、
上空から一つの影が甲板めがけて降りてきた。
(今度はなんだっ!)
喚声と己に向けられた敵意に、グレンはとっさに声のほうに振り向いた。
目に入ったのは自分めがけて上空から飛びかかってくる人影。
次の瞬間、肉薄する人影からきらっと刃の反射光が瞬いた。
とっさに剣を横にして掲げるグレン。
ガキィン!!!
強烈な一撃が頭上から叩きつけられた。
(──!!!)
全体重が乗せられた斬撃に、受け止めきれないと直感したグレンは、即座に後ろに退く。
敵の刃がグレンの剣を押し退け、それまでグレンがいた空間を鋭く薙いだ。
──こいつ!
敵の姿をはっきり認める前に、甲板に降り立った敵は素早く体を起こし、斜め下から切り上げる斬撃を繰り出してきた。
キィン!
グレンは敵の刃を小銃で受けようとするも、その強い衝撃に小銃がはねのけられる。
(くそっ!)
敵はすばやかった。その得物は弧状の刀身を持つ片刃の剣だ。
ビュッ、ビュッ!
その一振り一振りが鋭く空を切り裂いてグレンに襲いかかる。
(速い!)
キィン!キィン!
グレンは左右にそれぞれ握る剣と小銃を盾にして、敵の攻撃を防ぐのに精一杯になった。
ばっ、と大きく後退して敵と距離を取る。
敵は一連の攻撃を一旦止めてグレンと対峙した。グレンはその姿をここではじめてはっきりと確認する。
弧状の刀を両手に握り正眼に構えた敵は、まだ歳の若い女だった。
シーナに危ないところを救われたセーグネルは望みを繋がれた思いだった。
彼がいるならこの状況でも、持ちこたえられるかもしれない。
しかし一方で、セーグネルの目の前の敵兵──グレンも、シーナの銃弾を受けたもののいまだ健在である。
──鋼鉄の律動。
剣と小銃を手にした敵に、十字槍だけで対抗するのは難しいと判断したセーグネルは新たに別の武器を創出した。
十字槍を放し、セーグネルが新たに手にしたのは、小型の盾と細身の剣であった。
左手に盾を、右手にした剣を携えたセーグネルと、小銃と片手剣を手にしているグレンが、つかの間にらみ合う。
先に動いたのはグレンであった。
ダララッ!!
グレンは握っている小銃を片手だけで発砲してきた。
カン!カン!
手にした盾で銃弾を防ぐセーグネル。
「──っ!」
その間にグレンが距離を詰め、握った剣を振り下ろしてきた。
ガァン!
セーグネルが敵の斬撃を盾で受け止める。
「ふっ!」
セーグネルの反撃──盾の陰からセーグネルは右手に握る剣を横に薙いだ。
カン!
しかし、敵に容易くいなされてしまう。
「ぐっ!」
直後、小さなモーションで繰り出されたグレンの前蹴りが、セーグネルの胴体を打った。
セーグネルが後ろによろめき、グレンはすかさず彼女を追撃する。
「っ!!」
振り下ろされた剣にセーグネルはかろうじて盾を向けるも──
ギィン!!
崩された体勢では、敵の重たい斬撃を堪えることはできなかった。
セーグネルの盾が弾き退かされ、隙が生まれる。
(しまっ──)
セーグネルの瞳に自分に向けられた銃口が映る。
ダララッ!
「う"っ!」
短い悲鳴とともに、銃撃を受けたセーグネルの体は宙を飛びながら仰向けに倒れた。
──こんなものか。
接近戦のあっけない決着に、グレンは少し期待が外れた心境だった。
敵の女兵士がはじめ、自分の二式紅炎を水の律動を用いて防いだのには確かに驚いた。
しかし、グレンが戦い方を切り替えて、単純な白兵戦──体格にモノを言わせた格闘に持ち込んだらとたんに力の差が露になった。
銃撃を受けた敵の女兵士にはまだ息がある。
才能はあったのだろうが──グレンが気を失ってぐったりとしている彼女に止めを刺そうと銃口を向ける。
──その時だった。
ダララッ!
小銃の連射がグレンを襲った。
「っ!」
寸前に胸騒ぎを覚えたグレンは、反射的に回避行動を取った。
その短い射撃は、そもそも狙い澄まされたものではなかったのか、グレンがその場で身を反らしただけで空を切って彼方に飛んでいった。
誰だ──グレンがその火線の元を辿ると、そこにいたのは先ほどグレンが倒した、目の前の女兵士とタッグを組んで戦っていた兵士だった。
一瞬、危機感を覚えたグレンであったが、その敵に目を向けると半ば呆気にとられた。
銃撃を仕掛けてきた敵兵は、苦悶の表情を浮かべたまま、甲板に腹這いになって、なんとかこちらに小銃を向けている有り様だった。
(なんだこいつ、虫の息じゃねえか)
それ以上の銃撃は来ない。弾切れを起こしたのか、敵兵は小銃の引き金を引き絞ったままだ。
じっとしておけばよかったものを──死体撃ち同然に、グレンは動けない敵兵の顔面に小銃を向けた。
(隊長……)
セトは朦朧とする意識に抗いながら敵を睨みつけた。
セーグネルを守る──その思いで仕掛けた銃撃もあえなく回避されてしまった。
「うっ……」
敵の銃撃を受けたせいで、少し動いただけでも体に激痛が走る。
弾切れになった小銃に新たな弾倉を挿す力も残っていない。
敵はセーグネルではなく、自分のほうに銃口を向けている。
──ああ……
セトはぎゅっと目を瞑り、観念した。
脳裏に、セーグネルの姿が浮かぶ。
死の瞬間を待つセト。
敵に撃たれるまでの時間がとてもゆっくり感じられた。
「ええええいっ!!」
しかし、敵の銃口が火を吹かなかった。
銃声の代わりに聞こえたのは、高い音をした喚声。
──なんだ.......?!
セトがはっと目を開けると、
上空から一つの影が甲板めがけて降りてきた。
(今度はなんだっ!)
喚声と己に向けられた敵意に、グレンはとっさに声のほうに振り向いた。
目に入ったのは自分めがけて上空から飛びかかってくる人影。
次の瞬間、肉薄する人影からきらっと刃の反射光が瞬いた。
とっさに剣を横にして掲げるグレン。
ガキィン!!!
強烈な一撃が頭上から叩きつけられた。
(──!!!)
全体重が乗せられた斬撃に、受け止めきれないと直感したグレンは、即座に後ろに退く。
敵の刃がグレンの剣を押し退け、それまでグレンがいた空間を鋭く薙いだ。
──こいつ!
敵の姿をはっきり認める前に、甲板に降り立った敵は素早く体を起こし、斜め下から切り上げる斬撃を繰り出してきた。
キィン!
グレンは敵の刃を小銃で受けようとするも、その強い衝撃に小銃がはねのけられる。
(くそっ!)
敵はすばやかった。その得物は弧状の刀身を持つ片刃の剣だ。
ビュッ、ビュッ!
その一振り一振りが鋭く空を切り裂いてグレンに襲いかかる。
(速い!)
キィン!キィン!
グレンは左右にそれぞれ握る剣と小銃を盾にして、敵の攻撃を防ぐのに精一杯になった。
ばっ、と大きく後退して敵と距離を取る。
敵は一連の攻撃を一旦止めてグレンと対峙した。グレンはその姿をここではじめてはっきりと確認する。
弧状の刀を両手に握り正眼に構えた敵は、まだ歳の若い女だった。
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