エバーラスティング・ネバーエンド──第三人類史

悠木サキ

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第一章

67 シーナvsベルニカ

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 倒れたノベルに代わって、シーナは異様な格好をした少女の敵兵に立ち向かう。
「援護しろっ!」
 シーナは掩体にいた二人の隊員に向かって叫んだ。それまで海上に展開した敵に応戦していた二人ははじめ当惑したように顔を見合せたが、シーナに再度怒鳴られてその指示に従った。
 シーナと二人の分隊員は、掩体の向こうの甲板にいる敵兵の少女に銃撃をしかける。
 ダダダッ、ダダダッ!
 しかし敵は、横に走ったかと思ったら、とんぼ返りして宙を舞い、シーナたちの銃撃を悉くかわしてみせた。
──それなら!
 敵の俊敏な機動に、一瞬気圧されたシーナであったが、すぐさま戦法を切り替える。
 同じ分隊員の二人の攻撃を、敵が回避したその瞬間をシーナはピンポイントで狙った。指示を出すことなく、シーナは二人の射撃を敵への陽動として使う。
 ここだ──敵が射撃を回避するために動きのベクトルを変えるとき、その動きは止まる。シーナはその瞬間を狙った
 パァン!シーナは敵に単発の小銃射撃をしかけた。
 キィン!
「っ!」
 しかし敵は手に持つ細剣でシーナの放った銃弾を弾いてみせた。
──なんで見切れた!? 
 銃弾を剣で弾くといった芸当はシーナは今まで目にしたことがない。小銃の弾は毎秒初速九百メートル程度。発射されたのを目視してから防御できるものではない。
 こちらの銃口の向きや、引き金に指をかけるその動作をすべて見ているのだろうか。
 防弾装具もなしに白兵戦に乗り込んでいるあたり、変わった敵だとは思ったが、それはその能力の裏付けであったようだ。敵は異形にして異能──並みの兵士をはるかに凌駕している。
 どうする──シーナが攻め手を考えあぐね俊巡した、その時だった。
 敵が脇のホルスターから、素早く何かを抜き取った。
 こちらに向けられたそれは、遠目からでもわかるほどの大口径の拳銃だ。
 シーナが瞬間的にそれを見てとった、その時──
 ガァン!ガァン!
 敵が大型拳銃を連射した。
「ぐっ!!」
 発射された二発の弾丸のうち一発はシーナの肩を掠めた。身の危険を感じたシーナは反射的に敵の射線から逃れたため弾丸は命中はしなかった。
 ドサッ!
 だが、もう一発の弾丸は、掩体にいた仲間の分隊員の一人に命中した。
 その分隊員が甲板に倒れ、それに動揺した隣の分隊員が、構えていた小銃を下げ、倒れた仲間を助けようとする。
「──構うなぁっ!!!」
 シーナは無事だったその隊員に向かって叫んだ。
 確かに、負傷した仲間を救護したい衝動に駆られるのは分かる。しかし、そうすればいきなり二人が戦闘から外れることになる。
 三対一でやっと拮抗していたのに、シーナ一人では敵を抑えられない。そうなれば次の瞬間にでも敵の侵入を許し、たちまちここは蹂躙されるだろう。
 しかし、シーナの叫びも虚しく、隣の隊員は倒れた仲間のために掩体の陰に引っ込んでしまった。
「戻れぇ!!」
 たまらずシーナが声を荒げるも、その叫びは届かなかった。
(──っ!)
 拳銃をホルスターに戻し、動きを止めて甲板に立つ敵とシーナは目が合った。
(こいつ……)
 顔は無表情であったが、その大きく見開かれた目に、シーナは悪戯な害意を感じた。
──たまたまじゃない。こいつはちゃんとわかって狙っている。
 シーナは直感した。
(くそがっ!)
 ダダダッ!!
 シーナは敵に小銃を撃ちかける。
 だが敵はするりと身を反らしただけで銃弾をかわし、そのままシーナとの距離を詰める。
 独りでは敵の接近を阻むことができない。
──鋼鉄の律動!
 シーナが鋼鉄の律動を想起し、小銃の銃口に短剣を創り出した。
 短剣を銃剣として取り付けた小銃をシーナは敵に向ける。
 バンッ!
 敵が爆発的な速度で跳躍した。『空戦機動』による加速だ。
 シーナはとっさに射撃を止めた。もうその距離は割られている。
 敵が細剣をシーナに向かって振り下ろす。
「っ!」
 素早い攻撃に、シーナは小銃を横に掲げて防ぐ。
 ギギギッ……
 シーナは敵と鍔競り合いとなった。
 敵の少女と間近で顔を付き合わせる。
 シーナが押し負けてしまいそうなほどの力が込められているのに、少女の顔は無──何の感情も抱いていないかのような無機質なものだった。
 ただあるとすれば、無音の殺意。人間味を失ったような大きな瞳に、シーナはぞっと心が囚われそうになった。
「らあっ!!」
 シーナが渾身の力で、敵を払い退ける。
 しかし、敵はすぐさま細剣を振るってきた。
 カッ!カッ!カッ!カッ!
 シーナは懸命に敵の斬撃を防ぐ。
 重さが三、四キロある小銃は、腕力だけでは敵の斬撃に対応できるほど素早く取り回すことができない。
 シーナは小銃に込めた『心』で思念動力を発動させ、敵の素早い動きに対応した。
──くそっ!
 防戦一方のシーナ。せっかく創り出した銃剣も攻撃に使うことができない。
「でえい!」
 防御の最中、シーナが敵の剣を払って、小銃の銃床で敵に殴りかかるも、リーチが短いためにかすりもせずに敵にかわされる。
 シュッ!!
 再び敵の刃がシーナを襲う。
 カッ!
 今度もなんとか防いだシーナだったが、胸中に焦りが滲む。
 徐々に敵に押されはじめていた。
(助──けろ──っ!!)
 敵の攻撃を防ぎながら、シーナは味方の援護を求めた。
 しかし、白兵戦に割って入ってくれる味方はおらず、援護射撃もありはしなかった。
 カッ!カッ!カッ!
 度重なる敵の斬撃。そのなかにはすでにかわすのが紙一重だったものもあった。
 他の奴らは何をしている──孤立無縁のシーナが他の仲間を心のなかで呪う。
 一人ではこの敵は長くは抑えられない。
「ぐっ!」
 突如、シーナの腹部に強い衝撃が加わった。
 敵の斬撃を防ぐのに手一杯だったシーナが、遅れて何が起きたか認識する。
 剣を振るいながら敵が蹴りを繰り出していたのだ。
 腹を強く押されたシーナだったが、なんとか転倒はしないようにこらえることができた。
「──っ!」
 たが、痛みを堪えるシーナが顔を上げたその目の前にはすでに敵が細剣を振り上げていた。
 そしてその異変に気がつく。
──なんだ!?
 敵の細剣が、赤い光を纏っていた。
 炎ではない。刀身に帯びる光は、内に向かって集約されたように細剣と一体になっている。
──まずい!
 その怪しく禍々しい煌めきに、シーナは小銃を盾にしながらも、とっさに後ろに身を引いた。
 敵が細剣を一閃させる。
 キンッ。
──っ!!
 ほんのわずかな感触と小さな金属音とともに、小銃が真っ二つに斬られた。
 ドサッ!
 本能的にその攻撃から身を引いていたシーナは、尻餅をついて甲板に倒れる。
 防弾装具の胸の部分に、縦筋の切り傷が入っていた。
 一体なにが──シーナがそれを把握する前に、敵が止めを刺そうとシーナの前にそびえ立った。
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