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26.いい訳(フィオレside)
しおりを挟む眠っている冬斗の手を握りしめて、後悔していた。
ここ最近、顔色が悪いことには気付いていたけど、嬉しそうな顔をして山に通っていると精霊たちから聞いていたから、大丈夫だと油断してしまった。無理矢理にでも休ませるべきだったのに。
この1ヶ月、冬斗とは片手に収まるほどしか会っていない。それも交わすのは挨拶だけ。変わりに精霊達が冬斗からの伝言だと言って、お母様やお父様の部下の名前を伝えてくれたのでその処分にまわっていた。命令されても冬斗には近づくなと強く警告していたのに。
ただ、なぜあんな山に行ったのか、冬斗を襲ったのか誰も覚えてないと言うのだ。嘘をついてるのでは無く、本当に分からない様子で。
何が起こっているのか色々調査してみると、どうやらお母様と魔道士が何かを企んでいるようで、部下に精神干渉の魔法を使っていることが分かった。ただどうやってその魔法を使っているかが分からないままで、根本的な解決が出来なかった。
どうしたものかと色々考えたら、カメリアが冬斗と距離を取れと言っていたのはこれが原因なのでは。という結論に至り、スリジエにそれとなく聞くとうっかり口を滑らせてくれた。
カメリアの僕と冬斗を心配してくれた気持ちはとても嬉しかったが、1つ誤解していることがある。僕に精神干渉の魔法は効かないのだ。
昔から両親に放置されて育ってきたので、話し相手はいつもおじい様とおばあ様だった。その2人から守護魔法で精神干渉を防ぐ方法を教えて貰っていたからだ。この国の王になる者が干渉されていては話にならないからと。
どうして精神干渉の魔法はないのに必要なのかと問えば、他国にそう言う道具がある。お前はいずれ目にする時が来るだろう。とだけ教えてくれていた。
お父様はこの方法は知らない。もちろんお母様も。きっと将来、両親が何か問題を起こすと考えていたから、何も教えなかったのだと思う。対策をされては困るから。
お父様は2人の子どもなのだから責任を持って注意して欲しいと思ったことは何度かあったが、同じ環境で育ってきた叔父様は立派な人なので、幼いながらに資質の問題だと悟った。
それに僕を育ててくれたのは乳母であり、2人のことをお母様お父様と呼んではいるが、感覚的には他人だ。
これ以上冬斗に危害を加えるようなら、2人を国王と王妃の座から引きずり下ろす準備も出来ている。
だからカメリアとスリジエが心配するようなことは起きることは無いけれど、僕を幼い頃から知っている2人の中で、僕は何も出来ない子どものままで止まっているのだろう。
これはしっかりしたところを見せず、2人に甘えてしまっていた僕が悪い。
これからはビシッと決めた自分を見せていかなければいけないと思いつつ、冬斗のそばにいる限り、情けないところしか見せられないのでは無いかという心配もある。
「冬斗…。はやく起きて…」
今だって、寝ているだけだと分かっているのに、このままいなくなりそうで、握った手を離せないでいるくらいなのだから。
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